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2012年4月

2012年4月30日 (月)

原発問題を考える その24

   マスコミの力 

 ドイツZDFテレビ「フクシマの嘘」を見て最も印象深かったのは、菅直人前首相とのインタビューの部分である。福島第一原発は、35mの高さの土地をわざわざ10mの高さにまで削って建てたのだそうだ。そのことは以前にも読んで知っていたが、その理由が経済的な効率にあったと知って驚いた。低くした方が、冷却用の海水を汲み上げやすいからだそうだ。もしも元の土地のままであったとしたら、津波による電源喪失はまぬがれていた。 

 もっと驚いたのは、事故後の東電の対応である。 

2011315日、災害から4日経ってもまだ、東電と保安院は事故の危険を過小評価し続けていた。しかし東電は菅首相に内密で会い、職員を福島第一から撤退させてもいいか打診した。今撤退させなければ、全員死ぬことになる、というのだ。 

(菅前首相)それで私はまず東電の社長に来てもらい、撤退はぜったい認められない、と伝えた。誰もいなくなればメルトダウンが起き、そうすれば莫大な量の放射能が大気に出ることになってしまう。そうなってしまえば広大な土地が住めない状態になってしまいます。] 

 あの時は、私もニュースで事件の展開を注視していた。放射能を恐れてうろたえるだけで、何も進展していない感じであった。チェルノブイリの場合には旧ソ連領だったこともあり、事態の深刻さを隠した上で消防隊員や軍人らを突入させ、放射線被爆による死者がかなり出た。しかし人権意識の盛んな現在の日本で特攻隊を組むことはできないだろうから、果たして事態の収拾を図れるものだろうか、といぶかったりしていた。しかしまさか、東電幹部が撤退を考えていたとまでは知らなかった。世界中が事態の展開を固唾を呑んで見守っている中で、何もしないで逃げ出すつもりだったのか? 当時、菅首相が東電社長を怒鳴りつけたという記事を読んだ記憶があるが、これでは誰でも怒鳴りたくなる。 

 ネットの記事などを拾い読みすると、菅前首相に対する風当たりは今でも強いように思える。ドイツ人記者との今回のインタビューを、弁解ととる者も多いだろう。しかし、もしも彼についた「色」の一因が、原子力ムラからの仕掛けに乗ったマスコミによるものだとしたら、怖いことである。 

 それはあり得ないことではない。原子力発電が日本に導入される時、読売新聞社主でもあった正力松太郎氏が、CIAとの関わりを取りざたされていた(このシリーズのその5参照)ことなどを考えると、当時のアメリカは、日本人の国民性を熟知していたというべきかも知れない。肩書きや権威に弱く、大新聞社が流す情報や考え方を鵜呑みにしがちな日本人に対しては、先ずマスコミから押さえるべき、と彼らは考えたのだろう。 

 もちろんマスコミといっても1社や2社でできているわけではない。いろいろな情報も錯綜し、反論も出る。しかし、ひとたびマスコミの一角に取り上げられて話題になると、他の社も一斉に後追いするようになる。それも、いくぶん中傷ぎみに書かれた記事だと一層喜ばれる。 

 そして原子力ムラは勝った。原発に邪魔な行動をする首相を排除できただけではない。各世論調査によれば、原発再稼動への反対派はマイナーな存在であるに過ぎない。ドイツやイタリアとは大違いである。

 

2012年4月24日 (火)

原発問題を考える その23

  ドイツのテレビが明らかにした真相 

 3月20日、島村英紀氏から以下のようなメールが届いた。 

[ご無沙汰しております。
ドイツZDFテレビが「フクシマの嘘」という、日本の大メディアではとうてい作れないような番組を作って3月7日に放送しました。
昨日になって、その日本語字幕入りの動画と逐語訳がアップされたようです。
http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-546.html
私も後ろのほうに少し登場します。
 
もし、興味があれば、ご覧ください。] 

 さっそくに動画を見てみる。ヨハネス・ハーノというドイツ人記者は、東電の記者会見場にも顔を出していることからして、東京常住の特派員なのだろうと推測していたが、普段は北京に常住する東アジア総局長であると他の動画で知れた。作業員のいでたちで福島第一原発の立ち入り禁止区域に潜入したり、さまざまな重要人物とインタビューしたりして、ドイツでの放映用にまとめている。 

 彼がインタビューした人物には、菅直人前首相、佐藤栄佐久福島県前知事、いま最もホットな地震学者島村英紀氏などの他、サンフランシスコに住む元GE社員、東電社員などが含まれる。そしてそれらの会話は、書き起こしもされている。ただ、コメントでも指摘されている通り、ドイツ語からの翻訳には漢字の間違いもいくつかある。当然ながら、翻訳そのものにも間違いがあるに違いない。インタビュー時に通訳が間違えているかもしれないし、記者がドイツ語にするときに間違えたかもしれない。つまり、インタビューを受けた人の真意を正確に表わしているかどうかはわからないのだが、その恐れを考慮した上でも、この記者のインタビューと彼のもたらしたメッセージには価値がある。

