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2013年4月

2013年4月28日 (日)

地震は雷のようなもの その12

  地底こそは最後の秘境

 このようにして、キルギスの電流流し込み実験、余震とは何か、雷、スプライト、地震や火山の水平移動、横向きの噴火、火山雷、電離層における電子状態、電磁波の伝播異常などと見てきたが、その結果として知りたいのは地下の状態である。この100年ほどの間に、人類は数多くの秘境の姿を明らかにしてきた。そしてそれは宇宙の果てにと及び、深海をも目の当たりに見せてくれるようになった。しかし地底は、今もって秘境のままである。そここそは残された最後の秘境なのだ。

 地底の姿は、プレートテクトニクス説によって描かれてはいる。しかしそれらは絵に過ぎない。絵だけなら幽霊も描けるし、いるはずのないタコのような火星人すら描ける。コンピュータ・シュミレーションも、入れ込む変数しだいではどのようにでもできる。我々が知りたいのは、実験もでき、検証も可能な、科学的な姿である。

 現在、宇宙線から発生するミューオンという素粒子を使って、火山を透視する研究が行われているらしい。しかし宇宙線の来る方向は上方からなので、地底深部の姿までは見ることができない。そこで、地底の姿を知る手段として今の段階で最も有望そうなのは、地電流だと思う。

 上田誠也氏の「地震予知はできる」(岩波書店 2001年6月)には、次のように書かれた箇所がある。

[SES(地震電気シグナル)が100キロメートルも伝わるという初期の結果が発表されたときに、そんなことは不可能だという批判がおきた。100キロメートルも伝播するのに要する電流のエネルギーは膨大なもので、話にならないというものだった。これは常識的には受け入れやすい議論だったが、実は不当なものだった。なぜなら、この議論では電源(つまり震源)を発した電流が四方八方に伝わるとしていたからである。現実には、SESはごく限られたツボ地点にしか到達していない。だからエネルギーはそんなに要らないわけである。]

 地面の中は本来電波が通りにくいところだ、という大槻義彦氏の指摘も考慮すると、地電流というのは内部の地質条件などにより、また上田氏の上掲の説明により、かなり選択的な通り方をする可能性がある。逆に言えば、地中を流れる地電流を計測すれば地中の状態が分かるかも知れないし、地震の巣が見つかったりするかもしれない。

 例えば、できるだけ多くの計測器を日本中の地中に設置し、雷を地中に誘導するようにすれば、落雷地点から各計測地までの経路や時間などが分かり、地中の様子が具体的に描けるようになるかもしれない。

 もちろん、強力な電流の流し込みにより、日本の地下の姿を透視しようというこの試みは、素人の空想の産物に過ぎない。そのようなことが実際問題として可能であるかすら、私には分からない。しかしもしも可能であるとしたら、地震計以外にも、地震とは何か、に迫る強力な道具を得ることになる。

 もしかすると地震学の中に、「地電流地震学」とでも呼ばれるような、新たな学問分野が生まれることになるかもしれない。その時、キルギスの実験やVAN法は、そしてそれらの研究者らは、新たな学問へのパイオニアとみなされることになるであろう。

2013年4月22日 (月)

地震は雷のようなもの その11

  地震予知判定局の創設を

 そもそも上空の電磁気的な変異を本当に予知に使えるのだろうか? 録画しておいた「地震予知/上空に現れた謎の異変」(NHK「サイエンスZERO」)という番組を繰り返し見ているうちに疑問がわいてきた。そのきっかけは、服部克己教授が示した電離層異変の度合のグラフである。確かに3/11の3日前に電子数は異常に高まっていたが、服部氏の示すグラフではそれ以前の高まりの方がもっと際立っていた。それらは、太陽フレア(太陽表面の爆発現象)が原因の太陽風によるものだそうだ。

 2/5、2/15、3/1の後に3/8の高まりが来るのだが、後になればこれは太陽風によるもの、これは地震によるものと簡単に仕分けがつく。しかし刻一刻とデータを得ている時点で、観測者がそれをできるようには思えない。前回、衛星の軌道データを得られるのが3日後であるため、異常の検出はどうしても後追いになる、という服部氏自身の言葉を引用したが、太陽風の影響などを排除するためにもかなりの日数がかかるに違いない。

