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2013年6月

2013年6月30日 (日)

地震は水素爆発で起こる その2

  HAARPという地震兵器

 OHさんのメールの中では、水素爆発とHAARPとが区別されていない感じがあり、その頃の私からの返事においても区別してはいない。2年経った今になっても、その方面に特に詳しくなったというわけではないが、どうもそれらは別物のようである。

 たまたま昨年の5月か6月、サンフランシスコの歯医者に通う必要があったこともあり、その地の紀伊国屋書店に何回か寄った。そして、「地震兵器HAARPと悪魔のゴッドシールド計画」というタイトルに引かれ、月刊「ムー」2012年5月号を買う気になった。彼女からのメール以来、気になってはいたのである。

 HAARPという言葉をインターネットで調べると、高周波活性オーロラ調査計画(High-frequency Active Auroral Research Program)の頭文字のようである。電離層における電子の研究を行っているらしいのだが、観測が主体だとすれば、たとえそれが軍事目的であったとしても納得がいく。電離層の研究は他でも多くあり、地震の前に電子数が増える、ということは「地震は雷のようなもの その8及びその9」でも扱った。

 アメリカの国防総省がその研究を主導しているという点も理解できる。同じシリーズ内の「その3」では、長尾年恭氏の言葉を引用している。「中央アジアのキルギスで、非常に大規模な地中への電流注入実験を行っています。これは、ソ連時代に核戦争で電離層が吹き飛んで通信ができなくなるのに備えて、……」とあり、えーっ、そんな可能性もあるんだ、と驚いた。核爆発だけではなく、妨害電波ということも考えられる。現在でも、日本や米国の政府機関や防衛関連企業など国家の中枢を狙ったサイバー攻撃が多発していると言われる。どうやら中国政府や軍が関与しているらしいということで、今話題になってもいる。(「クローズアップ現代」2013年6月6日放送分ほかを参照)

 人間活動の全ては軍事的に転用可能である。超小型のヘリコプターが、道路や橋の老朽化を監視するために使われる、というのも最近のニュースで知った。それを見ながら私は、その技術が他国に流出して軍事目的で使用される危険性の方をより心配した。第二次大戦時には、アメリカインデアンの言語が暗号として使用された(「コードトーカー」を参照)。近代戦は総力戦であり、情報は特に重要であるのにもかかわらず、戦闘そのものを重視し、軍事的な補給や情報を軽視したことは、かっての日本軍の敗因の一つであった。

 したがって、オーロラを含む電離層の研究が軍事的に大きな意味を持つだろう、とは理解できるのだが、それがどのように兵器として使われ得るのか、以前は理解できていなかった。雑誌「ムー」の記事によれば、その仕組みは次のようなものである。

[ただでさえ不安定な状態にある電離層に、強力な電磁波を放射し、加熱する。]

[HAARPは世界最大の電離層加熱器だ。アラスカの施設から照射されるエネルギーは電離層に直接向けられ、それが地表に直接跳ね返る。跳ね返ったエネルギーが当たる場所も正確に決めることができる。]

[地中の断層付近では、その周囲がプラス、マイナスに分極または帯電状態になっている。つまり、地中に「電離層」が発生しているのだ。これぞベギーチ博士が指摘する「地中プラズマ」なのである。

この地中プラズマめがけてHAARPから電波を照射。そこにエネルギーを注入し、断層の歪みをさらに拡大させて地震を引き起こすという。]

 この記事により、一応イメージだけはつかめた。電離層を電子レンジ状態にする、ということなのだろう。

 しかし、いくら電離層で電波が反射するとは言っても鏡ではないのだから、照射したエネルギーの減衰が大きく、兵器としての効率が良さそうには思えない。そして何よりも、地震の仕組みが分からない現在、兵器云々というのは早計過ぎる。今はまだ、そういう段階ではない。

2013年6月23日 (日)

