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2012年2月

2012年2月26日 (日)

地殻底のマグマ層 その26

  噴火はどのように起こるのか?

 対流の沈み込み地帯で、エネルギーを失ったから沈み込むはずのプレートが、なぜ大地震や火山噴火を起こせるのか? 鍋の中の湯で明らかなように、対流ならば、沸き立つ部分でこそ大きな活動があるはずである。ところが、湧き出し口の中央海嶺で地震や火山はあるものの、その規模は、沈み込み地帯でのものに比べてはるかに小さい。火山や地震帯を、対流に関連させること自体、エネルギー収支という観点からは無理なのだ。

 しかしその根源的な問題を、ここでそれ以上にはしない。今は、火山噴火について話したい。地球科学の本を開けば、沈み込むプレートがマントル深部に達したときマグマが発生し、それが熱気球のように浮上するイラストが出ていたりする。マグマって、本当にそんなに軽いものなのだろうか? もしも軽いものならば、水平移動する地底の妖怪は、何故途中で浮上しないのか? 誰かが、巧妙な実験か観測方法を考案し、絵だけではない納得のいく手段で説明してくれるならば、と願う。

 火山の下の、マグマ溜まりから上ならば、今の技術でも観測可能であるようだ。「地震と火山の100不思議」(神沼克伊他著、東京書籍、2004年)には、「人工地震で見る火山の構造」の項があり、次のような記述がある。

[(人工地震の)探査は国が推進する火山噴火予知計画の研究事業に取り上げられ、1994年以来、毎年1火山を対象に全国の大学や研究機関が協力して、実施されています。目的は、火山体の地下構造を明らかにすることにありますが、特にマグマ溜まりの検出が期待されています。]

[雲仙普賢岳の探査では、普賢岳山頂西側の深さ2km程に周囲よりも低速度な領域の存在する可能性が指摘されました。固結していないマグマで満たされたマグマ溜まりの地震波速度は遅いので、この低速度領域の存在が確実であるならば、マグマ溜まりを検出したことになります。]

 このような探査は、どんどん進めてほしいものである。もしもこの探査法が改良され、噴火の差し迫っている火山体には緊急探査を実施できるような体制が整っていたならば、あの新燃岳は、一昨年の小噴火の段階から探査を開始し、昨年の大噴火を正確に予知できたかもしれないのである。

 2011年1月末の段階で、新燃岳の西北西の地下6キロの地点にマグマ溜まりがあると、国土地理院により推定されている。これは主に、GPS連続観測に基づき、地殻変動、山体膨張などを計算した結果である。もしも人工地震探査も併用するならば、あるいは、マグマ溜りから別のマグマ溜まりへのマグマの移動を、リアルタイムに知ることが出来るかもしれない。

 もしも人工地震探査は莫大な費用がかかり、多用することが出来ない、ということであれば、何か別の方法を開発する必要があるかもしれない。かって脳内の活動は、ブラックボックスといわれて、直接に調べることは不可能だと考えられていた。今では、微弱な電流や他の方法が開発され、脳のどこが現在活動しているのか、観察することが可能になった。

 同様にして、あるいは赤外線を使い、あるいは電流を使い、火山の地下を透視できる日が来るかもしれない。そうなれば、たとえば新燃岳の噴火はいつごろまで続くか、いつ完全に終息するのか、正確な予測も可能になる。

2012年2月21日 (火)

地殻底のマグマ層 その25

  火山を人工的に噴火させる

 ブログ用の文章のこのあたりを書いているのは昨年の1月末である。書くのが極度に遅い私は、あらかじめワードに下書きを書き溜めるようにしている。ちょうど深部低周波微動のことを偶然に知り、火山性微動との違いは何か、などと調べたり書いたりしていた頃、テレビのニュースを見て驚いた。霧島連山の新燃岳が噴火した、というのである。何だかタイミングがよすぎる感じがする。

