カテゴリー「大陸の誕生」の3件の記事

2017年10月23日 (月)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その3

  5人全ての科学者から返信

 田村芳彦氏に質問のメールを送った後、私は更に同文をコピペして、知己のある4人の科学者たちにも送った。金森博雄氏、上田誠也氏、島村英紀氏、横山裕道氏、全員から返信を貰った。特に前2者からは田村氏同様、質問の1つ1つに簡単なコメントを頂いた。

 ヤスーン仮説を思い付いたのは今年で丁度50年前のことである。その間に、社会に広く伝えたいという目的は未だに全く果たせていないものの、普通ならば絶対にお会い出来ない多くの高名な科学者の知己を得ることが出来た。彼らは非常な紳士である。私の仮説に賛成しないとは言え、一般の人よりもはるかに好意的に耳を傾けてくれる。彼らと話している時私は、日常では得られない大きな喜びを感じる。

 金森先生からの返信の冒頭は「Eメールをありがとう。いつもながら、かなり原理的な問題への貴方の熱中ぶりに感銘を受けています。私は、専門家から話しを聞いて大抵いつでもそのままに受け入れ、それ以上に追究しようとはしません」とあった。

 上田先生からの返信には次の言葉があり、興味深かった。

[西之島が大陸の卵かどうかは、確言はしかねますが、常識的には可能なことだとおもいます。1973年の噴火でも、今回の噴火でも安山岩がでたらしいし、もともと、小笠原・マリアナ弧のBoniniteは島弧発生初期の一種の安山岩だそうです。海洋地殻から安山岩が生まれることは岩石学的に十分可能らしい。(田村氏論文投稿中とか)

ホームズの図でも安山岩線は島弧の外側になっています。当時としては卓見か? 当然の常識か? 。それにしてもまるで卵ですから、full fledged 大陸になるには随分、Timeがかかるでしょう。

おっしゃるとおり、フィリピン海は特異な海ですね。

フィリピン海のでき方については、私も1972頃にそれを2~3論じたことはあります(Origin & Development of the Philippine Sea, Natute Physical Science, V240, No.104, pp176-178など)

しかし、その種の議論は証明も反証もできにくいですね。この年になると、まあどうでもいいやという気分です。]

 更にその翌日、上田先生から、田村芳彦氏の英文の論文が転送されてきた。田村氏から先生に送られてあったものらしい。もともと両者の間に交流があるということなのだろう。私が東大地震研の上田先生の研究室を訪れたのは1984年のこと。その時代から先生が海洋研究に携わっていらしたのではないかという私の推察は、その後「平朝彦氏と共に海洋掘削の課題計画を提案した」(地殻底のマグマ層 その22)という本の中の言葉でより確信に近いものとなった。海洋研究所の若い田村氏が論文を送ったという行為の中に、今も続く上田氏と海洋研究との繋がりの深さを思った。

 前回書いた4つの質問の後、私は更に都合25の質問をすることになったのだが、その際別々に送っていたメールを一本化させていただいた。田村氏と先生方がそれほどに親しいならば、分けることはないと考えたからだ。しかし、効率重視の私のその考え方は大失敗であった。金森、上田両先生からの返信はパタッと止まってしまった。先生たちが個々の質問にどのように答えて下さるか、非常に興味深かったのに残念なことをした。

2017年9月24日 (日)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その2

  JAMSTECの田村芳彦氏に質問

 2016年2月12日私は、科学番組の花形ゲストである田村芳彦氏に、以下のようなメールを送った。氏は前回も書いたように、海洋研究開発機構JAMSTECの首席研究員である。

〔昨年(2015)12月に放映された「科学アドベンチャー 西之島へ ~エンジニア達(たち)の熱き挑戦~」を見てメール致します。
西之島から安山岩が出ているのは、大陸の誕生を示唆しているという内容でしたが、幾つかの疑問があります。

⒈ もしもフィリピン海海洋底が、海洋性ではなく、大陸性地殻であるならば、そこから安山岩が出るとしても何ら不思議ではありません。世界地図で見るとフィリピン海域は、他の海域と違う数々の特徴を持っています。例えば、海溝によって囲まれている、中央海嶺も破砕帯もない、などです。標準的海域にあるわけではない西之島の岩石を調べても、40億年前の海洋から生まれた大陸のサンプルにはなり得ないように思います。如何でしょうか?

⒉ 安山岩線との関連に全く言及しないのは何故でしょうか?アーサー・ホームズの「一般地質学」に出ている図によれば、安山岩線は小笠原・マリアナ弧の外側(太平洋側)を通っているように見えます。この図の方が間違えているのでしょうか?

