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2012年1月30日 (月)

地殻底のマグマ層 その21

  カール・セーガンの「定説を批判せよ」

 定説を疑う、ということに関して、カール・セーガンが非常に良い言葉を残している。原文はBroca’s Brain (日本語版「サイエンス・アドベンチャー」、新潮選書、1986)の7章にある。私なりの思い入れもあるので、以下に、あえて自分で訳してみる。

[科学は自ら軌道修正していくものである。最も根本的な原理や結論でさえも、挑戦の対象になりうる。世に普及している定説も、観測による検証を通して生き残らなければならない。そのために、権威に訴えることは許されない。論証の過程は全ての者に公開されなければならない。実験は再現可能でなくてはならない。]

[現在普及している優勢な定説に対し、理の通った批判を加えることは、そうした定説の支持者にとっても、有益な貢献になる。もしも彼らがその説を弁護し切れなかった場合、そんな説は捨ててしまいなさい、と忠告してあげた方がよい。自らに問いかけ、誤りを正していく、科学的方法のこうした側面は、科学の最も素晴らしい特性である。そしてその点において、信じ易さ、軽信に支配されている人間活動の他の多くの分野とは、はっきりと異なるものである。]   

[科学の本質は、知識の集積にあるのではなく、方法にある。]

 カール・セーガンを一躍有名にしたのは、「コスモス」というテレビのシリーズによる。ウィキで調べると、1980年とある。そうか、もうそんな昔だったのか。あるいは、私が見たのはその後に再放送された時だったかもしれない。1回が1時間、それが13週にわたって続く大部のシリーズである。半端ではない。

 同じ頃に本も出版され、私は買って読んだ。ヒアリングが苦手でテレビでは分からなかったところもよく理解でき、私は感動した。哲学がある、と思った。ノーベル賞を取ったとかの革新的な業績があるわけではないが、当時の科学ファンにとっては、プレスリ-やビートルズのようなスーパースターであったかもしれない。

 サンフランシスコ界隈には、私が知る限りでは4回講演に来た。1994年の講演会は、スタンフォード大学のある町パロアルトの、ホテルの講堂で行われた。講演の後、演台を立ち去ろうとするセーガン氏を呼び止め、「これを読まれたことありますか?」と、私のニュースレターのタイトルを指し示しながら尋ねた。

 それに対する答えは、「ええ、ときどき読んでいますよ。ありがとう」というものであった。その礼儀正しさに感動し、やはり頂点に立つ者は違うものだ、と思った。

 このように、人間的にも尊敬し、言葉や思想にも共鳴しているカール・セーガンではあるが、上に引用した言葉が現実の科学者の心に届く、とはとても考えられない。

 もしも批判精神が旺盛であり、疑うということが地球科学の世界における慣行であったなら、実験実証を伴わない説明するためだけの新説が、無数に生み出されるという現在の状況は、生まれ得なかったであろう。

 科学は宗教とは違うのだ。疑うことによって、論理的な整合性を求めることによって、科学の原点に立ち戻ってほしい、と願わずにはいられない。

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