 となると、これもロバート・ゲラー氏が言う「後知」の一種であるに過ぎない。彼は「日本人は知らない『地震予知』の正体」という著書(双葉社 2011年8月)の中で、以下のように語っている。

[30年間に790件も前兆現象をキャッチしながら、予知に成功した例は言うまでもなく皆無なのである。なぜならこれらの現象は、すべて地震が起きたあとになって、「あれは前兆だった」とわかったものだからだ。これはもはや「地震予知」というよりも、単に「地震後知」と言ったほうが正しい。]

 また、3/9にはM7.3の前震が起きているが、これに対する前兆はあいまいである。 M7.3というのは本震がなかったとすれば、それ自体でも立派な大規模地震であり、前兆がないはずはない。もしかすると、太陽風による異変と重なってしまったのかもしれない。地震による電離層への影響が、太陽からの影響より小さいものであるとした場合、大地震の前兆を見逃す危険性も大きくなる。

 「地震後知」ならば、研究者は危険を冒さないで済む。しかし社会が求めているものは「地震予知」である。私は、予知情報を有料配信するという早川正士氏の勇気はたいしたものだと思う。有料であるからには責任も伴う。はずれることを学問の未熟さのせいにすることもできない。地震予知の進歩のためには、このような動きが更に進んでほしいものである。

 そこで提案である。「地震予知判定局」とでもいうような公的な機関を設け、ファックスなりイーメールなりで、予知情報を一元的に集めるようにしてはどうだろうか? ただし、そこにレポートできるのは、予め登録してある団体や個人とし、やがては、正当率ともども発表できるようにする。正当率を計算するためにはいくつかの基準を並列的に設け、Aの基準では何%、Bの基準では何%とすることが必要であるかもしれない。前掲の「地震は予知できるか」(別冊宝島)には、個人のブログで予測していたという記事も多い。ブログの場合には後で改変することも可能なわけで、信用できない面もある。そのような者でも公的な機関を事前に通すことによって、お墨付きが得られることになる。

 この提案において私が念頭においているのは、ギリシャのVAN法である。彼らが成功しているのは日本よりノイズが少ないから、だけではないだろう。ギリシャには予知通報を事前に受け付ける公的機関が整っているらしい。そのシステムの存在こそが、日本との大きな違いであるに違いない、と私は考えている。

2013年4月14日 (日)

地震は雷のようなもの その10

  地底の電波は地上に出られるのか?

 このようにして、地中の電磁波が上空の状態に影響を及ぼすこと自体は疑いようのない事実ではあるのだが、どうしてそれが可能なのか?と考えるとき、以下のような疑問が生じる。

 大槻義彦氏の「物理・こんなことがまだわからない」(講談社ブルーバックス 1998)には以下のような記述がある。この中にある健治君とは高校1年生で、旅先で知り合った物理学者から物理学の問題点を教えてもらう設定になっている。

[福井工業大学の芳野赳夫教授が、地震前後に阪神高速道路を走っていたトラックの運転手から聞き取り調査をしたところ、本震の少し前から、突然カーラジオがものすごい雑音のために聞こえなくなったという。ラジオを切らずにいたら、下から突き上げるものすごいショックで急ブレーキをかけた。気を取り直してラジオを聴くと雑音は消えていて、通常の放送が聞こえたという。

ところで健治君はラジオが好きなようだから、普通はトンネルの中とか地下街ではラジオが聞こえにくくなることは知っているね。携帯電話も使えなくなる。

これは電波が地下には届かないからなんだ。空中を伝わってきた電波の一部は地面で反射されるし、残りの電波は地面の熱となって吸収されてしまう。トンネルや地下街の中でもラジオが聞こえたり、携帯電話が使えるところがあるのは、わざわざアンテナを張ってサービスをしているからだよ。

しかし、電波が地面から地中に入ることができないなら、逆に、地中から地面に電波が伝わってくることもないはずじゃないか。地震は地下数キロメートルとか数十キロメートルという深さで起こるんだが、そのとき岩盤が割れて電波が放出されたとしても、その電波はすぐに吸収されてしまい、地表までは届かないはずだろう。

