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2012年7月

2012年7月29日 (日)

原発問題を考える その37

   水素は運搬可能なエネルギー 

 電気を作るのではなく、排熱からエネルギーを取り出し、それによって節電する、という考え方もある。524日放送のクローズアップ現代「眠れる熱エネルギーを活用せよ」では、地中熱、工場で今まで捨てられるだけでしかなかった排熱、都市の下水の熱などを利用する各方面の姿が紹介されていた。 

 その中に、非常に興味深い話が出ていた。熱は冷めてしまうため、保存したり運搬したりするのが困難だ。その壁に挑んでいるのが九州大学の石原達己教授である。彼は、工場の排熱を使って水から水素を作ろうとしている、というのである。その技術的な難しい話は別として、私が注目したのは次の言葉である。 

[水素は今後、普及が期待される燃料電池自動車などの燃料となり、保存や持ち運びも可能です。] 

 水素が保存や運搬を可能にするエネルギーだ、という点が新鮮に思えた。 

 たまたまその1週間後、菅直人前首相の公式サイトを覗いてみる気になった。ちょうどその日、彼に関する新聞記事をサンフランシスコの図書館で読んだからである。公式サイトにより、彼が自然エネルギー研究会の顧問をしていると知った。そしてその研究会の記事の中に、マグ水素についてのものがあった。水素をマグネシウムに吸蔵させれば、保存や持ち運びが簡便、安全でしかも安いというのだ。 

 今まで、水素を燃料とする自動車のニュースを見るたび、あれって危険ではないのだろうか? と思ってきた。プロパンなどと同様、気体は圧縮しなくてはならない。ボンベにつめた水素と衝突事故などの多い自動車との組み合わせは、爆発の危険性が大き過ぎる。その点、圧力をかけることなく、水素を収蔵するだけで済むならば、そうした危険性は回避できる。 

 まるで夢のような技術だが、圧縮ならば減らせる体積が、収蔵では減らせない。果たして実用化できるものか、そして工業化できるものか、まだまだこれから多くの実証実験が必要とされることだろう。 

 しかしいずれにしても、危険性の課題をクリアできさえしたら、水素以上に素晴らしいエネルギーはない。「水素はあらゆる化学燃焼の中で単位質量あたりの発熱量が最大(33キロワットアワー/キログラム)で、天然ガスの2.4倍、ガソリンの2.7倍もある」そうである。しかも燃焼しても水が出るだけなのだから、これ以上にクリーンな燃料は他にない。 

 そうか、次なるエネルギーは水素か。目からうろこの思いがした。そう思った後で、新しいアイデアが次々に生まれた。 

 「サイエンスZERO 冷温停止状態 浮かび上がる課題」(その31参照)において、「放射性セシウムが水と反応して水素を発生する」ということが問題になった。しかも海水が混じっているため、よけい大量の水素が発生したとある。ここにおいては爆発の危険をもたらす厄介者だが、逆転の発想をして、この方法で水素を得るような設備を造りさえしたら、工場の排熱やその他のエネルギーを使う必要性がない。 

 さらには、福島第一を水素爆発に導いた反応を再現すれば、使用済み核燃料からでも大量の水素が生産できるかもしれない。どうせこの先何年も管理し続けなければならない廃棄物を、そのような形で生かし、できた水素は火力発電で燃やすなり燃料電池車に使うなりしたら、一石三鳥にも四鳥にもなる。

 

2012年7月23日 (月)

原発問題を考える その36

  原発沖で自然エネルギー発電を 

 前にも触れたクローズアップ現代(その33)には、イギリスのエネルギー・気候変動委員会会長ティム・ヨウ氏の次のような言葉が出ている。 

[私たちは2020年までに自然エネルギーを全電力の15%にします。短期的には風力ですが、長期的には海洋発電でまかなおうと考えています。 

何故なら、信頼性が高く、原子力や化石燃料と同じ安定した電源として使えるからです。] 

 私も同感である。風力や太陽光発電は、短期的な“リリーフ・ピッチャー”であるに過ぎない。風力が一番早く実現可能であるだろう、というのが風力を推す理由である。その風力にして、いつ大規模発電が実現するかのめども立っていない。 

