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2015年6月11日 (木)

噴火は予知できていたはず その11

   水蒸気噴火から火山の個性へ

 口永良部島の噴火について、前回も引用した東洋経済オンラインからもう少し引用する。

[1933(昭和8)年や1966(昭和41)年に大規模な噴火を観測。1980年代以降は小康状態だったが、京都大学防災研究所の井口正人教授によれば、1999年ごろからマグマの上昇を推定させる地下の温度変化などが観測されていた。火山性地震は2006年や2012年には400回を超える月も。それでも警報を出すに至る変化とは認められないまま、2014年8月3日の噴火が発生した。
井口教授は「15年間にわたる長期の準備過程があった。しかし火口が隆起するような明らかな兆候は、噴火の1時間前ぐらいからしか分からなかった」と、昨年10月に名古屋大学であった研究集会で報告していた。]

 どうやら、去年の噴火も予報予知無しの噴火だったようだ。前兆無しに噴火するのが、この山の個性なのかも知れない。口永良部島の今回の噴火の後、多くのサイトでこの「火山の個性」という言葉を目にする。例えば、以下のような言葉が見つかった。

[火山はそれぞれに「個性」があり、避難誘導や地域の対応も個々に考えられなければならない。] (東洋経済オンライン)

[しかし噴火に至る経緯は火山によってまちまちで、同じ形態を繰り返すとも限らない。] (毎日新聞)

[実は、警戒レベルというのは、非常に難しくて、それぞれの火山で非常に性質が違いますので、1つの警戒レベルは、ほかの火山に適用できるわけではありません。] (島村英紀教授、FNNのインタビューに答えて)

 御嶽山の時には「水蒸気噴火の予知は不可能」という意味の言葉をしばしば目にした。しかしその後数ヶ月で、マグマの関与した前兆無しの火山噴火が実際に起こってしまった。すると、もはや「水蒸気噴火」とは言えないので、「火山には個性がある」という意味の言葉に変えたということかも知れない。

 「火山には個性がある。口永良部島の火山はたまたま前兆を示さない個性を持っていた。だから噴火を予知できなくても致し方なかった」ということを、言外に言いたいのだと推測する。しかし言い放しにせず、何故そのような個性が生じるのか、何故かなりの規模の噴火にもかかわらず前兆無しでマグマが上昇できたのか、などを次なる研究課題として調べてもらいたいものである。

 以前言われていたことで、もう一つ気になることがある。このシリーズの「その4」の中で、「噴火の前兆は捉えられるか」(NHKサイエンスZERO)という番組を取り上げた。そこではミュオンによる薩摩硫黄島の透視画像が話題されていた。その画像には、火山体の中央に滞留しているマグマがくっきりと見えていた。

 薩摩硫黄島は、口永良部島の隣の小さな島である。噴火警戒レベルは1か2、警戒レベル3の口永良部島の方がはるかに重要度が高いはずである。何故ミュオンによる透視技術が使われなかったのだろうか? 不思議でならない。去年8月にせっかく警戒レベルが3に引き上げられたばかりだというのに、それは数値上だけのこと、持てる技術が十分に生かされたとは思えない。

 もしもミュオンにより口永良部島の山体内が透視されていたならば、たとえ地震計などによる前兆把握は全て失敗していたとしても、山頂近くにあるマグマの位置から、噴火が差し迫っていたことを予知できていたはずである。また、もしも山頂へと位置を変えるマグマの時間的変化が捉えられていたならば、なぜ今回は前兆無しの噴火をしたのかに対し、何らかのヒントを得られた可能性も高い。学問的に見ても貴重な好機を逃したことになる。

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