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2015年3月

2015年3月31日 (火)

御嶽山の噴火は予知できていたはず その5

  山の体温を測る

 前回も書いたように、サイエンスZEROの「噴火の前兆は捉えられるか」という番組で扱われたミュオンによる火山透視は、噴火予知に役立ちそうな有望な技術である。番組を見た後で本やネットを調べている間に、手持ちの「日本の火山を科学する」(神沼克伊・小山悦郎著、サイエンス・アイ新書 2011年2月)という本にも何ヶ所か、ミュオン火山透視についての記述が出ているのを発見した。

[2006年にはミュオンラジオグラフィーを用いて、初めて浅間山の火口底付近内部の構造が視覚化されました。2008年10月から浅間山東麓にリアルタイムの宇宙線ミュオン観測点を設置して観測を開始した結果、2009年2月の小噴火前後に火口底浅部の密度変化、つまりマグマの存在をとらえることに成功しました]

 とあり、噴火前後の二つの画像が載っている。もうかなり前からの技術のようだ。この技術はもともと、物理学者ルイス・アルヴァレズが、ピラミッドの中の未知の部屋を探すために開発したのだと、ネット検索中に知った。え? 恐竜絶滅・巨大隕石衝突説のあのアルヴァレズが? 意外な繋がりで驚いたが、もともとが素粒子学者だったのだから、ミュオンという素粒子を使っての、透視実験の方が本業に近いのだろう。

 番組では火山透視の他、アクロスという連続的な地震探査法が桜島で実験中である、とも話していた。片側に重りを片寄らせたモーターを回転させるとあるから、巨大なバイブレータみたいなものかも知れない。山の反対側に検知器を置くと、真っ直ぐに伝わる地震波の他、迂回してマグマ溜まりを通ってきた波も記録されるという。そのようにして記録された地震波の違いを解析して、マグマ溜まりがどこにあるかを調べるらしい。丁度スイカを叩いて熟れ具合を調べるようなもので、火山のマグマ溜まりの有る無しを叩いて調べるということのようだ。

 このスイカを叩くという例えにならい、私も火山を病人に例える。人が病氣になって一番最初にやることは、体温を測ることではないだろうか? ところが火山の場合、噴火という異常を示す最良の指標となるはずの、温度に注目する研究者がいないみたいなのは何故だろうか? お金がかかるからだろうか? 素粒子や地震波に比べ、ローテク過ぎるからだろうか?

 本当を言えば、火口から真っ直ぐ下に向けてボーリングし、マグマ溜まり近くの温度を測れたら一番良いのだろうが、火口には湖があることも多く、噴火の危険もある。山腹を横に掘り、火道あるいはその近くに達し、そこの2ヶ所以上の温度を測る。それによって地熱勾配を測定、その変化から噴火予知が可能になる、というわけである。つまり、火山の地熱勾配が通常よりも高まれば、噴火が差し迫っているということになる。

 もしも日本の活火山の多くにそのような温度計が設置され、各火山固有の特性が知られていたならば、御嶽山のように水蒸気噴火ばかり繰り返す山であってさえも、その前兆を捉えることができたかも知れない。火道の地熱勾配の計測が原理的に可能であるとしたら、その先には更なる展開が考えられる。地熱発電である。

 有り余るエネルギーの噴出が噴火であるならば、火山のマグマ溜まり、あるいはその近くからエネルギーを取り出すことに弊害は伴わない。原子力発電は廃棄物の問題を処理出来ず、将来に禍根を残すだけである。そのために、一日も早く原子力発電から地熱発電へと移行しなければならない。幸い火山国日本はドイツなどに比べ、遥かに豊富な自然エネルギーを持っている。それなのに、自然エネルギー比率において遥かに先を越されている。福島の後ですら原子力発電に固執する、旧い体質の指導者しか持たないのは、不幸の極みである。

 日本はこれから、マグマ溜まり近くを狙った地熱発電を、研究開発してほしいと願う。地熱勾配測定のための掘削はその地熱発電に通じ、火山噴火予知をも可能にする技術である、と考えている。

2015年3月24日 (火)

御嶽山の噴火は予知できていたはず その4

  噴火の前兆は捉えられるか

 丁度私が御嶽山の噴火予知についてを書き始めていた2月28日、NHKのサイエンスZEROで「噴火の前兆は捉えられるか」という番組が放映された。御嶽山噴火から4ヶ月ということにより作られた番組のようで、日本では1月18日に放映された、とホームページにある。

 2007年の水蒸気噴火の地震発生パターンと比べ、今回のパターンは全く違っていたため、前兆として捉えるのは非常に難しかった。しかし、3年前に設置されたばかりの、山体の一千万分の一の傾斜すら検知できる高精度傾斜計は異常を捉えていた。

 という話を聞いて、録画しておいた画面を戻してみた。矢印の付いている7分前では、まだ異常と認識できない程度でしかない。素人目にも分かるのは2分前からである。担当の技術者は7分前に本当に噴火を予知して、登山客に何とか知らせたいとやきもきしていたのだろうか? そうだとしたら、よほどの熟練者だったのだろう。今後の実用化のためには、技術者が四六時中、計器を注視し続けていなければならないし、ためらいは許されないし、登山客に伝えるための拡声システムを設置しなければならないし、結構大変だと思う。

 次に、ミュオンによる火山透視が話題にされた。宇宙線によって生み出される素粒子ミュオンは、いろいろな物質を透過するが、密度の高い山体を通ると失なわれる量が多い。それに比べ、マグマの中では失なわれ方が少ないので、レントゲンで身体の中を透視するのと同じ効果が得られる。

 九州南端と屋久島との中間にある薩摩硫黄島の透視画像が紹介された。7年前のものだそうだ。富士山のような美しい孤立峰の7〜8合目に、くっきりとした山体内のマグマ溜まりが見える。ただこの画像を得るためには、40日間の蓄積が必要だともある。また、マグマ溜まりが火山深部にある場合には観測できないため、他の技術との併用が必要だとの印象を持った。

 ところがネットを見ると、ミュオンによる火山透視技術はさらなる発展を遂げているようである。2014年3月12日付けのサイエンス・ポータルというサイトによれば次のようにある。

[宇宙線に含まれる素粒子のミューオンを使って、活火山の地下のマグマの動きを動画で初めて透視撮影することに、東京大学地震研究所の田中宏幸教授らが成功した。火山噴火予測の精度を上げる画期的な成果といえる。3月10日の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。
レントゲン撮影のようにミューオンで地球内部を見る手法はミュオグラフィと呼ばれ、1990年代に東京大学理学部のグループによって提案された。田中教授らが2006年に浅間山の透視を実現してから急速に発展して、世界の活火山でも観測が行われた。しかし、動画として撮影するには雑音レベルが高く、困難だった。]

[田中教授は「これまではミューオンでは40日に1枚しか撮影できなかった。今回は3日に1枚の撮影で、何とか動画になった。1日に1枚まで撮影できるようになれば、噴火のリアルタイム予測に近づく。そのための検出精度の向上に努めたい」と話している。]

 サイエンスZEROの番組の方が10ヶ月も遅いので、その後の発展というのは当たらないかも知れない。しかしいづれにしても、今後の展開次第では、火山噴火予知を可能にする技術ではあるようだ。

2015年3月19日 (木)

御嶽山の噴火は予知できていたはず その3

  限界は学者の観念が作ったのかも

 御嶽山はこの35年間に4回(①1979年②1991年③2007年④2014年)の水蒸気噴火を起こしている。死火山だと思われていた山が、①の噴火に先立つ1976年頃から群発地震が起こるようになってきた。そして、1978年10月にM5・3の地震が発生、①の水蒸気噴火の丁度1年前のことだった。

 その噴火の5年後、1984年には長野県西部地震M6・8が起きている。この地震は震源が浅かったこともあり、山崩れを起こし、死者29名、住宅全半壊87棟など、かなりの被害をもたらした。それもあり地震後、溝上恵氏らの東大地震研チームを初め、各地からの調査隊が集まった。

 溝上氏らは数台の携帯用地震計を持ち込み、観測点を変え、数多くの余震観測をした。彼らの目的は、余震域を定め、地下の断層を発見することであった。気象庁の「有史以降の火山活動」というサイトを見ると、②と③の噴火の間には毎年のように地震や微動が発生している。私には地震と火山噴火とに強い関連性があり、断層はマグマの動きの結果として生まれるだけのもののように思えるのだが、専門家はどうしても、断層が地震を引き起こす、と考えているようである。しかしこの場合には、断層は実際に地下に見つかったようで図のように、本震と余震の震源は直線状に並んでいる。Photo_2

 溝上氏らの余震観測のもう一つの目的は、御嶽山の南東麓の地殻深部にあるはずのマグマ溜まりを発見することであった。その観測については、前々回にもちょっと触れた「大地震は近づいているか」(溝上恵著、筑摩書房、1992年)という本の中に次のようにある。

[御岳山の噴火以前に、御嶽山南東麓で群発地震の観測を行った気象庁火山機動観測班の報告の中に、御岳山の南東麓の集落、九蔵(くぞう)と白崩(しらなぎ)での地震記録が載せられていました。その記録には、震源から観測点に直接伝わってくるP波初動の約5秒および約12秒後に、きわだった振幅の波が明瞭に見いだされました。]