 やはり、この1年間、自然エネルギーといえば風力と太陽光発電ばかりが喧伝されてきたそのこと自体に問題があったのかもしれない。私は以前にも、水力発電を推奨し、企業が水力による自家発電を構築する姿を夢見た(その20、その21参照)。 

 今になってもう一度、中小水力発電の現状はどうなのか、調べ直してみた。そして、水利権などの規制、大型ダムと同等の煩雑さが要求される手続、などがそれらの普及を妨げていると知った。もしも世論によるバックアップがあれば、そうした規制や手続などの緩和が早められたはずである。風力、太陽熱に比べ、水力だけが置き去りにされた感のあるのが残念である。 

 もともと、大規模ダムが景観を破壊し、環境問題を引き起こしてきたということが、利権に結びついた不必要な公共事業への反発などともからみ、水力発電自体を敬遠させてきたのだろう。しかし環境に悪いということで言えば、原発以上に悪いものはないし、化石燃料にしてもCOや温暖化問題を引き起こす。水力発電による環境への負荷は、それらに比べたら最も軽度であると思われる。 

 化石燃料はまた、ほとんど輸入しなければならないものばかりである。世界の需要の伸びから見て、価格の上昇は避けられないどころか、手に入らない日が来ると覚悟していなくてはならない。円高が円安になっただけでも買いにくくなる。 

 その意味からも基幹電源を、輸入に頼らざるを得ない化石燃料や原子力から、国内で賄える水力、地熱、海洋発電などの自然エネルギーへと移行しておかなければならない。電源エネルギーを自給できるか否かは、国にとっての死活問題であり、主食の米の自給以上の戦略的な意味を持つ。 

 自然エネルギーへの移行は、電力会社の指導者や政治家らにこそ熱く語ってもらいたい主題である。例えば自動車会社なら、それぞれの会社同士でしのぎを削って新しい技術を開発し、ハイブリッド車や電気自動車を実現した。電力会社は、今までにどのような自然エネルギーの新技術を、自前で開発してきたであろうか? その意味からすると、新型の風力発電を地方の大学の自主的な開発に任せている現状は、納得がいかない。電力会社こそが、積極的に自然エネルギーの実験開発を手がけるべきなのである。 

 もしも彼らが本気で自然エネルギーへの移行を考えているならば、彼らには理想的な敷地がある。例えば福島第一沖合の洋上であり、海中である。そこは、悲しいことであるが、もはや漁業権の問題がない。また、原発近くの敷地に風力や太陽光発電を造る手もある。それ以外の原発において、それぞれの土地による事情は違うだろうが、敷地内もしくはその近くで、何らかの自然エネルギーによる大規模発電を作ることはできるはずである。何しろそこには、長いこと使われないままの送電線網があるのだ。

 

2012年7月17日 (火)

原発問題を考える その35

   「風レンズ風車」の問題点 

 「風レンズ風車」を調べている時に、「日本の風はヨーロッパなどに比べると風速が弱く、さらに風向も頻繁に変わるという特徴を持っています。つまり、日本の風は風力発電に適していないのです。日本国内で、発電用大型風車が海岸沿いなどの限られた地域にしかないのはこのためです」という言葉を見つけた。さっそくに世界地図を広げてみると、オランダが何故昔から風車で有名なのかも理解できた。 

 サンフランシスコ近郊に長いこと居住して、大陸の西海岸の気候に興味を持った。ユーラシア大陸の東に位置する日本では、いろいろな方向からの風が当たり前であるのに、カリフォルニアでは海から陸へ、西から東へと吹く風がほとんどなのである。また台風もない。10月から3月にかけてが雨季でその間に嵐はあるのだが、ジェット気流の蛇行が西から東に通過する期間だけである。 

 大陸の西岸にあるヨーロッパの国々も似たような気候であるに違いない。オランダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、アイルランド、スコットランド地方などは、風向もほぼ一定で、風車を設置するのにもともと適した土地なのだ。とはいえ、国民の側に自然エネルギーを求める強い意志がなかったとすれば、ヨーロッパといえども風車が普及することはなかったであろう。 