それがどうして、地震の時にラジオの雑音となるのか、どんな雑音電波が地表に放出されるんだろうね? これは専門家を悩ませている大きな問題の一つなんだよ。]

 この引用箇所のすぐ前には、地震前によく見られる動物の異常行動の話が出ている。以前も書いた(東北地方太平洋沖地震 その7)ように、動物が地震そのものを恐れるとは思えない。地震そのものが動物の生存を脅かすことはほとんどないからだ。人間にはわからない何かを感じ取るのだろう。音かもしれないし、臭いかもしれない。しかし一番可能性が高いのは電磁波であると思われる。地震前に地中では電磁波が発生して、その一部が地表にも漏れるのだろう。

 前掲の「地震は予知できるか」(別冊宝島 2011年8月)には、太田光明氏(麻布大学 獣医学部介在動物学教授)の次のような言葉もあり、興味深い。

[「長年の実験を通してわかったことは、実験のために飼育されている実験動物では反応しにくいということ、野生に近い状態で飼育されている動物のほうが反応しやすいのです。また、電磁波を再現することも難しいとわかりました」

機械による電磁波はどうしても規則的で、地震のときに発生する不規則な電磁波を再現できない。]

 動物が本当には何に感応しているのか、この方面の研究も是非続けて、異常行動を引き起こす原因になっているものは何か、科学的に解明してもらいたいものである。

2013年4月 8日 (月)

地震は雷のようなもの その9

  上空の変異の電磁気的調査法

 中央公論2011年4月号に掲載された上田誠也氏の論文「どうする! 日本の地震予知」(地震は雷のようなもの その1)には電磁気的な予知の研究者について言及した部分がある。例えば「高周波(FM電波)伝播に関わる現象は、八ヶ岳南麓天文台の串田嘉男氏が発見した純日本産のものである」とか、「実用化といえば、同じく電波伝搬に関わるが、電気通信大学の早川正士教授らの低周波領域での前兆研究もある」などとある。

 最近になって、早川正士氏の「最新・地震予知学」(祥伝社NON・BOOK)という本を読んでみた。出版そのものは1996年と古い本で、以前に買ってはあったのだが、今まで読む機会がなかった。さまざまな周波数帯の電磁波についての解説があり、それらの違いなどを理解するのは結構厄介である。彼はオメガ波という低周波に着目している。1995年の阪神淡路大震災時に、対馬から発信されていたその電波の波形に異常が見られたから、らしい。もう20年近くが経ち、かなりの成果を上げられたものと思う。実際にも、上田誠也氏の前述の本の中に「最近会社を立ち上げ、近く予知情報の有料配信をスタートするとのこと、その利益で乏しい研究費を補って研究を進めるという」との記述がある。かなりの自信があるらしい。

 しかし早川氏の本によれば、オメガ波が有効なのは陸上においてであり、直下型地震の予知だけが可能だ、とある。今回の東北地方太平洋沖地震のような海溝型の場合には予知できないはずである。有料の会員にそれでも不満はないのだろうか?

 昨年7月に放送された「地震予知/上空に現れた謎の異変」(NHK「サイエンスZERO」)という番組によれば、電離層における電子数は、昼多くなり夜少なくなるのが通常である。しかし東日本大震災直前の3月8日からは、夜間になっても電子が減ることはなく、多いままだったという。

 この番組のゲストは千葉大の服部克己教授であった。彼の解析により、直前3日前の3月8日から、何かしら、震源近くより上空へと立ち上るものがある、ということが明らかにされた。前回引用した鴨川仁氏の解説においては、電子の変化は震央を中心とした波として表れる、ということであった。鴨川氏の場合は地震後に水平の変化として表れるのに対し、服部氏の場合は地震の直前、垂直型として表れるわけである。

 「地震は予知できるか」(別冊宝島 2011年8月刊)の、服部氏に取材して書かれた記事の中に、以下のような記述がある。

[GPSはより精度が高そうだが、その計算には衛星の軌道データが必要だ。このデータの公表が3日後のため、どうしても異常の検出が後追いになる。また、現状の観測体制では震源場所と規模の特定も難しく、まだ役に立つ予知情報にはならないという。]

