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2012年2月11日 (土)

地殻底のマグマ層 その23

  深部低周波微動という妖怪  

 DVDに録画しておいた番組を探しているうちに、偶然にも、NHKのサイエンスZERO を録画したのが見つかった。「地震の脅威に迫れ」という番組で、当地では2010年9月4日に放映された。見たはずなのに、内容を憶えてはいない。ところが、こうして地殻底のマグマについて書いている今になると、探し物をした偶然を喜ばずにはいられない。

 Hi-netという高感度地震観測網により、深部低周波微動 という現象が発見された。発見者は2010年度まで防災科学技術研究所でその観測網の管理をしていた小原一成氏(現在東大地震研究所教授)、2000年5月のことである。

 それは通常の地震の波形とは違い、P 波もS 波もなく、火山性微動に近いものであった。発生箇所は、四国、紀伊半島、東海地方と、ほぼ南海、東南海、東海の震源域に平行している。微動の深さは約30キロ、地殻底のモホ面であるということが、私からすれば注目に値する。そして、豊後水道から四国中央部、紀伊半島から東海地方へ、微動の発生源が東方へと移動することはさらに重要である。その移動速度は、一日あたり5~10キロといわれる。

 ZEROに出演した小原一成氏の、微動発生に対する解説は、私には納得がいかなかった。プレート・テクトニクス説にこだわり過ぎている。プレートの沈み込みがアスペリティのあるあたりで地震を発生する。そのプレートがさらに沈み込んだ先に、深部低周波微動の発生域がある。そのあたりの岩盤に細かな亀裂を入れることで、微動が発生するのだろう、と解釈している。

 しかし、もしも細かな亀裂が入るならば、その一回一回において、微弱な地震が起こりそうなものである。深部低周波微動はむしろ、流体の存在を示唆する。火山性微動の波形と似ていることからしても、それはずばり、マグマである。マグマが豊後水道から東海地方へと、地殻底を移動しているのだ。プレートの沈み込み帯に平行してのその移動を、プレート・テクトニクス説は、どのように説明するであろうか?

 この深部低周波微動の移動は、島村英紀氏の「地底をゆっくりと歩くカタツムリ妖怪」を思わせるのだが、ただ速度がずいぶんと違う。あの場合の速度は年20キロ、深部低周波微動の移動速度は日に5~10キロである。桁が違う。

 雲仙普賢岳の噴火時には、橘湾の群発地震から最初の小噴火にいたるまで、約1年かかっている。そのことからすると、明らかに知られているマグマの移動速度自体は、年20キロの方に近い。それらに比べると、深部低周波微動の移動速度は速過ぎる。あるいは、既存の通り道があるために後者の方が速く移動できる、ということかもしれない。

 いずれにしても、プレート・テクトニクス説だけにこだわり、新たな修正の説を付け加えるのではなく、地殻底にマグマ層があるという仮定をも考慮してみてほしい。その仮定からは、深部低周波微動のように新たに発見された現象も、地震も火山も、全てが統一的に解釈される。天動説と地動説の場合におけるように、より少ない仮定に基づくものの方が、より真理に近い。

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