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2015年9月

2015年9月22日 (火)

金森博雄教授と東京で8時間 その4

  玄武洞の水平柱状節理

 今から30年以上前のこと、金森博雄教授が学会やコンベンションで世界各地に行くという話をされた時、当時はまだ若く、世界を広く見てみたいと思っていた私は、「いいですね、世界各地を旅行出来て」と言った。それに対して「大したことないですよ。飛行場からホテルと会場に行って、また帰って来るだけです」という答えが返ってきた。

 その時以来、先生が旅行されるのはやむを得ない場合に限られるのだろうというイメージで捉えていたが、地震に関係する所には案外気軽に出掛けられるようである。例えば、20数年周期で地震が起きてきたから予知が出来るのではないかということで有名になったカリフォルニア中部のパークフィールド、規模の上ではカリフォルニア地震史上トップクラスだった砂漠の町ランダース。

 とはいえ、昨年9月に頂いたメールで、「今年の2月、京大の友人に連れられて1927年丹後地震の郷村断層に行ってきました。その時に、城崎温泉近くの玄武洞にも行き、水平な柱状節理があるのを見ました。もちろんそれは、そこだけの構造なのかも知れません。でもデビルズ・ポストパイルにも水平な構造があったように記憶しています」というメールを頂いた時には意外だった。玄武洞は断層を見たついでに、ということで分からないではないが、デビルズ・ポストパイルの方は地震とは関係のない、かなり辺鄙な所にある地質構造である。

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 玄武洞には、私もその2ケ月後に行く予定であった。先生が行かれた前記の場所に私も行っていたり、行く予定にしているというのは嬉しいことである。将来、先生が東日本大震災半年ほど前に訪れた綾里白浜へも行くつもりである。かって38メートルもの津波を受けたことのある地形や海を見て、地震や津波の原因を私なりに考えてみたい。

 玄武洞の柱状節理は、私がまさに見たいと思う形の水平層を持っていた。垂直な柱の層の上に水平の層が重なっている。この2重の違う方向の層の形成を、地質学においてはどのように説明できるだろうか? 玄武洞の2重層に合わせた具体的な説明を見つけてはいないが、水平や斜めの長い柱の形成に対しては、「玄武岩は動く方向に柱を作る」という私の考え方の方が、通常の地質学的な説明よりうまく解釈できると思う。

 ネットで検索してみても、玄武洞のような水平柱状節理はなかなか見つからない。金森先生のご指摘通り、デビルズ・ポストパイルには、水平柱状節理が確かにある。しかしそれら以外には、ほんの数例が例外のように出てくるだけである。ところが後述のように、見つかった数例は非常に貴重で示唆に富む。中には、私の考え方を揺るがすほどのものさえあった。

 玄武洞にはそこだけの固有な特徴もある。ふつう玄武岩の柱は、削りたての材木のようにストレートな面を持っているのだが、玄武洞の柱の表面はくねくねとした波型をしている。節(ふし)のくびれのところで分離して、ドロップを積み重ねたように見える柱も多い。似たような柱状節理が他にないわけではないが、おそらく、世界的に見ても珍しい形なのではないだろうか。

 それに対して私は、伸ばしたまま古くなった輪ゴムがぶつぶつになる、のと似たような現象ではないかと考えた。ただし玄武洞の場合には張力ではなく、上の溶岩層の重みが何らかの作用を及ぼしたのだと思う。

2015年9月 3日 (木)

金森博雄教授と東京で8時間 その3

  日本人は中間層が素晴らしい

 東大近くの喫茶店で1時間ほど過ごした後、昼食に出ることにした。店を出る時に店員に訊いてみた。「この辺りに寿司屋ありますか?」。

 それに対しての答えは「ここは学生の町ですから、ラーメン屋やカレー屋はいくらでもありますが、寿司屋は・・・ありましたかねぇ」と首をかしげた。

 赤門が正面に見える辺りにまで店の看板を見ながら歩き、大通りに戻って交差点を渡ったり戻ったりした。その挙句に、近くの交番に入り、お巡りさんに尋ねてみた。交番の中の実直そうなお巡りさんが「ちょっと待ってください」と奥に引っ込んだ。しばらくして戻ってきて「同僚にも電話で訊いてみましたが、この辺りでは思い当たらないそうです」。礼を言って今度はメトロ駅への小路を調べる。寿司屋でなくても適当なレストランはないものだろうかと探したが、夜の居酒屋ぐらいしかない。

 結局、築地に行った方が早いということになり、何処へ行くかは、タクシーの運転手さんに任せた。晴海通りを通り、築地四丁目の角で降ろしてもらい、交差点を渡る。寿司職人がやっと一人立っているだけの、狭い間口の立ち食い専門店もあり、さすがに寿司のメッカだと思った。角を曲がると、呼び込みがいるのに客のいない店もあり、その反対に、長い行列の出来ている店もあった。

 「あんな行列に並んでまで食べたいとは思いませんね」という先生の言葉もあり、その店もやめた。私も気質的には同じである。「クール・ジャパン」というNHKの番組で、日本人は行列に並びたがるとあった。行列のできる店の方が良い店である確率も高いので、私は、ある程度の行列ならば我慢する。出来たら、行列ができる店の空いている時間を狙う。

 先ほどの行列の店はどういう店だったのかを知りたくて、後日銀座に出たついでに立ち寄り、店頭で訊くと並ぶ必要がないというので入ることにした。しかも、カウンターの良い席に案内された。板前さんの感じも良く美味しかった。後にテレビで、「すしざんまい」というその店は、オーナーが毎年最高値で初競りのマグロを競り落とすことで有名な、チェーン店の一つであると知った。

 金森先生と私は先ほどの交差点を反対方向に戻り、運転手さんに勧められた「築地すし好」という店を目指した。店内は昼のピークを過ぎていたこともあり、一旦閉めるのではないかと思うほどに空いていた。掘りコタツ式の座席に通され、落ち着けた。先生のご希望にぴったりの店であった。お任せのセット料理も、突き出しや刺身が付き、寿司も美味く、大満足である。何よりもゆったり話せるのが、その時の我々には最高であった。

 私は先生との議論を、最初にお会いした時から録音させて頂いている。もう37~8年間ということになるのだが、2回目からはご承諾も得ぬまま、当然のことのようにレコーダーを回している。引用する必要性が生じた場合に正確を期したいからでもあるが、帰りの車中聞き返すのが楽しみでもあった。しかし、レストランなどでの寛いだ雰囲気の時には遠慮している。オフレコの方が話し易いかも知れないと思うからだ。ところがそういう時の方が、書き残しておきたいと思うような良い言葉が多い。この先思い切って、録音の許可を頂こうかとも思う。とは言え当然ながら、次のような素晴らしい言葉は、それでも録音されることはない。本郷の交番での後、歩行中だったからである。

 「日本人って、素晴らしい民族だと思います。特に普通の、中間層の人たちがいいですね。親切だし、震災後の行動にも見られるように礼儀正しいし・・・私も、生活の本拠地を日本に移そうかな、と思ったりもしますよ」

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