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2015年5月

2015年5月26日 (火)

噴火は予知できていたはず その9

  何故ダム湖誘発地震が起きるのか?

 前回書いたように、ダム湖から浸み込んだ水が断層を滑り易くするという考え方には疑問がある。断層は地震の結果として動くのであって、地下の断層が動いたから地震が起こるというわけではない。私は、1906年のサンフランシスコ大地震(M7・8)も断層由来ではなく、ダム湖由来の誘発地震なのだと考えている。

 サンアンドレアス湖はもともと、サンアンドレアス川の流れの途中に出来た自然の池だった。その池の下流側に土堤を築き、貯水湖としたのは1869年のことである。内陸部で金が発見され、サンフランシスコの町が大膨張を開始したのは1848年、僅か20年前のことである。人口の増加に伴い、水の需要が急増した、ということなのだろう。

 水の需要は更に増し、同じサンアンドレアス断層の南にクリスタル・スプリングス貯水湖が造られた。この貯水湖は上部・下部2つに分かれ、下部の方には断層と平行なコンクリート製の巨大ダムが建造された。その完成の1890年には断層上の細長い谷間を、3つの湖全てで15キロほどの湖水が覆うことになった。それは、サンフランシスコ大地震の16年前のことである。断層の西側が3メートルほどずれ動いたりしたにもかかわらず、ダムに損傷はなかったし、水漏れがあったようでもない。

 サンフランシスコ大地震は世に地震断層説を広めるきっかけとなった地震ではあるが、ダム湖由来の誘発地震の実例が数多く知られるようになった現在、サンフランシスコ大地震の真因を検討し直すべきであると思う。

 では、ダム湖から水が浸み込んで、何故地震が起きるのか?前々回(噴火は予知できていたはず その7)には、地下に浸み込んだ水がマグマに触れて気化、膨張するとイメージした。それを水蒸気爆発と呼ぶことにする。ところがその後、別の爆発もあり得ると思い付いた。水素爆発である。

 以前(地震は水素爆発で起こる その7)、山本寛氏の「地震学のウソ」(工学社 2009年5月)という本を紹介した。その本によれば、地中に浸入した水は分解されて水素が発生し、それが核融合するという。

 地球程度の質量の惑星内部で、おいそれと核融合は起こらないだろう、と私は思うのだが、著者の山本氏は常温核融合の可能性を信じていたのかも知れない。常温核融合についてのウィキによれば、彼が原稿を書いていたであろう2008年時には、結構日本各地で常温核融合の実験が行われていたみたいである。

 もしも2011年3月以降に彼が原稿を書いたとすれば、水素の核融合にこだわらなかったかも知れない。福島の原発での、あれ程に目ざましい水素爆発を見れば、地下で地震を起こしているのは核融合でなくてもいいと思い直したに違いない。

 ここでもう一度前の実例に戻り、牧尾ダム湖から浸み込んだ水が地下でどうなるか?とイメージしてみる。前々回は水が気化して水蒸気爆発したと考えたわけだが、それだと長野県西部地震(M6・8)のような中規模地震の説明としては弱過ぎるように思われる。あれは、遊離の水素が一挙に燃焼し爆発した、と考えるべきではないだろうか?

 いや待てよ。M6・8の中規模地震が仮に水素爆発によるものだとして、長野県西部地震だけが特殊だった、と考えるのはおかしい。全ての地震が、とは言わないが、多くの地震が水素爆発によって起こる、とは考えられないだろうか?

 プレート・テクトニクス説全盛の時代に「水素爆発が地震の原因だ」と言っても、相手にされるはずもない。いつの日か、プレート・テクトニクス説の説明に満足できなくなった若い研究者が、数多くある選択肢の一つとして、水素爆発と地震との関係を研究してくれることがあれば、と願っている。

2015年5月20日 (水)

噴火は予知できていたはず その8

  水が断層を滑り易くするか?

 「牧尾ダム 誘発地震」で検索すると、「人間が起こした地震―島村英紀のホームページ」というサイトも出てくる。数多くのダム由来誘発地震の一例として、以下の短い文章があるからだ。

[また、死者29名を生んだ1984年の長野県西部地震(マグニチュード6.8)も3年前から貯水を始めていた近くの牧尾ダムが起こしたダム地震ではなかったかという学説もある。]

 では、何故そのような誘発地震が起こるのか? その同じサイトの中に次のような説明が出ている。

[では、水を人工的に地下に注入したときに、地下ではなにが起きていたのだろうか。十分正確にわかっているわけではないが、岩の中でひずみがたまっていって地震が起きそうな状態になったとき、水や液体は岩と岩の間の摩擦を小さくして滑りやすくする、つまり地震を起こしやすくする働きをするらしい。いわば、地震の引き金を引いてしまったのだ。 つまり、人間が地下に圧入した水や液体が、岩盤の割れ目を伝わって井戸の底よりも深いところにまで達して、その先で地震の引き金を引いたのに違いないと考えられている。]

