« 地殻底のマグマ層 その3 | トップページ | 地殻底のマグマ層 その5 »

2011年3月 1日 (火)

地殻底のマグマ層 その4

  地熱発電を扱った小説「マグマ」

 誘発地震の話のついでに、ちょっと寄り道をする。

 現在このブログに連載中の、「清張氏の、守られた約束」の原稿を書いている間、サンノゼにある紀伊国屋書店で、清張氏関連の本を探した。そんなある日、清張氏の棚の前の平積み台に、「マグマ」(朝日文庫、2008年第1刷)という本を見つけ、手にとってみる気になった。たまたま「松本清張」と、その本の著者「真山仁」とが同じ「マ行」だったから、そこに置かれていたわけだ。

 しかもその本の解説には、

[地熱発電が小説の世界に登場した例は、松本清張氏の『速記録』に大規模深部地熱発電とこれにまつわる地熱エネルギー開発事業団設置の構想が取り上げられ、……]

 とある。清張氏との関連まであっては、読まないわけにはいかない。迷わずに買った。

 たまたま友人の紹介で、全国ボーリング技術協会会長であった木村彰宏氏と知り合った著者は、彼から地熱発電の話を聞き、非常に興味を持つ。石油や石炭などの化石燃料による発電には、二酸化炭素排出の問題がある。太陽熱や風力による発電には、季節や日によるムラがある。その代替エネルギーとして、火山国日本には、地熱発電がある。

 しかし、環境に優しいはずの地熱発電が普及するために、いくつかの障害がある。

 温泉地との問題がある。地熱発電は、地中から高熱の水蒸気を取り出してタービンを回すため、近接する温泉地の源泉湧出に影響を与える可能性がある。

 国立公園、国定公園との問題もある。そうした公園内に発電施設を建設することは、天然記念物の植物などを傷めるだけではなく、景観を損なうということで、まったくに許可されることはない。ところが地熱発電の適地は、そうした公園内にある場合が多い。

 中でも最大の問題は、原子力発電である。石油ショック以来日本は、中東の石油依存から脱却するために、他の化石燃料である石炭や天然ガス、そして原子力発電にシフトするようになってきた。原子力の場合、ウラン産出国が世界的に分散していて供給が安定していること、大容量の電力を恒常的に生産できることなどにより、現在では、基幹電源の一つとなっている。

 ところが原子力発電には、1979年の米国スリーマイル島原発事故、1986年旧ソ連チェルノブイリ原発事故のような、大惨事の危険性が常に付きまとっている。地震国日本では、新潟中越沖地震のときのように、自然災害に付随しての、不可抗力の原発事故も起こり得る。

 日本がそのように問題の多い原子力発電にシフトしたため、地熱発電の開発が遅れているのだ、と知った著者は、この問題を小説化することにした。

« 地殻底のマグマ層 その3 | トップページ | 地殻底のマグマ層 その5 »

マグマ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1397932/39068240

この記事へのトラックバック一覧です: 地殻底のマグマ層 その4:

« 地殻底のマグマ層 その3 | トップページ | 地殻底のマグマ層 その5 »