地震は水素爆発で起こる その1

  3.11地震の日の偶然

 東日本大震災の日に、地震学者と初めて知り合い、家に泊めてもらったという稀有(けう)な経験をした女性からメールをいただいた。先ずは彼女からの最初のメールを以下に。 

[初めまして。偶然のことからブログにたどり着きました。

今回の地震を水素爆発によって引き起こされた人工の地震だという説をネットで読みましたが、そのようなことは可能だと思われますか? HAARPというオーロラ観測のシステムを使って・・・というような話でしたが、そういうこともありうるのでしょうか? もしご迷惑でなければ、正否だけでもお知らせ頂ければ幸いです。

OH]

 以下は私からの返信の抜粋である。

[OH様

水素爆発については、「地震学のウソ」(山本寛、工学社、2009年)に書かれています。ネットにおける説は、この本を源流とするのかもしれません。水素爆発や人造地震、必ずしもあり得ないことでなく、人造地震に対しては、私も、実験を推進してほしいと積極的に願っています。もう下書きには書いてあるのですが、私のブログでも、人造地震実験について掲載する予定でいます。

ただし、ネット上における地震予知説や人造地震(ネットでは人工地震、誘発地震とも呼ばれている)には、かなり無責任な、「トンデモ」に類するものも多く、風評被害を誘発しかねません。今はまだ、これから科学的な実験を、という段階だと考えています。

 篠塚安夫]

 その後に来た彼女からのメールには驚かされた。

[……

地震の日に東京近郊の乗馬クラブで個人レッスンを受けていたのですが、交通 機関がストップしてしまい帰宅できなくなりました。丁度、そこにいらしていた地震学者の某さんが一晩、お宅に泊めてくださったのです。某さんとはその日初めてお目にかかりました。しかも、いつもは乗りにいらっしゃらない日だったそうです。馬を馬房から出そうとしたらグラっときたのでそのまま乗馬はやめてTVに釘付けになっていらしたそうです。道々車中で、又お宅でも地震のことをたくさん教えてくださいました。素人にもわかるように。小学校の理科を思い出しました。私の馬の先生はアメリカ人でしたので英語で!

あの大地震の日に初対面の日本の地震学の大家が一緒にいて下さった・・・のは、なんだか不思議な気がします。]

 このメールのやり取りは、内容からも分かるとおり、東日本大震災直後の3月のことなのだが、当時はこの問題を扱うことができなかった。私としては、当時書きかけていた「地殻底のマグマ層」のシリーズを書き終え、その後で「地震兵器」や「人工地震」、そして「水素爆発」の問題を扱いたいと考えていた。

 「原発」の問題などを飛び入りさせたために、その問題を扱えるようになるために、何と2年以上がかかってしまった。我ながらあきれている。

2013年6月16日 (日)

1960チリ地震断層の謎 その7

  チリでは巨大地震が直下型

 今回チリの地震を調べていて不思議なことを発見した。日本の地震には海溝型と直下型がある。海溝型の方が一般的に大きく、M8にもM9にもなったりもするが、直下型はせいぜいM7止まりである。ただし直下型は震源も浅く、震央が都市部に近かったりすると被害も大きい。海溝型はプレートの沈み込みによる。直下型は活断層が動くために起こる。地震というのはそういうものだ、と言われてきた。ところがチリにおける地震は、この常識を破るものであった。

 チリの巨大地震の余震図を眺めていたら、それらの、マグニチュード8を越えるような巨大地震が、すべて陸上で起こっているということに気がついた。内陸で起こる直下型地震は海溝型地震よりも小さいという常識は日本だけの常識で、チリではその逆になっているのだ。

 とすると、チリの地震は直下型なのか海溝型なのか? 起こっている場所的には直下型だが、規模の上では海溝型である。このような地震を知ると、そもそも、直下型と海溝型を分けること自体に本当に意味があるのだろうか? という疑問まで生じる。地震は地震であって、分類したからといって地震の本質に迫れるわけではない、という気もする。