 「水が断層を滑り易くする」という考え方は、地震学者の間に広く受け入れられている。私も今まで、この考え方について何度も書いてきた(地殻底のマグマ層 その3、地震は水素爆発 その9、遠隔誘発地震の謎 その1、金森先生と仙台で議論 その3)。

 本当にそうなのか? 以前から何となく疑問に思ってはいたが、今までは疑問がはっきりとした形になっていなかった。最近になってやっと形が見えてきた。きっかけは、「海洋底の縞模様 その7」の中でサンアンドレアス断層について書いたことである。世界的に有名な大断層の真上にダム湖がありながら、誘発地震が全くないのはおかしいではないか?と思ったのである。

 昨年のクリスマス直前に、島村英紀教授からEメールによる時候のカードを戴いた。毎年、先生自ら撮影された写真付きである。今回は、札幌の美しい夜景だった。そのカードへの返信に、ちょっとやそっとでは答えられないような難問を書いた。美しいカードへの返礼としては、無粋なことであったかも知れない。そのうちの一つが以下のものであった。

[ダム湖や水の注入による誘発地震の問題は、先生も度々ご指摘の通り、非常に興味深い現象です。ところが、世界的なサンアンドレアス断層直上にはサンアンドレアス湖という大きな人工ダム湖があり、サンフランシスコ近郊一帯の水がめになっています。このダム湖に由来する誘発地震は、100年以上もの間まったく起こったことがありません。サンフランシスコに多大な損害をもたらした1989年のロマプリータ地震の時にも、断層は全く動かず、震源もサンアンドレアス断層近くの別の断層にありました。水は潤滑油のような働きをするとも言われます。ならば、サンアンドレアス湖近くの断層は、年々少しずつずれ動くはずです。それともそれは私だけの思い違いで、実際にずれ動いているのでしょうか?]

 サンアンドレアス断層は、カリフォルニア州の3/4ほどを縦断する巨大な断層系であり、全域が同じように振舞う訳ではない。中部のホリスターという町では、とりわけの地震も伴わぬまま、土地だけがずるずるとずれる。クリープ型断層と言われる。

 湖があるわけでもないホリスターでクリープ型断層があるとしたら、断層上に水という潤滑剤のあるサンアンドレアス湖及びその隣のクリスタル・スプリングス湖において、クリープ型断層が起こらないのは何故だろうか? むしろ、「水が潤滑油のように働き、断層を滑り易くする」という仮定の方を疑うべきかも知れない。

2015年5月12日 (火)

噴火は予知できていたはず その7

  ダムが御嶽山噴火の原因だった

 「誘発地震」というキーワードでネットを検索している時に、興味深いサイトを見つけた。筆者は「まさのあつこ」さんというジャーナリストである。

[「長 野県西部地震(1984年)の時の記録がなにか残っていませんか?」木曽の御岳の山麓、長野県王滝村の役場に電話をかけた時、頭にあったのは、数年前に独 立行政法人水資源機構(水機構、当時は水資源開発公団)の職員から聞いた「1961年に牧尾ダムができた途端に地震が起き始め、大きい地震が来た時、つい に山の塊が落ちてきて埋まってしまったダムがある」という話だ。]

[王滝村民が体感したダム誘発地震の存在を学問の立場から「現在では学界の常識です」と断言するのは、日本地震学会会長の大竹政和さんだ。その断言は彼自身が手がけた実験と調査に基づく。 1974年、建設省建築研究所にいた大竹さんは、1963年から68年の黒部ダム(富山県)の水位変化と周辺の地震回数を調べ、水位上昇に従って地震活動が活発化する傾向を発見した。 その後、国立防災科学技術センター地震活動研究室長だった時は、松代群発地震(長野県)の中心地に2500メートルの井戸を掘り2000トンの水を注入し水圧によって地震が起きるという実験結果を得た。 さらに1926年から83年までの気象庁の観測地震データを使い、全国42ヶ所のダムの湛水開始前後を比較。牧尾ダムを含む八カ所でダム完成後に地震が増えたことを示し、相関関係があると地震学会で発表し、海外でも高い評価を受けた。]

 「牧尾ダム」はどこかと探してみると、御嶽山南麓を西から東へと流れる王滝川があり、その下流側にある。「御嶽山の噴火は予知できていたはず その3」に掲載した図の中で言うと、長野県西部地震(1984年)の本震の震源は御嶽山の南東麓にある。山頂からその震源への方向を更に延ばすと、ソーセージ型をした地形の端あたりに達する。その地形が牧尾ダムによって作られたダム湖である。

 そのことをダム湖を始点にして見直すと、次のような一連の流れとなる。地下に浸み込んだ水が北西方向に移動した後、マグマに出会い、気化し、急激に体積を増やすことによって、地震の原因となった。地震を起こした後、地下の水蒸気は更に北西方向に斜めに上昇し、頂上から噴出した。