[このきわだった波の伝わる時間や振幅の変化などを解析したところ、それは震源からほぼ垂直下向きに出たS波が、地表から10数キロの深さにあるマグマの表面で反射して地表にもどってきた波であることがつきとめられました。このような事実から、火山前線に沿って起こっている群発地震は、群発地震の震源域の直下に潜んでいるマグマと深い関係があると考えられます。]

[マグマが潜んでいると考えられる領域は、御岳山の南麓から南東麓にかけての長さ約15キロ、幅約5キロに限られていること、マグマ溜まりの表面の深さは、11キロから15キロで、南南西から北北東に向けて約30度の傾斜で浅くなっていることなどがつきとめられました。このマグマ溜りの表面の深さのおおまかな分布は、御岳山に向かって浅くなっています。また群発地震の震源分布の底面とマグマ溜りの表面の深さはほぼ5キロの差があり、同じ傾斜で北に向かって浅くなっています。]

 溝上氏らは「マグマ溜まりは、群発地震域の5キロ下にある」と考えているようである。三宅島の噴火についての島村英紀氏の言葉を改めて読み直してみると、「群発地震とは何か?」に対する学界内での見解がばらばらであると知る。「滑稽なことに、地震の3つの委員会と火山噴火予知連絡会、つまり4つの委員会すべてで、同じ群発地震を議論して、別々のコメントを発表した。」(地殻底のマグマ層 その13)とある。

 こうして読んでいくと、問題の真の根が見えてくる。山体の中に群発地震などの活動の中心点があっても、そこを調べるよりはむしろ断層を探し、群発地震があってもそこではなく、その下にマグマ溜まりを求める。地震は断層が起こすという思い込みがあり、マグマ溜まりは深くにあるはずだという思い込みがあるからだろう。

 「水蒸気噴火の予知は困難で、学問の限界だ」と言うが、その限界は、学者の観念が作ったものであるかも知れない。

2015年3月10日 (火)

御嶽山の噴火は予知できていたはず その2

  水蒸気噴火とは何かを考える

 前回も書いたように、ネットを調べたりした後になると、溝上恵氏の本に出会う前の、水蒸気噴火だったのだから予知できなくて当然だった、という考えに戻った。前回引用したNHK時論公論のサイトから、もう少し引用する。

[今回、気象庁や専門家は噴火を予知することができませんでした。

実は、その最大の理由は、火山学上、噴火の規模が小さかったからです。専門家や防災機関などで作る火山噴火予知連絡会は「小規模な噴火だったが、山頂付近に多くの人がいたため、被害が大きくなった」と分析しています。]

 更に、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長の「水蒸気噴火を事前に明確に把握することは困難で、学問の限界だ」という言葉も紹介されている。

 なるほど、なるほどである。ただ、「予知できなかった最大の理由は、噴火の規模が小さかったから」という理由付けは、「東海大地震だけは予知できる」というのとどこか似ている。その間に、阪神大震災を初めとする多くの地震が日本各地を襲い、東日本大震災までもが、実質上の予知なしに起こった。

 「水蒸気噴火の予知は不可能」という意味の言葉も、よくよく考えてみると、おかしな話である。過去4回の噴火は、予兆のあるなしはあっても、全て水蒸気噴火である。今後とも、水蒸気噴火の可能性の方が圧倒的に多いに違いない。とすれば、御嶽山の噴火予知はできませんと言うに等しい。

 御嶽山は、3000メートルを超える富士山に次ぐ高さの火山である。カムチャツカ半島辺りだと、富士山より1000メートルも高い頂上から、最近まで溶岩を噴出中だった火山もある。しかし日本列島の高い火山が、溶岩本体を頂上から噴出するのは容易なことではないのだ、と思う。富士山が噴火する場合にも、いきなり本格的なマグマ噴火ではなく、最初の噴火は、水蒸気噴火の不意打ちであるかも知れない。今回のような噴火災害が夏シーズンの富士山で起こったとして、それでも火山関連の科学者たちは「学問の限界ですから」と平然としていられるだろうか?