  東電、政府、官僚、大学教授などによって構成される原子力ムラと呼ばれる権力構造がある。東電に流れ込んでいる莫大な利益がその権力構造を支えている。原発を推進する者には多額の献金がもたらされ、批判したり不利な情報をリークしようとする者には制裁が与えられる。 

 原子力ムラの影響力は、時の県知事や首相にまで及ぶ。本来は原発政策担当の記者が、知事に不正土地取得の疑惑があるという記事を書く。裁判で無罪になったとはいうものの、その前に既に、現実的な被害は弟や県の職員たちにまでもたらされ、県知事を辞職せざるを得ない状況に追い込まれていた。 

 菅前首相が辞任に追い込まれた表面の動きは、ニュースとして我々も知っている。マスコミで菅おろしの嵐が吹き荒れた。その裏の事情は、今回初めて知った。あれもまた、作られたシナリオ通りの辞任劇だったのかもしれない。 

 確かに菅氏はあの震災前、原発反対というほどでもなかった。ベトナムへの原発売込みに積極的であった(このシリーズの、その12参照)ことからして、むしろ賛成派であったかもしれない。マスコミの指摘通り、震災発生時の対応がばたばたしていて、ヘリコプターによる視察などという行動が、むしろ現場の作業の妨げになった可能性もある。 

 しかしあの時期の彼の、事態収拾への真剣さは感じられたし、何よりも、彼には浜岡原発の運転停止要請という功績がある。他の人が首相であったらできないことであった。いやあれがあったからこそ、原子力ムラの圧力が一層強まったのかもしれない。

2012年4月18日 (水)

地殻底のマグマ層 その35

  地中におけるさまざまな実験 

 「地殻底のマグマ層」というタイトルで書き出して、ずいぶん長くなってしまった。しかしここに来てやっと、この主題も一段落である。今まで30数回にわたって書いてきたことを、ここでまとめ直してみたい。 

 地殻底を今でも動き回るマグマ層があり、それが地震や火山の原因になっているというのが、ヤスーン仮説体系から導き出される重要な仮定である。これは現在の地震観測により否定される。数百キロの深さの、マントルで発生するとされる深発地震を説明することも出来ない。また、もしも地殻底にそのようなマグマ層があるとしたら、精巧になった地震観測技術により、とっくに発見されているはずだ、というのが私への反論である。 

 私の反論は、次のようなものである。コラ半島における掘削(その10)が示すように、地中の姿は、地震学の予測通りではない。深発地震にしても、圧縮されたマグマ層を通る場合は、屈折して深くあるように見えるのかもしれない。したがって、実際に地殻底まで掘り抜いてみるまでは、あるいはさまざまな実験によって反証されるまでは、まだ決着がついたわけではない。ともかくも、反証性があるということが、仮説としては、科学的に健全なのである。 

 とはいえ、私のような者の抱いた仮説を反証しよう、としてくれる科学者がいるとは思えない。私はただ、彼らが彼らの研究のために行う実験の中から、私に有利な証拠がやがて生み出されるに違いない、と確信しているだけである。 

 そうした実験の一つは、人造地震実験である。もっと正確に言うと、「人為的誘発地震」である。本当に、デンバーでのような人造地震を、積極的に作り出すことができるならば、地震がなぜ起こるのか、地震の正体の一端に迫れる。 

 そしてもしも、地震を起こす原因が、水や液体ではなく圧力だ、と確定できたならば、例えば、地下に岩石の圧力を測る機械を設置することによって、地震の予知が可能になるかもしれない。 

 深部探査船「ちきゅう」による掘削も、期待のもてる実験である。その船の重要な目的は、地殻底のモホ面を突き抜き、マントルに達することである。その過程において、私が仮定しているマグマ層の実在が証明される可能性もある。 

 活火山の地下に、マグマ溜まりのあることは確実である。今までは、火山に関する本などに、大まかな絵が添えられているだけだったが、最近になって、人工地震探査などにより、おぼろげながらその姿が明らかになってきた。もしもその解像度が上がり、マグマ溜まりの正確な形が分かるようになるならば、その同じ技術を使って、火山以外のもっと多くの場所に、マグマ溜まりを発見できるようになるかもしれない。 

 現在では、地表で人工地震を起こし、その反射波を調べているようである。やがて、地下で人工地震を起こし、直接にマグマ溜まりを通過する地震波を調べられる日が来るかもしれない。そうなった時、現在の地震学の持っている知識とは、違う結果が出る可能性もある。

 

2012年4月 9日 (月)

地殻底のマグマ層 その34

   電流を地下に流し込む実験 

 一昨年10月に上田誠也氏にお会いしたときに、地電流の観測をどのように行なっているのかと尋ねてみた。圧力がかかっている状態の岩石の部分を探し出し、そこから出てくる電流を地下で直接に観測することが出来るならば、予知も不可能ではないはず、という思いがあるからだ。 