 タイミングのよさといえば、火山の山体からその基部に向かってパイプを通し、地熱発電を行えば、という話もそれに近い。もしかすると、火山のエネルギーを奪うことによって、噴火を防ぐ効果もあるかもしれない。もちろん、地熱発電によって失われるエネルギーなど微々たるものだから、噴火をなくす、などということはあり得ないだろうが、水の注入によって地震を起こせるならば、噴火に対してもいくぶんの効果はあるかもしれない。

 我が家に遊びに来たワイフの友人、春木陽子さんにそんな話をしたところ、似たような話を知っている、と言って、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」という本を後日貸してくれた。私の持っている文庫本の方にはない「グスコーブドリの伝記」という話が出ていた。

 農民の暮らしを一緒になって心配する宮沢賢治らしく、貧困で父母を失い、孤児になった主人公が成人してから、奇抜な手段で冷害をなくす、という物語である。火山局というのがあり、火山の研究により、人工的に噴火させることに成功する、というのである。今でこそ二酸化炭素による温暖化は厄介物だが、宮沢賢治は、冷害を防ぐ良いものと考えていた。それにしても、二酸化炭素が温暖化をもたらすと、その時代から知っていたとは驚きだ。

 その話は、もう一つのちょっとした偶然に繋がる。一昨年日本で何冊かの本をまとめて買ってきたが、島村英紀氏の「日本人が知りたい 地震の疑問66」は、そうした本のうちの1冊である。実際に読んだのはつい最近になってであり、宮沢賢治の本の後だった。その本の中に次のような箇所があった。

[地震も火山の噴火も、地下にだんだんエネルギーがたまっていって、いまにも起きそうになっているときには、ちょっとした刺激が引き金を引いてしまうことは、じゅうぶんにありえることなのです。地震が火山噴火の引き金を引いたり、あるいは噴火が地震の引き金を引くことがあっても不思議ではありません。

宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」にあるように、人工的に噴火を起こすことも、あるいは可能かもしれません。]

 これについて書いてある項は、地震と火山活動は関係あるか?という質問に対してであり、地震のあと火山が噴火したり、噴火のあと大地震があったりという例が数多くあげられている。プレート・テクトニクス説では、それらがどのように繋がっているか、謎でしかない。

2012年2月16日 (木)

地殻底のマグマ層 その24

  「人造地震」「地震実験」の提唱

 誘発地震については、「水の注入が引き起こす地震」から「誘発地震と地熱発電」にいたる項目で、既に扱った。しかしここでもう一度扱いたい。地殻底のマグマ層、予測と検証、などを語った後なので適当と考える。また、地球科学者は、検証不能な理論を立てるのではなく、現実から遊離していない実験をもっと工夫して、もっと頻繁に行うべきである、という思いもある。

 ところで、今までは「誘発地震」と書くようにしてきたが、これからは島村英紀氏に倣って、「人造地震」と書くことにする。人間が直接振動を起こして、地下の様子などを探ろうとするのが「人工地震」であり、何か別の手段によって地中に本物の地震を誘発する場合が「人造地震」である。

 しかしネットなどをみると、その言葉はまだ一般的ではない(グーグルで「人造地震」と入れると「人工地震」が出てくる)ようなので、「人為的誘発地震」と書くべきかもしれない。

 デンバーにおけるように、もしも水の注入が地震を誘発し得るとするならば、何故それを、更なる実験の手段として活用しないのだろうか? デンバー以外の場所でも、同じ手段を用いることによって地震を起こせるか否か? 起こせるとすれば、どのような場所でもよいのか? それとも鍼灸におけるつぼのようなものがあるのか? それは圧力が問題なのか、それとも水が問題なのか? 知りたいことは沢山ある。このような実験からは、地震を起こす地底の妖怪の、正体の一端が明らかになるはずである。

 問題は、本当に被害をもたらすほどに大きな地震が起こってしまうかもしれない、という点である。しかし、パークフィールドのように、辺鄙な田舎ならば問題ないだろう。北海道の原野ならば、どこか適当な場所があるかもしれない。本当は、北方四島の近くでやり、地震でいびり出せればいいのだが、下手をすると、外交問題になりかねない。

