« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »

2015年11月

2015年11月17日 (火)

金森博雄教授と東京で8時間 その8

  郷村断層は謎だらけ

 郷村断層の図を探して手持ちの本を繰っていた時、「新・地震の話」(坪井忠二著、岩波新書、1967年)の中に興味深い図を見つけた。断層だけではなく、余震の震央も出ている図を他で見たことはない。その図に関連した部分を以下に引用する。Img_0001

[弾性反撥説によると、エネルギーは断層の両側に同じように蓄えられていなければならない。そして本震はまず断層のところから発するというのであるから、あとからみれば、本震は余震域のほぼ中央におこってくれないと具合が悪い。ところが実際はどうもそうではないようである。地震のときに、地上に明瞭に断層のあらわれて、しかも余震の分布がわかっているものはまだほかにもある。たとえば1927年の丹後地震もそうであるが、この場合にも、余震はその断層の両側にわたって一様におこっているのではない。図29に示すように、断層の西側におこった余震が断然多い。断層の東側には、ほとんどおこっていないといってもいいくらいである。弾性反撥説では、エネルギーは断層の両側にほぼ均等に蓄えられると考えているのだから、(本震は余震面積のまんなかではなく、そのはじの方から発するという) 松沢武雄さんの指摘されたこの事実は、反撥説にとって都合のよいことではない。]

 ここに出てくる「松沢武雄さんの指摘」については、以前 (地震は雷のようなもの その4) にも竹内均氏の文章の中で引用した。以下にその時の文章の一部を再掲する。

[チリ地震の本震は余震域の北の端にある。 ……チリ地震の際には、震源から出発した割れ目が南へ向けて走り結局750キロメートルもの長さの割れ目ができたことが知られている。]

 「本震の震央が余震域の端に存在する」という、同じ松沢武雄氏の同じ指摘のはずだが、坪井氏の図を仔細に見ると、竹内氏の場合と別の形で使われているみたいである。竹内氏の場合、本震は断層の端で起こり、断層に沿って割れ目が走る。それに対して坪井氏の場合は、確かに余震域の端ではあっても、断層線上ということで言えば、端ではなく、中央に本震の震央がある。

 郷村・山田断層の余震域は円グラフ3/4のようで特異である。余震のない1/4の地域の地下はどういう状態になっているのだろうか? 地下に構造的な何かがあり、地震の発生を妨げているのだろうか?

 だいたい、郷村・山田断層のようなT字型共役断層の、どこにどのような形でエネルギーが溜まるのだろうか? もともと断層にエネルギー(歪あるいは応力)が溜まるということ自体、かなり疑わしい。ひびの入った器は割れ易い。断層という傷があれば、小さな力が加わるだけでずれ始めるはずだ。断層というだけでもエネルギーが溜まり難いはずだが、T字型ともなると、その溜まり方は更に複雑化する。

 このようにして見ていくと、郷村・山田断層は謎だらけである。地下がどのようになっているのか、地震がどのように起こるのか、全くイメージできない。いったい日本では、どれだけの研究者がこの断層系の不思議さに着目しているだろうか? 共役断層という名前が付いたことで、また前記のような石柱実験で一応の説明がついたことで安心しきってしまい、それ以上に調べる気になっていないのかも知れない。郷村・山田断層の謎を、もう一度根底から見直してほしいと願う。

2015年11月 3日 (火)

金森博雄教授と東京で8時間 その7

(後述のように、これ以降の「その7」~「その9」に対しては、金森教授からコメントをいただいた。後々の参考のために、コメントをいただいた箇所 { } 内に、原文を挿入します)

  金森教授が訪れた断層

 既に書いたように(その4)、金森博雄教授は昨年2月、1927年丹後地震時の郷村断層を訪れた。そのことを私が知ったのは昨年9月、先生からのメールによる。郷村断層について早速に調べてみて、興味をそそられた。郷村断層の先には、山田断層というもう一つの断層がT字型に交差しているのだ。

 もしも断層がずれ動くことによって地震が発生するのだとすれば、T字型交差部においてそれなりの影響が現れないのはおかしい。以前書いたこと(地殻底のマグマ層 その15)でもあるが、地震学の本に出ている図では、2つのブロックのずれ動く断層によって地震の発生が説明されている。もしもその図の通りだとすれば、ブロックのずれ動いた跡には大きな穴が出来てしまう。2つの断層がT字型に交差しているとすれば尚のこと、大きな穴が開いたり{It is true that if rigid blocks move, there will be a hole. The general assumption is that during faulting many micro cracks occur (some are aftershocks or coseismic) and some plastic (ductile) deformation occurs. As a result, the crustal block deforms without making a big hole. However, usually we do not know the details. You should realize that the strain associated with earthquake is small, about 1/100,000.}、曲がったりしそうなものである。

 このようにして、向きの違う2つの断層が同時に出来る場合を共役断層と言う。それについて、「活断層とは何か」(池田安隆、島崎邦彦、山崎晴雄共著、東京大学出版会、1996年)には次のようにある。Img

[断層の活動では、1方向の応力がかかっているとき、図10のように走向や変位の向きの異なる2つの断層運動が同時に発生することがある。これを共役断層という。地表地震断層に共役断層が出現する例は多く、日本では1896年の陸羽地震、1927年の北丹後地震、1930年の北伊豆地震などで認められている。]

 石柱の両端を挟み込む形で力を加えれば、確かにグシャーっと、図のようなX字型のひび割れが出来そうである。しかしそれはあくまでも、地面が石柱で出来ているならば、の話である。一般的な地面は、石柱のような剛体ではない。むしろ、褶曲山脈があることでも分かるように、柔軟性に富むようである。地質学の本などには、くねくねとした蛇のような褶曲の図が出ていたりする。地面の柔軟性は想像以上のものである。しかし、それ程に柔軟なものならば、地面を横から水平に力を加えたとしても断層はできず、ぐにゃーっと折れ曲がってしまうはずである。ところが、現実には無数の断層がある。一体どういうことなのだろうか? もしかすると、地面は急激な力に対してはひび割れ、ゆっくりとした力に対しては可塑的に変形する、などということがあるかも知れない。{Yes. This is the standard understanding.}

 上掲の本の別の箇所に次のような言葉がある。

[日本の内陸は、伊豆半島の周辺を除いて、ほぼ東西に圧縮されている。この圧縮の力によってプレート内地震が起こる。そして地震で断層がずれて、さらに東西に縮む。]

 とすれば、日本列島は東西に圧縮されて、そこいら中で褶曲しそうなものである。しかし逆に、断層の向きがあらゆる方向を向いていることからすれば、「東西に圧縮」ということの方を疑うべきなのかも知れない。一方向からの{I am not sure whether they are really randomly oriented. I think that there is some trend but you should look at the fault map.}恒常的に押す力だけで、日本列島全域に広がっている活断層の向きを説明出来るようには思えない。

 郷村・山田断層のようなT字型の共役断層は、同じ地震で同時に、2方向の断層が動き出すわけである。東西一方向の圧縮だけで説明するのは更に難しそうである。上述の石柱実験は、共役断層を説明するためのデモンストレーションに過ぎない。共役断層が何故出来るのか? 本当の意味での実験を工夫してもらいたいものである。

« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »