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2013年9月

2013年9月26日 (木)

遠隔誘発地震の謎 その2

  音叉のように共振して地震を誘発(?)

 私の住んでいる町の図書館は小さい。ブログに載せる予定にしていたイラストの出ている“The Earth”という本があるかどうかを確かめる意味もあって、一応そこに最初に行き、館員に尋ねてみた。案の定なかったが、他の町の図書館にはあり、わずか75セントの手数料だけで、取り寄せることが出来るという。素晴らしい。もう一つ、「サイエンス」誌があるかどうかも尋ねた。それもない。しかし、2つの隣町のどちらにもあると教えてくれた。

 昨秋日本に行ったとき、麹町に滞在していたこともあり、10分ほどの距離の国会図書館に歩いて出かけた。日曜で閉館日だった。わが町の小さな図書館ですら日曜日閉館ということはないので意外だった。平日に出直したところ、入館するのに身分証明書が必要だと言われ、パスポートを携行していなかったことを悔やんだ。

 以前母校の大学の図書館に行き、学生証のない者は入れないと断られた。日本は全般的に閉鎖的なのかもしれない。当地では、スタンフォード大学の図書館であれ、米国地質調査所の図書館であれ、身分証明書を見せないでも入れる。もっともスタンフォード大学にはいくつもの図書館があり、どの図書館でも入れるのかどうかは分からない。私が利用したのは地質学用の図書館であり、ニュースレターを書いていた頃はずいぶんとお世話になった。

 隣町のサンマテオ市の図書館には、「サイエンス」誌のバックナンバーまで棚に並んでいる。目当ての7月12日号は簡単に見つかった。何と、その号には誘発地震関連記事だけで3箇所もあり、昨年3月の記事までついでに見つかった。

 「サイエンス」誌のそれらの記事を読むと、遠隔誘発地震の問題は更に複雑であり、1度や2度通して読んだだけでは到底理解できそうにない問題のようだった。遠隔誘発地震というのは、石油の新しい掘削法により、人為的な誘発地震が多発するようになった地帯のうちで、遠くの巨大地震に感応して新たに引き起こされる地震のことをいう。私のイメージとしては、音叉の共鳴のような共振現象と捉えている。

 記事の中では、人為的に引き起こされる地震は「誘発地震」、遠隔誘発地震のように自然の力で引き起こされる地震は「トリガー地震」と区別しているが、私は出来るだけ後者を「遠隔誘発地震」の語で間に合わせていく。「トリガー」もしくは「トリガリング」の語が一般的になるまでは、「引き金を引く」とか「引き起こす」という意味が伝わりにくいかもしれないからである。 

 表面波が関わっているようでもある。P波やS波ではなく、なぜ表面波が遠隔地の地震を引き起こすのだろう? しかもそれはアメリカの中西部の一部、特に、オクラホマ、テキサス、コロラドの3地点に限られているようである。人為的な誘発地震を起こすオイルシェールガスの採掘地は他にもあるのだが、そうした所で遠隔誘発地震が起こることはないという。では何がその差をもたらしているのだろうか? 上記の3地点の特色としては、かなり前から長期にわたって流体注入が行われていること、近くに小さな群発地震を起こす地帯があること、長いこと中規模程度以上の地震が起こってはいない地帯であること、などだそうである。ずっと昔からの流体注入により、採掘場の地下がいわば飽和状態になっているかららしいのだが、だからといって、それで断層がどのように動くのか、イメージとしてつかみにくい。

 遠隔誘発地震というのは、全くのところ謎だらけの現象である。 

2013年9月16日 (月)

遠隔誘発地震の謎 その1

  3.11地震が米中西部地震を誘発した 

 誘発地震を調べているうちに、インターネット上にタイムリーな記事が出ているのを発見した。米科学専門誌「サイエンス」2013年7月12号ハイライトとある。
http://www.eurekalert.org/pub_releases/translations/sci071213jp.pdf
 この記事を読んだのは8月初旬のことで、発行日から1ヶ月経っていなかった。その記事の中には、「2011年の東北地方太平洋沖地震の後にアメリカ中西部の流体注入現場近くの断層帯では活動が活発化したが、これはおそらく日本での強い揺れへの反応だと推測される」とあった。つまり、シェールガス採掘現場などが、遠い日本での巨大地震に反応し、新たな地震源となったというのである。

 今まで、水やダムによる誘発地震についてはさんざん扱ってもきた(地震は水素爆発で起こる その9)が、その場合ならば、理由はよく分からないなりに、何とかイメージはつかめる。もともと地震の起きそうな所に液体を直接注入するのだから、なんらかの異常があってもおかしくはない。

 ところがこの記事のような現象は、それと同じものとしてはイメージできない。日本とアメリカほども離れた2つの地域が、いったいどのような形で繋がっているのだろう? 人間が水を注入すると、その辺り一帯はぶよぶよになるということだろうか? とはいえ、自然の地質現象に比べたら、人間が注入する水などは小規模なものだろうと思う。言ってみれば蚊が刺した程度のものでしかないはずだ。東北地方太平洋沖の震源から発した地震動は、アメリカ中西部に達する前に、ハワイ島、サンアンドレアス断層、イエローストーンなどという地帯も通ってきたはずである。そうしたいわば大きな傷には影響を及ぼさず、蚊の刺し痕程度のものにだけ誘発地震を発生させた、というのはどういうことなのだろうか? 考えれば考えるほど訳がわからなくなる。こんな不可解な現象もあり得るのだとしたら、HAARPのように、電磁波を使って遠方に地震を起こす、という考え方をもおいそれとは否定できない。

 ところが、これほどに数多くの謎を持つ特異な現象であるのにもかかわらず、ウェブサイトなどで見られる限り、科学者らはそうした謎に着目しているようではない。

 地中には断層があり、注入された液体は潤滑油の働きをして、断層を滑り易くしているのだ、と彼らは考えている。遠くの巨大地震が引き金となり、既にして一触即発の状態にある断層が揺れ動き、その地帯での地震となる、というわけである。正統的な地球物理学の定説に従えば、当然そのように考えることになる。今まで通りの地震断層説の箱の中にぎゅうぎゅうと押し込んでしまおうとしているようにも見える。つまり、地震断層説だのプレートテクトニクス説だのがあまりにも使い勝手が良いために、このように謎の多い新しい現象が発見されても、謎を謎としては認めず、こだわりのない新しい見地からの探究を妨げている。残念なことだ。

 地震断層説への疑問に関しては、今までにも何度となく疑問を投げかけてきたが、この先もこのシリーズの中で、もっと詳しく議論するつもりである。いずれにしても、私自身としては初めての、この遠隔誘発地震という奇妙な現象を知り、すっかり興奮した。その翌日、「サイエンス」誌の原本を探しに、近くの町の図書館に出かけた。

2013年9月 7日 (土)

地震は水素爆発で起こる その11

  地震のトランポリン効果

 2008年岩手・宮城内陸地震は非常に奇妙な地震であった。それを、地震学会広報紙「なゐふる」2009年7月号の記事から引用する。

[地震動は通常、水平動成分が上下動成分に比べて2倍程度大きいことから、地震ハザード評価においては多くの場合、水平動成分のみが考慮されます。しかし、今回観測された地震動は、逆に上下動成分が2倍以上大きく、その絶対値も3866galと非常に大きなものでした。また、上向きの加速度が下向きに比べ2.5倍以上大きいという非対称性を有しており、さらに下向き加速度の周期が上向きに比べ大きいことや、下向き加速度は概ね1g(重力加速度)で頭打ちするという、これまでに知られていない性質があることが分かりました。この様な非対称な地震動を生むメカニズムは従来の理論では説明できません。

トランポリンで跳ね上がるときには1gを越える大きな加速度を受けますが、落ちるときには重力加速度である1gの加速度しか受けません。我々は、表層地盤がこれと同じように振る舞う『トランポリンモデル』を提唱し、この上下動成分に見られる非対称性を説明することに成功しました。] 

 通常は横揺れの方が強いはずの地震の中で、この岩手・宮城内陸地震だけは特別、縦揺れの方が強かったというわけである。プレート説によるもともとの地震発生説に従えば、横揺れが強いのは当たり前だが、縦揺れに対しては説明が困難である。

 これは絶対、下から突き上げる動きがあったのだ。山本寛氏らが主張する爆発と見るべきか、私の仮定する「横向きの噴火」がこの場合縦向きになったとすべきかは別として、ともかくも、プレート説では説明のつかない地震が起こったのだ、と私は考えた。

 ところがその後になり、防災科学技術研究所のウェブサイトにあるもう一つの記事を読んでみて驚いた。それは「防災科学技術研究所 主要災害調査 第43号」(2010年3月)となっていて、書いたのは地震研究部主任研究員の青井真氏および他4名の研究者である。「なゐふる」の記事の著者も同じ青井氏であるのだが、その記事においてはスペースの関係もあり、以下の問題点は省略されたものと見られる。

[IWTH25観測点の地中強震計は、岩盤に達する深さ260mの観測井戸の底に設置されているが、地中記録には上で述べたような非対称性は見られない(図4b)。このことから、上下対称な地震動が表層地盤に入射し、地表に達するまでの伝播経路で何らかの作用を受けることで非対称性が生まれたと考えられる。]

 (図4b)の図は転載しないが、その波形を見ると確かに、地上のものと地下のものでは明らかに違っている。地中においては上下、水平共に似たような波形をしている。ということは、地下で爆発があったり、上向きの噴火があったり、ということではなく、その辺りの地層が特殊だった、というだけのことを意味するようである。残念。

 では、いったい何がその辺りの地層にそのような特殊性をもたらしたのであろうか? 構造的な違いだけではなく、歴史的な成因の意味からも地質学者らに調べてみてほしいものである。なにしろ、ギネスブックに載るほどの加速度をもたらした地帯であるからには、綿密な調査の必要性があるはずである。それにしても、偶然に地下の観測点があったからこそ知り得た事実である。

 今でも「トランポリン効果」のような新発見の現象があるとしたら、地上で観測される地震記録だけでは、地下の本当の姿は分からない、ということになる。私は、島村英紀氏の「地震はどこに起こるのか」(講談社ブルーバックス 1993年)の中の話を思い出す。彼らが開発した海底地震計によって観測したところ、それまでの観測記録が誤りだったことが発見された、という。そのことからしても、地中のことは地中でじかに観測されなければならない、と言える。 

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