 日本では既に見てきたように(その14、その30)、原発への依存が自然エネルギーの開発を阻害し、本格的な実用化がすっかり遅れてしまった。原子力が夢のエネルギーどころか、遅かれ早かれ、使ってはいけないエネルギーになることは、核廃棄物の処分法がないということからして明らかである。ならば、自然エネルギーの開発を早く進め、早く実用化した国が勝つ、とも言える。もしも日本が目先の利益や電力不足の恐怖にこだわり、原発から自然エネルギーへの移行を遅らせるならば、中国や韓国に実用化の先を越されることになる。 

 自然エネルギーの中で一番早く実用化できそうなのは風力かもしれない。そして既に見てきたように、ヨーロッパなどとは違う環境に合わせた日本独自の効率の良い風車を開発する必要がある。「風レンズ風車」が大規模発電に一番適しているようにも思える。しかし問題なのは、開発のスピードである。大屋裕二教授がいつ研究を始めたのかは特定できなかったが、少なくとも4~5年はかかっているようである。そして201112月に博多湾での実証実験が始まり、1年間は続けるようである。このペースで開発が進んだとして、原発に代り得るような風力発電施設が完成するのには、まだまだ5~10年ぐらいかかるかもしれない。 

 しかもこの「風レンズ風車」は、覆いなどを付けている分、また高速で回転できるようにしている分、台風などの強風に弱い。強風時にはブレーキがかかるようになっているらしいが、それでは極端な言い方をすれば、台風時には停電してしまう。風量を制限するなりして、強風でもある程度の発電ができるような工夫が必要である。例えば、羽根の回転が高速になり過ぎた場合、風車そのものが風速に合わせて前傾するとかはどうだろうか? あるいは、強風に強い「マグナス風車」の原理を取り入れる、ということも考えられそうである。

  3.11の後もう1年以上が経ってしまった。風力発電がある、地熱発電がある、というだけでは、原発やむなしと考えている国民の心を変えることはできない。現物を目の前に見せなくてはならない。戦争中、多くの新しい技術が驚くべき速度で開発された。原発依存との戦時下にあって、通常とは違うスピードが、研究開発に求められている。

2012年7月 9日 (月)

原発問題を考える その34

   新型風車開発は地方の大学の方が盛ん 

 20122月に放送されたサイエンスZERO「海の風を集めろ!実用化目指す新型風車」によれば、「風レンズ風車」とよばれる新型風車は、風車の羽根の周りに覆いをつけることにより、発電量を3倍にすることができるという。まるで洗面器の底を抜いた形の覆いを取り付けるのだが、風はその底の方から入り、風車を回してから広口の方へ抜ける。さらに、広口のまわりに付けたツバが渦を作り、その渦によって生まれる低圧が風車の羽根を通る空気を吸い込むことで、風速を1.3倍にもするのだそうだ。

 この覆いを付けることによる副産物もあった。羽根の回転が生み出す騒音が押さえられ、鳥の衝突も防がれるようになった。 

 番組では、福岡・博多湾にコンクリート製の六角形の浮島を作って、その上に風車を設置しての大規模実験が紹介されていた。海の上にコンクリートと発泡スチロールでできた浮島を作る、という発想にも驚いた。漁礁にもなるらしい。「風レンズ」という新技術は、九州大学の大屋裕二教授らによって開発されたが、コンクリートの浮島は、同じ大学の経塚雄策教授らによって開発された。 

 ネットで「風レンズ風車」を調べると、家庭用に使える小型のものが売り出されている。既に一部分、実用化の段階に入っているわけだ。 

 「新型風車」で検索すると、ずいぶんいろいろな風車が出てくる。秋田に「マグナス風車」というのがある。風車の羽根が細いパイプ状になっている。更にそのパイプ状の羽根の周りには、床屋の看板のような、らせん状の筋が取り付けられている。野球のボールの縫い目の働きをするみたいである。パイプ状の羽根を床屋の看板と同じように自転させると、風を受けた風車全体がプロペラ型風車とまったく同じに回転する。野球のボールがカーブしたりするのと同じ理屈なのだそうだ。2004年には試作、実験も行われている。同じ大きさのプロペラと比べ4倍近く力が強いそうで、そのため回転数を少なくでき、騒音も少ない。鳥を巻き込むことが少ない、台風などの強風時にも壊れることがない、などの利点がある。 

