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2012年1月20日 (金)

地殻底のマグマ層 その19

(このシリーズは、2010年秋にお会いした学者たちを紹介する目的で、それ以前に私がどのような本を読んでいたか、を書くつもりで始めた。調べ直しているうちにどんどん長くなり、一応30回分ほどの下書きを書き終えた。ところが昨年3月の地震で中断し、再開したものの、また原発についてを書くために中断した。今回再び再開する)

  地震予知が出来ても困る
 2009年12月に、サンフランシスコ一帯に地震が起こる、という噂が、その数ヶ月前から広まった。私が聞いたのはほぼ直前になってだったが、それを教えてくれた友人に、どう思うか、と聞かれた時、

 「そういう予測が当たってしまうと、かえってその後が困る」と答えている。

 インターネットで調べると、数多くの地震予知のサイトがある。あるものは電磁波であり、あるものは地震雲である。どのような計測をするのか分からないが、イオンというのもある。それら全てが間違っている、と言うつもりはない。中には、人類の歴史を変えるような素晴らしい方法があるかもしれない。

 しかし、動物の異常行動などを含め、すべての宏観異常現象観測による地震予知には、どこかいかがわしさが付きまとっている。そして、そういういかがわしさは、結論を急ぎ過ぎることから来ている、と私は考えている。科学にとって、結論よりも、その結論がいかに導き出されたかの過程が重要なのである。それは、インドの算数教育において、答えだけが合っていても正解とはみなされない。答えを出すまでの過程が重視される、と言われるのと似ている。

 既に述べたように、理論やモデルから予測を立て、それが的中することが重要ではある。しかし、的中することばかりが問題にされると、それは科学から離れ、ギリシャ神話や旧約聖書にあるような、予言の世界に近付いてしまう。

 地震予知というのは見えない世界を扱うだけに、どんなに科学が進歩しても、100%当たる予測を出すことは出来ない。天気予報ほどの確率で当てることすら難しいだろう。ところが、当たらなかった場合の影響は、天気予報とは比較にならないほど大きい。しかも、天気予報が当たらなかったからといって死者が出ることはめったにないのに反し、地震予知の場合、外れることによる被害は、桁違いに大きい。

 18年という中期予想ながら、関東大震災を言い当てた男がいる。東京帝国大学理科大学(現在の東京大学理学部)助教授の今村明恒である。彼は後に、東南海地震(M7.9)、南海地震(M8.0)をも予想して当たっている。

 彼はまた、津波の原因が海底下の地震である、と当時としては画期的な説を立てて当たっているし、関東大震災に対する災害の予測もほぼ正しいものであった。

 ところが彼の警告は、社会にそのまま受け入れられることはなく、「ほら吹き」とみなされて、累(るい)は父親やその他の家族にまで及んだ。いま彼の業績を読み直してみると、感動するほどに、社会のために役立つことを願い、ただ当てるというよりは、被害の軽減のために努力している。彼の真意を曲げたものは、大衆を煽るセンセーショナルなメディアであった。(今村に関しては、吉村昭著「関東大震災」に詳しい。金森博雄先生に何回かにわたって薦(すす)められ、2010年に日本で買ってきて読み、驚いた。これは、地震に関心をもつ者すべてが読む本である、と思う。島村英紀氏のサイトにも、今村のエピソードが出ている。)

 今はまだ、地震予知が当たることはめったになく、メディアや社会が本気で相手にしていないから、大きな問題にはなっていないのだ。もしも何回かに一回は当たる、ということになった場合、かえって、予測もつかないような悲惨な事態が、当事者や、予測された地方などに降りかかる可能性もある。

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