⒊ 安山岩が軽いとは言っても、それは玄武岩に比べればであり、海水に対してではありません。何もなかった原始の海洋から、安山岩が海水面上に隆起出来たという仕組みがよく分かりません。バケツの中の砂が隠れるほどに水を入れ、底の砂をかき回して水面上に隆起させようとしても不可能です。安山岩と玄武岩の比重の差程度で、本当に大陸はマントルの上に浮き、玄武岩は自重で崩壊するものでしょうか?

⒋ 地球の重力によって、全ての物質は中心に引き寄せられています。そのため、核、マントル、地殻、海洋、大気圏と、比重の重いものから軽いものへと層状になっているはずです。ところが、地殻と海洋との間だけがその層状態を乱し、陸半球と呼ばれる半球にのみ大陸が偏在しています。重力は全ての層の境界面上に均等に働いているはずなので、この大陸の偏在は、地球内部の力によっては引き起こされ得ないものです。つまり、地球の大陸は内部の力によってマントルから生み出されたはずはなく、外因性の起源を持つのだと導き出されます。如何でしょうか?
このような私の疑問や考え方に対し、ご意見ご批判を頂けましたら幸いです。〕

 私は最初もっと多くの質問を書いたのだが、削った。読む側の立場から考えると、沢山あるというだけで、読む気を失なうかも知れない。大陸の創生という、私にとって最も重要な問題だけに絞った方が良い、と考え直した。

 田村氏からはその日のうちに返信が戻ってきた。書くのが極端に遅い私からすれば、信じられないスピードだった。このパターンはその後も続き、私が1週間ほどかけて次の質問を繰り出すと、大抵はその日のうちに返信が戻ってきた。可能な限りは問いに応えようとする誠実な人柄が感じられた。このような科学者に出会えて、メールの言葉通り、いやそれ以上の「幸い」であった。

2017年8月25日 (金)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その1

  科学番組は安山岩線に触れない

 西之島については既に触れたことがある(海洋底の縞模様 その12その27)。西之島の岩石は大陸性の安山岩である、ということでJAMSTECニュースに取り上げられたのは2014年6月である。海洋の火山島の岩石は玄武岩であるのが一般的なのに、西之島が例外なのでニュースになった訳である。安山岩というのは、大陸の花崗岩と海洋の玄武岩との中間的な岩石であるが、花崗岩―玄武岩の対比ではなく、安山岩―玄武岩という対比で使われることも多い。柱状節理だと、安山岩は玄武岩の部類に入るのだから紛らわしい。

 ところが「その12」の時にも書いたように、西之島は本来、海洋性の火山島であるとみなすべきではないのだ。太平洋には安山岩線という地質構造線がある。私は、マントル対流論の大御所アーサー・ホームズの本を読んで知ったのだが、ウェブで調べると、「1912年にニュージーランドの地質学者マーシャルP. Marshallによって提唱された」(日本大百科全書より)とある。もう随分昔に確立された地質学上の知識であるようだ。

 この安山岩線が囲む海域は、フィリピン海プレートに相当する。対流の湧き出し口である中央海嶺もなく、海洋でありながら安山岩線のくくりでは大陸であったり、フィリピン海プレートはプレートテクトニクス説にとっての鬼っ子的存在である。

 西之島は安山岩線の内側の海域にあるのだから、西之島に安山岩があって当然である。プレートテクトニクス説の教科書とも言うべきホームズの「一般地質学」に図入りで出ているのだから、地質学者ならば安山岩線のことを知らぬはずはない。

 その後「サイエンスZERO 西之島の噴火が大陸を生む!?」(アメリカでは2015年2月に放映)という番組を見た。そこでも、安山岩線については全く触れられなかった。番組のMC竹内薫氏は「99・9%は仮説」「なぜ『科学』はウソをつくのか」の著者でもある。科学に対する懐疑的な目を持っているのではと期待していたのだが、番組進行という立場からは逸脱も出来ないのだろう。

 その後同年8月には、「NHKスペシャル 新島誕生 西之島 ~大地創成の謎に迫る~」が放映された。更にその年の暮れ12月に「科学アドベンチャー 西之島へ ~エンジニア達(たち)の熱き挑戦~」という番組も放映された。どの番組も同工異曲、似たり寄ったりであった。プレートテクトニクス説全盛の世の中で、それに異を唱える番組が生まれるはずもなかった。

 どの番組にも必ず出演する科学者がいた。国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTECの田村芳彦氏である。ウェブで調べると「海洋掘削科学研究開発センター 海洋・地球リソスフェア研究グループ グループリーダー」とある。どうやら、西之島研究の中心的人物のようである。意を決して、最後の番組から1か月ほど考えたり調べたりした後、彼にメールを送ってみることにした。

 紹介なしの未知の科学者に連絡を取っても、返事を貰えることは殆どない。しかし面倒だからとためらっている場合ではない。大陸の起源は地球外の天体にあったとする私の仮説からすれば、大陸が地球の内部から生まれたのだとする考え方はどのようなものであれ、受け入れる訳にはいかない。