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2015年5月 5日 (火)

富士山はなぜ噴火しなかったのか? その4

   火山フロントと安山岩線

 前回も引用した上田誠也氏の著書「新しい地球観」には、火山の問題に関連して以下のように重要な問題が書いてある。

[流れが更に深く沈み込んでいく場所の真上である弧状列島の陸側において、熱流量やマントルの温度が高く、火山が存在するということは、いったいどういうわけだろうか。明らかに、冷たいプレートが沈み込んでいくモデルとは反するのではないだろうか。実はこの問題は、はなはだ重大なのであって、弧状列島を論ずるときの最大の難関である。]

[アルプス、ヒマラヤのような大陸上の大山脈をつくるプロセスと区別するために、弧状列島でのプロセスを、我々は太平洋型造山作用と呼ぶことにしたが、その筋書きにおいて冷たいプレートが沈み込むところに、どうやって熔融が起こるか、どうやって高熱が発生するか、という問題は久しく我々の頭を悩ましてきた。]

 まだ他にも数ヶ所で、この問題について触れられている。如何に重要であるかの証左であろう。ところがその後プレート・テクトニクス説が隆盛を極めると、それに疑問を呈する者がいなくなる。プレートの沈み込みがあれば巨大地震帯があり、その先更に深く沈み込んだ所でマグマが溶融し、上昇して火山になる、などと説明されることが多い。若い研究者にとって、それは疑いようのない知識なのであって、上掲の本におけるような頭を悩ます思索の対象ではなくなった。

 時に、摩擦熱や水によって説明されることがある。しかし、冷たくなって自重で下がっていくプレートと反対側のプレートとの間で、果たして摩擦が起こり得るだろうか? あるいは、比重の軽い水がマグマの溶融する深部にまで沈み込めるだろうか? 水そのものとして沈むのではない、含水鉱物として沈むのだ、という考え方もある。しかし軽石がそうであるように、水を含んだ岩石そのものが軽くなってしまい、プレートが冷たくなっても沈み込めない、と思う。また、マグマの溶融は何故地震帯においてではなく、もっと深い所で起こるのか?など、地震帯と火山帯とが別の所にあることに対する疑問もある。

 私の仮説においては、大陸性の岩石(安山岩や花崗岩など)の収縮によって説明できる。以前(海洋底の縞模様 その12)私は、アーサー・ホームズの「一般地質学」から安山岩線の図を借用した。その図からも明らかなように、太平洋においては、安山岩線と海溝の位置とは同じである。つまり、海溝とは安山岩線に関係した構造物であり、プレートの沈み込みによるものではあり得ない。沈み込みによるならば、弓なりの出っ張りは、大陸側に張り出しているのでなければならない。

 その時にも書いたように、海溝は安山岩の収縮によって付けられた深い傷あとなのである。火山フロントと安山岩線とが並行しているのも、火山フロントの側から考えると分かり易い。安山岩線は火山フロントのフロント(前線)なのだ。

 火山フロントには大陸性マグマの主脈があり、それが収縮すると、前線である安山岩線が陸側に引き寄せられる。その結果、前線の先端に海溝が生まれ、その陸側に歪みがもたらされ、巨大地震の震源域となる。

 大陸性マグマは収縮ばかりではなく反動として、時に弛緩して伸展することもある。東北地方太平洋沖地震の場合がまさにそれであった。そのようにして考えると、あの巨大地震の後、何故富士山が噴火しなかったのか? 地震直後に何故東北地方の土地が東方に移動し沈降したのか? 何故2年半も経ってから遠方の西之島で噴火するようになったのか? 全てが統一的に解釈できるのである。

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