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2011年4月25日 (月)

東北地方太平洋沖地震 その7

  動物が地震を恐れるはずはない

 地震予知に関して、動物の異常行動を問題にしたりする。しかし、動物が地震を恐れる理由は、危険という観点からはない。彼らが野原や森の中にいるときに地震が来ても、命を脅かす状況はほとんどない。ナマズが水の中にいて、何が彼らの上に倒れてくるというのだろう? 彼らが恐れているのは、電磁波であるか、特殊な臭いであるか、人間には分からない何かであって、危険性ではない。

 以前イエローストーン公園に行ったとき、そこのレンジャーが、何度も繰り返し強調していた。「森の動物が山火事を恐れるのは、ディズニーが作り出した虚構であって、実際の動物たちは恐れません」。講堂のスクリーンに映された映像には、山火事を背景に悠然と草を食べているシカたちの姿があった。

 動物も山火事や地震を恐れるだろうと考えるのは、我々自身の恐れを投影しているに過ぎない。では、人間はなぜ地震や火事を極度に恐れるのか? それは、人間の作ったものが地震や火事にあったとき、我々の生命を危険にさらすからである。家をはじめとする建造物が倒壊して下敷きになる。それらが燃えて、逃げ場を失ったために焼死する。もしも建造物がまわりになかったとすれば、地震そのものは、雷や竜巻より怖い、というほどでもないだろう。

 建造物が複雑精妙になればなるほど、地震などの自然災害にあったときの被害も大きくなる。いかように建築基準法を厳しくし、免震構造の高層ビルを沢山建てたとしても、それで「絶対に安全」ということにはならない。必ずや「想定外」もあり、手抜き工事もあるだろう。

 そのことは、ロマプリータ地震のとき、日本からの地震学者が語った言葉に対して、私が実際に思ったことでもある。国道246の真上を走る首都高速3号線は、下から見上げると、ビルの4~5階あたりを通る雄大な建造物である。サンフランシスコやオークランドの高速道路が崩壊して大きなニュースになっていたので、東京のああいう高速道路は大丈夫なのだろうか?と尋ねてみた。「日本の高速道路は大丈夫ですよ。法律が厳しいから」というのが彼の答えだった。東京オリンピックのために無理をしていた時だから、そうは言っても信じられない。口には出さなかったけれど、私はそれでも納得がいかなかった。

 東京の高層ビル群は、関東大震災時とはまったくに違う環境を生み出した。再び似たような巨大地震が東京を襲ったとき、それらの建造物がどのように振舞うか、実際になってみなくては分からない面があるはずである。それらは、ニューヨークのテロのときにも見たように、案外もろいものであるかもしれない。

 だからといって、快適さ、便利さに慣れた近代文明は、原始の生活に戻ることはできない。電気やビルのない明治時代に戻ることすらできない。崩壊に繋がっているのだとしても、この道を進む以外はないのだ。

 我々にできることがあるとすれば、自然に対し、もっと謙虚になる、というだけかもしれない。巨大な堤防を築いても、それを乗り越える津波がある。「絶対安全」と言われ続けてきた原子力発電所も、自然災害の前に意外なもろさを見せた。

 人間の建造物に、「絶対安全」はあり得ない。そして、「安全神話」を疑う心があってこそ、次に、被害を軽減する方策が見つけられるかもしれない。 

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