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2011年3月27日 (日)

地殻底のマグマ層 その10

  深い穴を掘ってみたら……

 5年3ヶ月続いた私のニュースレターには、かなり多くの科学者からも手紙があり、それに対する論争で、私と私の仮説は鍛えられた。なかでも激しくやり合ったのは、ローレンス・コーリンズという地質学の教授であった。最初に彼からの手紙を貰ったのは、彼がカリフォルニア州立大ノースリッジ校を退職して名誉教授となる半年ほど前のことである。そして偶然にも、その半年後には、阪神淡路大震災の姉妹地震とも言うべきノースリッジ地震が、その大学近くを震源として起こった。

 彼は、地殻底に私が仮定しているマグマ層について批判してきた。現在の地震波による観測からすれば、そのようなものが存在するはずはない、というのである。

 彼への反論には、“PHYSICAL GEOLOGY”(Charles Plummer & David McGeary, 5th ed., 1991) という本が役に立った。どうやら、学生に大量に買ってもらうために、教師に無料で提供された教科書のようである。コーリンズ氏が退職する時に、私に送ってくれた。結果的には、反撃のための武器を提供してくれたようなものである。

 それは、北極圏内のムルマンスク市近く、コラ半島で、旧ソビエト・ロシアが1970年から掘り始めた深い穴について、である。1994年7月号の私のニュースレターに、その教科書から引用した。同じ内容は、島村英紀氏の「地震は妖怪        騙された学者たち」(2000年)にもあり、そちらの方がより詳しくわかり易いので、そこから引用する。

[世界でいちばん深い穴は、いま約12・6キロメートル。いま、と言ったのは、この穴掘りは15キロを目指して、掘り始めてから、なんと25年間も掘り続けられているからである。……

この世界一の穴は、数多くの新発見をもたらした。

地表から探っていた研究方法で想像していた地下のありさまは、大ハズレ、であった。地球物理学者が地表のデータから綿密な計算をして推測していた地下の温度も、10キロの深さでセ氏100度だったはずが、200度もあった。

もっと違ったのは岩の種類だった。もともとこのコラ半島が穴掘りの場所に選ばれたのは、地球の歴史のなかではかなり古い大陸で、それゆえ日本のように複雑ではなくて安定した地殻の見本のようなところだからだった。その地下は教科書に載っているような典型的な大陸の地殻構造のはずだった。

つまり花崗岩質の層が玄武岩質の層の上に載っている構造である。世界のほかの大陸の地下も、ほぼ同じ二層構造だと思われている。コラ半島では、その二つの層の境は7キロメートルだと推測されていた。つまり深層ボーリングで掘り抜ける深さのはずだった。

その境とはどんなものか、なぜそこにそんな境があるのかは、よく分かってはいない。間もなく解明されるはずの謎解きに世界の期待が集まっていた。

ところが、掘っても掘っても、出てくるのは花崗岩質の岩ばかりなのであった。

科学者たちはキツネにつままれたようなものだった。教科書に書いてある「事実」はおろか、過去の研究の権威が問われるほどの事態になってしまったのである。]

 この引用を一つだけ補足しておく。ここには、「地表から探っていた研究方法で想像していた地下のありさま」とあり、その研究方法を明記してないが、私の上記の教科書には「この地帯の地震学的なモデルが間違いである」とある。つまり、地震学だと特定されている。

 ついでながら、そこには、「コラの穴は、現在掘られている11の穴のうちで最も深いものである」という記述もある。超深層の穴を、複数同時に掘っているとは、驚きである。凄い発想、というべきかも知れない。やはり、ロシアは大国だ。

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