 島村英紀氏の「日本人が知りたい 地震の疑問66」(サイエンス・アイ新書、2008年)には、次のような記述がある。

[新潟県中越地震(2004年)のときには、震央から約20キロメートル、新潟県中越沖地震(2007年)のときにも反対側にやはり20キロメートルほどしか離れていないところに天然ガス田(南長岡ガス田)があり、地下4,500メートルのところに高圧の水を注入して岩を破砕(はさい)していました。南長岡ガス田は1984年に生産を開始していましたが、21世紀になってから「水圧破砕法」という手法を使い始めていたのでした。

この水圧破砕法坑とはガス田を「刺激」して生産量を上げるために、深い井戸を通じて油ガス層に高圧の水を圧入して、井戸の近くの岩にひびをたくさん入れて生産性を高めるために行われる方法です。これによってガスの生産を8倍にも増やすことに成功したといわれています。

それだけではありません。ここでは、地球温暖化で問題になっている二酸化炭素を液体にして、地下深部に圧入する実験も行われていました。

これは経済産業省の外郭団体である地球環境産業技術研究機構が2003年から2005年まで行っていたもので、地下約1,100メートルに二酸化炭素を圧入しました。120トンから40トン、合計で10,000トン以上という大量の二酸化炭素を地中に圧入する「実験」でした。]

 もしもそれらの液体注入と地震との因果関係が明らかにされたならば、それらの会社や外郭団体は、被災者に補償しなければならなくなる。また、将来知らずに起こしてしまう「人造地震」を作らないためにも、この問題は、もっと周知化されなくてはならない。いずれにしても、「人造地震」あるいは「地震実験」の問題は、今後ますます重要になっていくと思われる。

2012年2月11日 (土)

地殻底のマグマ層 その23

  深部低周波微動という妖怪  

 DVDに録画しておいた番組を探しているうちに、偶然にも、NHKのサイエンスZERO を録画したのが見つかった。「地震の脅威に迫れ」という番組で、当地では2010年9月4日に放映された。見たはずなのに、内容を憶えてはいない。ところが、こうして地殻底のマグマについて書いている今になると、探し物をした偶然を喜ばずにはいられない。

 Hi-netという高感度地震観測網により、深部低周波微動 という現象が発見された。発見者は2010年度まで防災科学技術研究所でその観測網の管理をしていた小原一成氏(現在東大地震研究所教授)、2000年5月のことである。

 それは通常の地震の波形とは違い、P 波もS 波もなく、火山性微動に近いものであった。発生箇所は、四国、紀伊半島、東海地方と、ほぼ南海、東南海、東海の震源域に平行している。微動の深さは約30キロ、地殻底のモホ面であるということが、私からすれば注目に値する。そして、豊後水道から四国中央部、紀伊半島から東海地方へ、微動の発生源が東方へと移動することはさらに重要である。その移動速度は、一日あたり5~10キロといわれる。

 ZEROに出演した小原一成氏の、微動発生に対する解説は、私には納得がいかなかった。プレート・テクトニクス説にこだわり過ぎている。プレートの沈み込みがアスペリティのあるあたりで地震を発生する。そのプレートがさらに沈み込んだ先に、深部低周波微動の発生域がある。そのあたりの岩盤に細かな亀裂を入れることで、微動が発生するのだろう、と解釈している。

 しかし、もしも細かな亀裂が入るならば、その一回一回において、微弱な地震が起こりそうなものである。深部低周波微動はむしろ、流体の存在を示唆する。火山性微動の波形と似ていることからしても、それはずばり、マグマである。マグマが豊後水道から東海地方へと、地殻底を移動しているのだ。プレートの沈み込み帯に平行してのその移動を、プレート・テクトニクス説は、どのように説明するであろうか?