 「地上で観測しています」というのが、それに対する上田先生の答えだった。 

 「深い穴の底に観測機を下ろしたら、ノイズもないでしょうし……」 

 「金がかかるんですよ」 

 「他のチームが掘った穴なんかで、使ってないようなの、ないんですか?」 

 「彼らは、使わせてはくれませんよ」 

 なるほど、そういうものなのだ。研究の大変さが、おぼろげながら想像できるようになって来た。そういえば、火山のことをネットで調べていたとき、それぞれの火山で、関わっている大学が違っているような印象を持った。 

 前述の「学士会会報」の中に出ていたキルギスの話とは、次のようなものである。 

[その当時はソ連領だったキルギスの天山山脈で2・8キロアンペアもの電流を地下に流し込む実験をしたのです。日本では100アンペアも地中に流せば文句が出るでしょう。幸い、人跡まれの地でしたからできたのかもしれません。百十何回も実験を重ねたのでかなり信用できるのですが、翌々日くらいから地震が増え、数日のうちに収まる。そして流した電流のエネルギーよりも、地震のエネルギーのほうが100万倍も大きかった。ですから、電流が地震を起こしたのではなくて、電流が刺激して溜まったストレスが出るような仕掛けがあるらしいという結論になりました。] 

 腕時計の部品に水晶を使っているものがある。文字盤にクォーツと英語で書いてあるのがそれだろう。前述の圧電効果と反対に、電流を通すことにより、水晶を振動させる。「逆圧電効果」と呼ばれる。 

 キルギスの実験はまさに、この逆圧電効果を利用した実験である。実証実験が皆無ともいうべき地球物理学において、このような実験は、きわめて革新的であるといえる。それによって地震を引き起こせるとしたら、我々は、地震の正体に近付いていることになるのだ。 

 キルギス? はてな、どこかで聞いたことがある地名だ? そうだ、上田誠也先生からいただいたメール(日本で学者たちと議論 その9)の中にあった。「それでも今年度中には、なんとかアテネとキルギスに行こうと思います」。 

 プレート・テクトニクスの時にもそうだったが、何か新しいことが始まる時、上田氏は常にそこにいる。嗅覚が優れているというべきか、フロンティア魂があるというべきか、素晴らしいことである。

 

2012年4月 2日 (月)

地殻底のマグマ層 その33

  地震、雷、地電流 

 ジョン・ミルンの「地震学」(1898年)を読むと、地震の原因は電流だ、とする説の方が当時は優勢だったようだ。また、地震の前に地電流(earth current)が観測された数多くの例がある、という記述もある。さらに、発光現象や雷光についても触れている。 

 前にも書いた(その28)ように、その後現れた地震断層説により、ミルンの時代の説は傍系に追いやられたのかもしれない。これも前に書いた(その15、16、17)ことだが、地震断層説というのは、未だに証明されたわけではない、と私は考えている。もしも地震と地電流との関係が、その後も継続して研究されていたとしたら、VAN 法のような予知法が、日本で最初に開発された可能性もある。 

 上田誠也氏の「地震予知はできる」には、電磁気現象だの、電波観測だのについての記述もある。さらに、雷との関係も書いてある。 

[雷に関しては興味深い事情がある。京都大学の尾池和夫らがつとにその可能性を指摘しているのだが、地震と雷には関連性があるというのである。地震直前に電離層まで影響する何事かがおこれば、もっと低い大気圏での放電、すなわち雷活動が誘発されることも、あながち否定は出来ないだろう。気象条件はそうでもないのに、青天の霹靂(へきれき)のように雷が地震に先行するという可能性である。また地震前の電離層異常のために遠地の雷電波が受信されやすくなるという考えもある。一方、落雷が地震を誘発するという可能性も指摘されている。一見、関連しそうもない現象が実は相互に結びついているとしたら、その解明は科学研究の醍醐味となるかもしれない。いよいよ、地震・雷なんとやらである。 

 地震と雷、面白そうな分野であることは認めるが、飛躍し過ぎているようにも思える。雷が起きたときに必ず地震が起こるならばいざ知らず、それも宏観現象の一つに過ぎない、と思った。例えば地震の前に動物の異常行動などが観察されたりする。しかし動物は、地震以外のときでも異常行動をするかもしれない。こういう異常行動の時だけ必ず地震が起こる、という決まった形が抽出され、その理由までもがはっきりと特定されない限りは、地震予知としては使えない。 

 雷の場合にも、積乱雲などによる一般的な雷との違いをはっきりと示すのは、至難の業であるに違いない。ところが地震のような重要な災害において、予知の失敗は許されない。下手をすると、予知の成功によって得られる以上の、社会的な損害がもたらされるかもしれないのである。 

 しかし、この地震と雷との関連性は、私の頭の中で、次第に大きなものになっていった。私も上田氏と同様、「地震・雷なんとやら」と、最初は笑って済ませていたのだが、考えているうちに、雷のような現象が、地殻底において実際に起こっているのかもしれない、とイメージするようになっていった。それについては、先にいってから詳しく話す。 

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