 海洋プレートが海溝で沈み込む時に、それに引きずられた反対側の陸のプレートが、引きずりの限界に達して跳ね返り、その時に地震が発生すると言われる。しかし全ての陸側のプレートが同時に跳ね返るのではなく、区域区域に分かれていて、それぞれの区域には跳ね返る固有の周期がある、というのが地震空白域説の根本的な前提になっている。

 この地震発生機構と地震空白域説とを合わせて考えているうちに、私は何かに似ていると思った。そうだ、オルゴールだ。ピンの付いている円筒のシリンダーがぐるぐる回るのは海洋プレート、反対側の櫛歯(くしば)と呼ばれる金属板は陸のプレート、金属板が区域区域で分かれているのは空白域、ピンに引きずり込まれ、弾かれて音が出るのは地震、まったくそっくりである。

 プレート・テクトニクス説が一般にも受け入れられているのは、こうした身近なものとの類比が可能でイメージし易いからかもしれない。しかしそれは、陸のプレートの先端部で巨大地震が起こる日本ならではのことで、プレートの厚い部分で巨大地震が起こるチリのようだったとしたら、弾く、というイメージを持ちにくかったかもしれない。

 東北地方太平洋沖地震が起こる前までは、超巨大地震は日本近海では起こらないもの、と何となく思い込んでいた。しかし、そうした思い込みに何の根拠もなかった。東海地震だの、南海地震だのは、相模トラフ沿いで起こるとされている。ところがそれもまた、同様な思い込みに過ぎず、マグニチュード8クラスの巨大地震が、日本列島の直下で起こる可能性も、チリでの巨大地震の震央を知った今、否定できなくなった。

 いったいチリでは何故直下型地震がそれほどにも巨大なのか? 学者に調べてみてもらいたいものである。

2013年6月 9日 (日)

1960年チリ地震断層の謎 その6

  震源地と断層が別の場所にある

 1960年チリ大地震の震央(「地震発生源である震源」の真上の地点)は陸上にあるのか、海底なのか。そしてその断層は陸上か、海底か。竹内均著「地震の科学」に出ている図では、震央はちょうど海岸線上にある。そして今回金森博雄教授からのメールに添付された論文の図においても、震央は海岸線上、どちらかというと海上かなという微妙な位置にある。

 インターネットで調べてみた。中には海上に震央のマークが描かれているものもあり、陸上と決め付けることはできない。震央の位置をウィキで調べると日米でいくぶん違っている。日本のにはバルディビア近海と書いてあるのに、緯度経度の数値で調べると陸上である。米国ので調べると、引用元はUSGS(米国地質調査所)のシェイクマップ(地震地図)となっている。元の図をよく見ると、震央は陸上なのに、余震域は海上である。何が何だかわけが分からなくなってきた。

 更に、そこに出ている経緯度の数値をグーグル・アースに入れてみると、陸上になっただけではない。グーグル・アース自体に1960年チリ大地震の震央のマークがついていて、そこは先ほどの地点より更に80キロも内陸なのだ。観測史上世界最大の地震のことなのに、その震央の位置すら確定していないとは、一体どういうことなのだろうか。ただ、こうして調べてみて、震央が陸上にあるという方が信ぴょう性が高いみたいである。そうなると、数々の疑問が湧いてくる。

 陸上に震央があってそこが一番揺れた中心だとすると、ハワイや日本に被害をもたらしたほどの巨大津波は、どのようにして起こったのだろうか? 震源が海の下でなければ、いくら陸地が揺れても津波になるとは思えない。前震や余震の震源が海底にあったりしたのだろうか? それとも、シェイクマップの図の通り、震央は陸上だが、断層は海底なのかもしれない。それならば、金森博雄教授の言葉通り、深海底を調査すれば断層の跡が見つかるかもしれない。

