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2015年5月20日 (水)

噴火は予知できていたはず その8

  水が断層を滑り易くするか?

 「牧尾ダム 誘発地震」で検索すると、「人間が起こした地震―島村英紀のホームページ」というサイトも出てくる。数多くのダム由来誘発地震の一例として、以下の短い文章があるからだ。

[また、死者29名を生んだ1984年の長野県西部地震(マグニチュード6.8)も3年前から貯水を始めていた近くの牧尾ダムが起こしたダム地震ではなかったかという学説もある。]

 では、何故そのような誘発地震が起こるのか? その同じサイトの中に次のような説明が出ている。

[では、水を人工的に地下に注入したときに、地下ではなにが起きていたのだろうか。十分正確にわかっているわけではないが、岩の中でひずみがたまっていって地震が起きそうな状態になったとき、水や液体は岩と岩の間の摩擦を小さくして滑りやすくする、つまり地震を起こしやすくする働きをするらしい。いわば、地震の引き金を引いてしまったのだ。 つまり、人間が地下に圧入した水や液体が、岩盤の割れ目を伝わって井戸の底よりも深いところにまで達して、その先で地震の引き金を引いたのに違いないと考えられている。]

 「水が断層を滑り易くする」という考え方は、地震学者の間に広く受け入れられている。私も今まで、この考え方について何度も書いてきた(地殻底のマグマ層 その3、地震は水素爆発 その9、遠隔誘発地震の謎 その1、金森先生と仙台で議論 その3)。

 本当にそうなのか? 以前から何となく疑問に思ってはいたが、今までは疑問がはっきりとした形になっていなかった。最近になってやっと形が見えてきた。きっかけは、「海洋底の縞模様 その7」の中でサンアンドレアス断層について書いたことである。世界的に有名な大断層の真上にダム湖がありながら、誘発地震が全くないのはおかしいではないか?と思ったのである。

 昨年のクリスマス直前に、島村英紀教授からEメールによる時候のカードを戴いた。毎年、先生自ら撮影された写真付きである。今回は、札幌の美しい夜景だった。そのカードへの返信に、ちょっとやそっとでは答えられないような難問を書いた。美しいカードへの返礼としては、無粋なことであったかも知れない。そのうちの一つが以下のものであった。

[ダム湖や水の注入による誘発地震の問題は、先生も度々ご指摘の通り、非常に興味深い現象です。ところが、世界的なサンアンドレアス断層直上にはサンアンドレアス湖という大きな人工ダム湖があり、サンフランシスコ近郊一帯の水がめになっています。このダム湖に由来する誘発地震は、100年以上もの間まったく起こったことがありません。サンフランシスコに多大な損害をもたらした1989年のロマプリータ地震の時にも、断層は全く動かず、震源もサンアンドレアス断層近くの別の断層にありました。水は潤滑油のような働きをするとも言われます。ならば、サンアンドレアス湖近くの断層は、年々少しずつずれ動くはずです。それともそれは私だけの思い違いで、実際にずれ動いているのでしょうか?]

 サンアンドレアス断層は、カリフォルニア州の3/4ほどを縦断する巨大な断層系であり、全域が同じように振舞う訳ではない。中部のホリスターという町では、とりわけの地震も伴わぬまま、土地だけがずるずるとずれる。クリープ型断層と言われる。

 湖があるわけでもないホリスターでクリープ型断層があるとしたら、断層上に水という潤滑剤のあるサンアンドレアス湖及びその隣のクリスタル・スプリングス湖において、クリープ型断層が起こらないのは何故だろうか? むしろ、「水が潤滑油のように働き、断層を滑り易くする」という仮定の方を疑うべきかも知れない。

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