 このようにして本やテレビ番組などを見ていくと、GPS衛星を使って、電離層における電子数の変異を調べていくという方法は、確かに経済的でもあり、広範の調査が可能なわけで、将来の予知のためには非常に有望そうではあるのだが、まだいろいろな難問を抱えているらしくもある。

2013年4月 2日 (火)

地震は雷のようなもの その8

  地底の状態を知るのに上空を調べる

 上田誠也氏が「地震がわかる」(朝日新聞社AERA MOOK、2002年11月)に書いた記事「地電流・地磁気・電磁波の観測で地震は予測できる」の中に、雷と地震との関係を示す以下のような記述がある。

[阪神・淡路地震のときに観測された電磁気異常現象をまとめてみると……(電磁波異常ノイズが)……地震発生の一週間ほど前に鋭いピークを示していたのです。しかし、これには問題がないわけではありません。この日には雷活動もあったのです。雷は強力な電磁発生源ですから、地震前兆と見えたのは雷の電波だった可能性があります。

詳しく調べると、雷発生ピーク時と電磁波異常ノイズ発生ピーク時は一致していませんでしたが、両者の関連は否定できません。しかし、もっと面白いことに、地震前に電磁波異常ノイズが発生し、しかも雷も発生するという例は多いのです。地震・雷なんとやらといわれますが、地震発生直前には大気中の電場も変化し雷も発生しやすくなるという可能性すら考えられているのです。]

 前回もみたように、地殻底にも火山雷のような放電現象があるとすれば、それが上空における雷を誘発したりすることもあるだろう。逆に言えば、上空の状態を知ることにより、地殻底の電磁気的状態を探ることが可能であるかもしれない。このことは既に、上田誠也氏を初めとして、多くのグループが研究中のようである。

 このシリーズの「その3」でも触れた「地震予知への挑戦」という講演会においては、鴨川仁氏(東京学芸大学・教育学部・物理学科 助教)が電離圏の電子状態の変化と地震との関連を解説している。

[地震が起きて大気が揺さぶられ、8分位で高度200~300kmに0.1%ほどあるプラズマを揺さぶって、電子状態の変化がGPS電波の受信データに表れます。要するに波を見ているので、地震計と同じ原理で震央を計算できます。一番大きく揺れた場所は、地震計でも宇宙からの観測でも殆ど一致します。この技術は津波にも応用でき、スマトラ沖地震の時の津波も、きちんと見られました。GPS受信機はどこにでもありますから、貧しくて検潮計が置けない国や地域でも襲来がわかります。

以上の話は地震後の事で世界中で研究していますが、やはり地震の前が大事です。1970年代にロシアで「地震の前に電離圏が変だ」と言って研究が始まり、90年代になって統計的にも「やはり変化はある」という事になってきたのです。ただ電離圏が変化するなら地表にその原因となるものがあるだろうと考えて、ラドンなど色々調べていますが、未だに理由は分かりません。]

 もしもここに書かれている通り、震央も計算でき、津波にも使えるのだとしたら素晴らしいことである。地中に掘る穴は点でしかない。それに反して、上空で地震の発生を知ることができるようになれば、それは全世界的な広がりを持つ。日本の地震だけなら大きなものはそうめったに来るわけではない。しかし世界中の電離層を調べ、地震前に世界各地の地震を予告できるとしたら、トライアル・エラーを何度も繰り返すことができ、的中精度をどんどん上げていくことができる。

 それに、いちいち地中に穴を掘るよりは、空中の電波や電子を調べる方がはるかに経済的でもある。ただし、電離層における電子状態は、地震以外のさまざまな要因の影響を受け易いと思われる。地震だけの影響を抽出するのは、結構難しいかもしれない。電離層に変化を与える地表、もしくは地底の原因が分からないようでは、地震と電離層との関係を本当に理解したとは言えない。地中に穴を掘っての、地殻底の研究もおろそかにしないでもらいたいと願う。

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