 断層が、ということではないが、震央近くでは揺れないのに、遠い地域で異常に揺れる、という場合が結構あるらしい。「地震は必ずくる」(阿部勝征著、読売科学選書 1990)という本には、震源地がウラジオストクの辺りなのに、日本の、太平洋岸の方がもっと強く揺れた、という例などがいくつか出ている。また、サンフランシスコなどに大きな被害を与えたロマプリータ地震の場合、震源地から100キロも離れた遠隔の地が、最大の震度と被害を受けた。

 したがってチリ地震の場合にも、震源地と断層の場所が違っていること自体には驚かない。ただ、そういうことがあるのだとすると、地表に表れた断層を調べるということは無意味であるように思われる。断層をいくら調べても、震源の状態を知ることにはならない。

 だいたい、チリにサンアンドレアス断層みたいな活断層はないのだろうか? 1960年のチリ地震時に、震央近くの陸上の断層群はまったく動かなかったのだろうか? 考えれば考えるほど、謎は増えるばかりである。 

2013年6月 1日 (土)

1960チリ地震断層の謎 その5

  ルールを勝手に変えていいのか

 もう一度、上田誠也氏の著書「地震予知はできる」からの引用箇所(東北地方太平洋沖地震 その4)を読み返してみる。1973年に力武常次氏が国会で証言してそのわずか2ヵ月後に、根室半島沖地震は実際に起こった。大成功である。しかしその時に同時に指摘して有名になった空白域、遠州灘では40年経った現在でも地震は起こっていない。

 いや、正確に言えば起こってはいる。2009年8月11日にM6.5、2011年8月1日にM6.1 の中規模地震が相模湾で起こった。しかしそれらは、想定されている東海大地震に比べはるかに小さいものであるために、空白域を埋めるものとはみなされていない。何とも座りの悪い地震である。地震空白域なのだから、小さかろうとも、本来あってはならないはずなのだ。

 このようにして、地震空白域説には新たな条件が付け加えられる。小さい地震は起きても空白域を解消することはない。同じ区域でも、内陸部と沿岸部を分けることは許される。M8.8の巨大地震が起きても、場合によっては空白域を埋めるものとはみなされない。後から付け加えられるこうした条件を見ていくと、デイヴィド・ジャクソン氏の議論を思い出す。地震空白域説によって安全とされている地帯に、危険とされる地帯の5倍もの地震が起こったという彼の反証実験については、このブログでも2度触れたことがある(東北地方太平洋沖地震 その4)(地殻底のマグマ層 その11)。

 彼がその結果を発表した後、地震空白域説を支持する科学者たちからさっそく激しい反論が寄せられた。その一つは、「M7以上の地震」という基準を問題にしたものである。1980年代以降、空白域を決めるのはM7.5以上の地震ということになっているらしい。M7の地震ではエネルギー的にあまりに小さい、というわけだ。米国地質調査所の地震学部長も、同じ観点からジャクソン氏を批判する。マグニチュード7のクラスのものと8のクラスのものとでは、ブドウとスイカほどにも違う、と言う。

 エネルギー的にブドウほどの地震が起きたからといって、空白域が埋まったことにはならない、ということなのだろう。相模湾で起こった地震はマグニチュード6クラスのものばかりだったので、同じ比喩を使えば、ブドウの種ほどの小さな地震でしかない。スイカほども大きいはずの想定東海地震とは比べようもない。

 さてこれからが、それらの反論に対するジャクソン氏の反論である。

 それではまるで、カード・ゲームをやっている時に、望みの札が来なかったらルールを変えよう、と言い出すようなものだ。モデルに条件を加えれば加えるほど証明できることが少なくなる、というのは科学における公理である。地震空白域説は、本来は地震一般について当てはまる説として出されたはずなのに、条件が付け加えられるにしたがって、当てはまる分野が次第に小さくなっていった。

 しかし、サンフランシスコ他に多大の被害を与えた1989年ロマプリータ地震はM7.1である。マグニチュード7以下でも我々に大きな被害をもたらす地震は多い。となると、巨大地震だけに限られた地震空白域説は、本当に人の役に立ち得るのか? 我々は、その根源的な問いかけに立ち戻らなくてはならない。

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