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2012年4月 9日 (月)

地殻底のマグマ層 その34

   電流を地下に流し込む実験 

 一昨年10月に上田誠也氏にお会いしたときに、地電流の観測をどのように行なっているのかと尋ねてみた。圧力がかかっている状態の岩石の部分を探し出し、そこから出てくる電流を地下で直接に観測することが出来るならば、予知も不可能ではないはず、という思いがあるからだ。 

 「地上で観測しています」というのが、それに対する上田先生の答えだった。 

 「深い穴の底に観測機を下ろしたら、ノイズもないでしょうし……」 

 「金がかかるんですよ」 

 「他のチームが掘った穴なんかで、使ってないようなの、ないんですか?」 

 「彼らは、使わせてはくれませんよ」 

 なるほど、そういうものなのだ。研究の大変さが、おぼろげながら想像できるようになって来た。そういえば、火山のことをネットで調べていたとき、それぞれの火山で、関わっている大学が違っているような印象を持った。 

 前述の「学士会会報」の中に出ていたキルギスの話とは、次のようなものである。 

[その当時はソ連領だったキルギスの天山山脈で2・8キロアンペアもの電流を地下に流し込む実験をしたのです。日本では100アンペアも地中に流せば文句が出るでしょう。幸い、人跡まれの地でしたからできたのかもしれません。百十何回も実験を重ねたのでかなり信用できるのですが、翌々日くらいから地震が増え、数日のうちに収まる。そして流した電流のエネルギーよりも、地震のエネルギーのほうが100万倍も大きかった。ですから、電流が地震を起こしたのではなくて、電流が刺激して溜まったストレスが出るような仕掛けがあるらしいという結論になりました。] 

 腕時計の部品に水晶を使っているものがある。文字盤にクォーツと英語で書いてあるのがそれだろう。前述の圧電効果と反対に、電流を通すことにより、水晶を振動させる。「逆圧電効果」と呼ばれる。 

 キルギスの実験はまさに、この逆圧電効果を利用した実験である。実証実験が皆無ともいうべき地球物理学において、このような実験は、きわめて革新的であるといえる。それによって地震を引き起こせるとしたら、我々は、地震の正体に近付いていることになるのだ。 

 キルギス? はてな、どこかで聞いたことがある地名だ? そうだ、上田誠也先生からいただいたメール(日本で学者たちと議論 その9)の中にあった。「それでも今年度中には、なんとかアテネとキルギスに行こうと思います」。 

 プレート・テクトニクスの時にもそうだったが、何か新しいことが始まる時、上田氏は常にそこにいる。嗅覚が優れているというべきか、フロンティア魂があるというべきか、素晴らしいことである。

 

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