 前回の引用にもあったように、今回の噴火の兆候はたった一回、16~7日前の地震多発だけだった。何があったのだろうか?と考えてみる。どうやら、御嶽山の火道にはマグマが居座っていたようである。溜まった地下水がマグマに触れて水蒸気になると、膨張して逃げ道を探す。その道の途中に障害物があると、そこに圧力がかかり、地震や微動、地殻変動が起こる。では、今回の噴火だけそうした兆候が一回しか表われなかったのは何故か?Photo

 火道下部に大きな障害物があり、そこに水蒸気の圧力がかかっていた。16~7日前の地震多発は、その圧力が障害物を取り除こうとしてせめぎ合い、最終的にそれが取れた、ということを意味するのだと思う。その後は、以前の水蒸気噴火によって火道がクリアされていたこともあり、何の兆候も引き起こすことなく頂上にまで達したと思われる。

 データに表われるのは病気にとっての症状である。本来は、病気や噴火の本質を、症状やデータを通して見ようとすべきなのである。データと前例にこだわり、「御嶽山の中で何が起こっているのか?」のイメージを持ち損なったがために、今回の悲劇が起こった。「もう少し様子を見よう、活動が低下した、そして突然の噴火」というのは、私も以前書いた(地殻底のマグマ層 その12、その13)数多くの失敗と同じパターンである。

 地震多発の段階で、これこれの危険性があると、登山道入り口やネット上などで、登山者に知らせる努力をすべきであった。その程度の段階では入山規制をすることはできなかっただろう。しかし地震多発情報が伝えられていたならば、自発的にスケジュールやコースを変える者が多く出たはずであり、多くの命を救えたはずである。

2015年3月 3日 (火)

御嶽山の噴火は予知できていたはず その1

  水蒸気噴火の予知は不可能か

 御嶽山噴火の第一報を知ったのは、2014年9月27日の朝のことだった。その日は日曜日であり、通常のニュースは昨夜から短いものしかなかった。噴火から既に半日、かなりの映像が集まっていた。頂上から噴煙がもくもくと出始めている映像もあった。それを撮った人はどうなったのだろう、心配になった。

 何故予知できなかったんだ、とも思った。しかし、水蒸気噴火だと聞いて納得した。マグマの上昇ならば山体も膨らむし、地震も多くなる。それに対し水蒸気の上昇は、粘度が低い分、山体膨張などの予兆が 小さい。イエローストーン公園のガイザー(間欠泉)を大規模にしたようなもので、地下のマグマに接して水蒸気になった水は、わずかな隙間でもあれば噴出する。しばらく前に多量の雨が降り、例年になく地下水が多かったのだろう。ダムなどによる誘発地震は、地下だけで終わった水蒸気噴火なのだ、と考えたりもした。

 最近、共役地震についての図を探して、手持ちの地震関連の本を調べた。何処かで見た記憶はあるのだが、思い出せない。調べているうちに、御嶽山についてかなり詳しく書いてある本を偶然に見つけた。「大地震は近づいているか」(溝上恵著、筑摩書房、1992年)という本である。

 それによれば1979年に、有史以来初めての大爆発を起こしている。しかもその後、M6・8の中規模地震や群発地震が起こり、マグマ溜まりらしいものも観測されているのである。となれば、もしも細心の警戒心さえあったならば、被害を軽減する方策が何か見つけられたのではないだろうか。

 先ずはネットで調べてみることにした。多くのサイトにおいて、専門家たちの意見は一致している。例えばNHKの時論公論には次のようにある。

[ところが、今回は、山が膨らむなどの地殻変動は観測されませんでした。マグマがそれほど上昇しないまま起きる水蒸気噴火は、地殻変動や火山性微動が起きないこともあり、兆候を確実にとらえられるほど研究が進んでいない、予知は難しいといいます。直前まで地殻変動や火山性微動がなくても、もう一つの判断材料である火山性地震は1か月前から起きていました。予知に生かすことはできなかったのでしょうか。

今月10日には52回、11日は85回観測しました。ただ、その後は減って、噴火の前の日は6回、当日も直前の11時40分までは6回しか起きていませんでした。しかも、火山性微動が始まったのは11時41分で、噴火のわずか11分前でした。ただ、この11日の85回というのは、前回噴火した7年前以来の多さでした。気象庁や専門家は、地殻変動がなかったので、噴火はすぐには起きないと判断しましたが、この85回というのは、結果的には噴火の兆候と呼べる数少ない変化でした。

地震の増加を噴火の兆候と判断しなかった理由は、過去の噴火では、よりわかりやすい兆候が見られていたからです。御嶽山はこの35年間に4回、水蒸気噴火が起きています。昭和54年10月に起きた中規模の噴火の際は、まだ観測態勢が整っていませんでした。平成3年のごく小規模な噴火では、噴火の2週間以上前から、地震や微動がありました。平成19年のごく小規模な噴火でも、地震や微動が2か月以上前から増えていたほか、地殻変動も観測されていました。

つまり、過去2回は、今回よりさらに規模が小さかったにもかかわらず、だいぶ前から、微動や地殻変動といった兆候があったのです。今回は、地震はあったものの、地殻変動はなく、微動も直前でした。

これまでのデータが裏目に出た形になりました。]

 やっぱり水蒸気噴火の予知は不可能かな。私は再び、溝上氏の本を読む前の考えに戻った。

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