 この深部低周波微動の移動は、島村英紀氏の「地底をゆっくりと歩くカタツムリ妖怪」を思わせるのだが、ただ速度がずいぶんと違う。あの場合の速度は年20キロ、深部低周波微動の移動速度は日に5~10キロである。桁が違う。

 雲仙普賢岳の噴火時には、橘湾の群発地震から最初の小噴火にいたるまで、約1年かかっている。そのことからすると、明らかに知られているマグマの移動速度自体は、年20キロの方に近い。それらに比べると、深部低周波微動の移動速度は速過ぎる。あるいは、既存の通り道があるために後者の方が速く移動できる、ということかもしれない。

 いずれにしても、プレート・テクトニクス説だけにこだわり、新たな修正の説を付け加えるのではなく、地殻底にマグマ層があるという仮定をも考慮してみてほしい。その仮定からは、深部低周波微動のように新たに発見された現象も、地震も火山も、全てが統一的に解釈される。天動説と地動説の場合におけるように、より少ない仮定に基づくものの方が、より真理に近い。

2012年2月 4日 (土)

地殻底のマグマ層 その22

  地殻底を掘り抜く計画

 地球の内部はゆで卵のように、地殻、マントル、外核、内核と分かれているといわれる。マントルや核の様子を直接検証することは絶対に出来ない。それにもかかわらず、地震波から得られた地球内部の姿を、検証できないからということで否定するつもりはない。むしろ積極的に賛成する。論理的な整合性を持っているからである。

 ところが、プレート・テクトニクスが描く地球内部の姿は、納得がいかない。一様に丸い地球の内部に、何故、ホットスポットのような特異点があり得るのか? 同じ熱の発散であるのに、マントル対流と違うのは何故か? 他の惑星にもない現象が、地球にだけあるのは何故か? 

 ホットスポットを説明するために、プレート・テクトニクス説の発展形として、プルーム説が考え出された。地震波から得られたわずかな違いをもとに地球内部の温度を推定し、巨大な上昇流の柱であるスーパー・プルームや下降流によってもたらされるスラブのようなものが存在すると説く。絶対に検証されることのあり得ない世界である。検証も反証も不能な世界の話が、本当に科学と言えるのかすら疑問だ。

 それに反して、地殻底、もしくはマントル最上部までが、我々人類があるいは到達できるかもしれない唯一の地球内深部である。とすれば、それ以深の永遠に答えの出ないテーマを追い求めるよりは、研究対象を、検証の可能な領域に限定すべきである。

 かってモホール計画という、マントルにまで穴を掘り抜く計画があった。マントルと地殻との境界は、発見者モホロビチッチの名前に因み、モホ面といわれる。そのモホを貫(つらぬ)く穴を掘り抜こう、ということから米国で生まれた計画である。海洋下のほうが地殻が薄いので、深海底を船の上から掘削する。1961年には試掘も行われたのだが、予想以上の難事業であることがわかり、わずか5年ほどで挫折した。

 モホール計画ほど大規模なものではないが、海洋底を掘削することによる研究は、それ以前にも以降にも、米国主導で続けられていた。ところが、1990年代になり、思わぬ展開を見せるようになる。日本で独自の掘削船を作ろう、という計画が持ち上がったのだ。

「地球の内部で何が起こっているのか?」(平朝彦他著、光文社新書、2005年)には、次のような言葉がある。

[平朝彦は、当時地球科学におけるリーダー的な存在であった東京大学地震研究所上田誠也とともに、(1990年、科学技術庁への)同報告書に新しい深海掘削の課題計画を提案した。]

 そういえば、1984年に上田先生の研究室を訪れた時、ひっきりなしにかかってくる電話で、会話が中断された。電話の内容は、海洋研究に関するものみたいだ、と思った記憶がある。やはり、あの時に脇で聞いていて思ったことは正しかったのかもしれない。その当時から上田先生は、海洋研究においてもリーダー的存在だったわけだ。

 2005年7月、地球深部探査船「ちきゅう」が完成した。新たなモホール計画である。ウェブで調べると、この下書きを書いていた2011年1月の頃は、紀伊半島沖で、南海地震の震源域を掘削中だったみたいである。本だと、過去のことしか知れないが、インターネットだと、現在まさに進行中のことが知れる。

 探査船「ちきゅう」により地殻底の情報が知られる日も、そう遠くはないのかもしれない。ただし、東日本大震災に巻き込まれ、その後長いこと研究は中断された。それについては、ネットで取りざたされている、いわゆる「地震兵器」についてを議論した後で触れるつもりである。

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