 今年414日の産経ニュースによれば、福島大の島田邦雄教授は、カエデの種子をヒントにしたプロペラで、弱い風でも効率よく回る新型風車を開発した。プロペラの羽根を三味線のばちの形にして先端を湾曲させたものは、従来のものに比べ回転数が5倍以上になり、発電量も十数倍に上がった。 

 京都造形芸術大学の平瀬敏明助教授は、微風でも回転する風車の技術を開発した。模型を使った実験では、従来の5分の1の風速0.2メートル以下で回転を始めたという。200610月に発表されたこの風車は、よく見かけるプロペラ型ではなく、縦長の羽根を地面と垂直に並べた垂直軸方式である。 

 今年56日放送のNHKサキどりによれば、大分市にある日本文理大学の小幡章航空宇宙工学科教授は、トンボの翅の形を取り入れることにより、秒速0.1メートルでも回る風車を作ることができた。別のサイトによれば、トンボの翅は台風のような強風下では自動的に性能を落とす仕組みを持っているそうで、それを風車にも取り入れる研究をしているとある。 

 このように見ていくと、新型風車の分野では、地方の大学が非常に頑張っているようである。地球環境を良くしたいという思いは日本の隅々にまで広まり、何とか工夫したいと考えている人たちが多い、ということであるのかもしれない。原発依存を止めなければならない今こそ、そうして生まれたアイデアを結実させ、新しい大きな産業に育ててほしいものである。

 

2012年7月 3日 (火)

原発問題を考える その33

    日本は資源大国 

 「日本は資源小国だから資源を海外から輸入し、工業製品として製造し、輸出しなくてはならない」というような言い方が、長いことされてきた。しかし日本には、海洋という大きな財産がある。中国が尖閣諸島の領有を主張し、韓国が竹島を実効支配しているのは、島そのものに価値があるからではない。島がもたらす領海が重要なのである。ロシアが北方四島すべてを返還することなど、絶望的にありえない。彼らの歴史においては、アラスカをアメリカに売り渡したことが悔いとして残っているはずであり、一度得たものをおいそれと手放すはずがない。 

 尖閣諸島近くの海底に油田があるということが、領有権問題を中国が主張するようになった大きな理由である。海底というのは、レアメタルをはじめとする鉱物資源の宝庫でもあり、将来ますます領海の価値が増していくものと思われる。 

 しかし海洋は、海底資源によって価値があるだけではなく、海域があるということ自体が財産なのである。四囲をすべて国境で囲まれているヨーロッパの小国などからしたら、日本は何とも羨ましいことであろう。 

 5月10日に放映されたクローズアップ現代「海から電気を作り出せ」http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3195.html を見ていて、日本は資源大国なのだと思った。海は、さまざまな形による発電を可能にしてくれる。海上における風力発電、海蛇の形をした波の力による発電、干満の差を利用する潮流発電。ここには出てなかったが、黒潮の流れを利用する発電もある。 

 ところが日本では、そうしたせっかくの海洋資源を利用しようとはしていない。「川崎重工は、日本を離れイギリスで技術開発・実用化を進める決断をした」という有様である。ゲストの木下健氏(東京大学生産技術研究所教授)は次のように語っている。 

[5年前までは、国のプロジェクトがあったんですけれども、それ以降、すっかりやめてしまったということで、そのときから、日本のエネルギー政策というのが一点集中になって、原子力と、あと自然エネルギーでは太陽光ということで、風力のほうもあんまり進まなくなってしまいまして、それが大きい。
しかし自然エネルギーというのは、基本的に各所各所の一番適したものを、優しく集めていくということですので、そこが非常に大きな失敗点だったと思います。] 

 やっぱりそうか、という思いがする。「その14」で既に書いたように、日本の自然エネルギーの発展を阻害したのは原発なのである。いったん体制が出来上がってしまうと原発は儲かる。斑目春樹氏の言葉にあるように、一日1億円以上儲かる産業である。電力会社は、自然エネルギーのようなちまちまとした稼ぎ方を好まない。そんな七面倒くさい開発に手を染めるよりは、政治家やマスコミに金をばら撒いた方が簡単だ、と思うのだろう。 

 再稼動に向けての政治の動きを見ていると、財界や原子力ムラの意向が一番重視されるという原発を取り巻く環境は、今も全く変わってはいない。

 

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