 このように考えると、それまで死火山と見なされていたほど不活発だった火山が何故噴火や地震活動をするようになったのか、何故水蒸気噴火ばかりなのか、それらはダム由来の誘発だったからだと納得がいく。

 震源域にはマグマが存在している、という私の仮定からすると、マグマに触れて水蒸気になった水が斜めに上昇して頂上から噴出する、という部分は理解し易い。 火山の山腹は、頂上から麓へ斜めの堆積層の積み重ねで出来ている。中には溶岩トンネルがあるかも知れない。つまり、煙突のような通り道、あるいは粗い層が あるために、直上ではなく斜めに上昇するのだ。

 では、ダム湖からマグマのある辺りにまで、水はどのように浸み込んでいくのだろうか? 通常ならば、ダム湖から直下に浸み込みそうなものである。何故斜めなのだろうか? もしかすると、川の流域には細かい土が長年蓄積して、地下水の通り道を目詰まりさせているのかも知れない。地質学者はこの問題を調べ、ダム湖由来の誘発地震をはっきりした形で証明してほしいと願う。

2015年5月 5日 (火)

富士山はなぜ噴火しなかったのか? その4

   火山フロントと安山岩線

 前回も引用した上田誠也氏の著書「新しい地球観」には、火山の問題に関連して以下のように重要な問題が書いてある。

[流れが更に深く沈み込んでいく場所の真上である弧状列島の陸側において、熱流量やマントルの温度が高く、火山が存在するということは、いったいどういうわけだろうか。明らかに、冷たいプレートが沈み込んでいくモデルとは反するのではないだろうか。実はこの問題は、はなはだ重大なのであって、弧状列島を論ずるときの最大の難関である。]

[アルプス、ヒマラヤのような大陸上の大山脈をつくるプロセスと区別するために、弧状列島でのプロセスを、我々は太平洋型造山作用と呼ぶことにしたが、その筋書きにおいて冷たいプレートが沈み込むところに、どうやって熔融が起こるか、どうやって高熱が発生するか、という問題は久しく我々の頭を悩ましてきた。]

 まだ他にも数ヶ所で、この問題について触れられている。如何に重要であるかの証左であろう。ところがその後プレート・テクトニクス説が隆盛を極めると、それに疑問を呈する者がいなくなる。プレートの沈み込みがあれば巨大地震帯があり、その先更に深く沈み込んだ所でマグマが溶融し、上昇して火山になる、などと説明されることが多い。若い研究者にとって、それは疑いようのない知識なのであって、上掲の本におけるような頭を悩ます思索の対象ではなくなった。

 時に、摩擦熱や水によって説明されることがある。しかし、冷たくなって自重で下がっていくプレートと反対側のプレートとの間で、果たして摩擦が起こり得るだろうか? あるいは、比重の軽い水がマグマの溶融する深部にまで沈み込めるだろうか? 水そのものとして沈むのではない、含水鉱物として沈むのだ、という考え方もある。しかし軽石がそうであるように、水を含んだ岩石そのものが軽くなってしまい、プレートが冷たくなっても沈み込めない、と思う。また、マグマの溶融は何故地震帯においてではなく、もっと深い所で起こるのか?など、地震帯と火山帯とが別の所にあることに対する疑問もある。

 私の仮説においては、大陸性の岩石(安山岩や花崗岩など)の収縮によって説明できる。以前(海洋底の縞模様 その12)私は、アーサー・ホームズの「一般地質学」から安山岩線の図を借用した。その図からも明らかなように、太平洋においては、安山岩線と海溝の位置とは同じである。つまり、海溝とは安山岩線に関係した構造物であり、プレートの沈み込みによるものではあり得ない。沈み込みによるならば、弓なりの出っ張りは、大陸側に張り出しているのでなければならない。

 その時にも書いたように、海溝は安山岩の収縮によって付けられた深い傷あとなのである。火山フロントと安山岩線とが並行しているのも、火山フロントの側から考えると分かり易い。安山岩線は火山フロントのフロント(前線)なのだ。

 火山フロントには大陸性マグマの主脈があり、それが収縮すると、前線である安山岩線が陸側に引き寄せられる。その結果、前線の先端に海溝が生まれ、その陸側に歪みがもたらされ、巨大地震の震源域となる。

 大陸性マグマは収縮ばかりではなく反動として、時に弛緩して伸展することもある。東北地方太平洋沖地震の場合がまさにそれであった。そのようにして考えると、あの巨大地震の後、何故富士山が噴火しなかったのか? 地震直後に何故東北地方の土地が東方に移動し沈降したのか? 何故2年半も経ってから遠方の西之島で噴火するようになったのか? 全てが統一的に解釈できるのである。

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