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2011年3月 4日 (金)

地殻底のマグマ層 その5

  原子力発電の本当の怖さ

 投資ファンドを扱う外資系企業の話を書いた「ハゲタカ」は、NHKでもドラマ化(2007年)され、評判になった。連続6回にわたるそのドラマは、緊迫感のある展開で私も引き込まれた。松本清張氏の棚の前で、「マグマ」というタイトルの本を取り上げる気になったのは、そのタイトルもさることながら、著者の「真山仁」の名前を憶えていたからでもある。「ああ、あのドラマの原作者か」と思った。

 今これを書くためにネットで調べてみると、あのドラマは数々の賞も得、後に映画化(2009年)もされている。面白いことに、小説「ハゲタカ」(2004年)の方は、出版されてすぐに売れたわけではなく、NHKのドラマの後で急激に売れ出したみたいである。

 「マグマ」も、「ハゲタカ」と同系列の作品というべきかも知れない。外資系の投資ファンド会社に働く社員(この場合にはハゲタカと違い、女性を主人公にしている)が、地熱の開発会社に乗り込み、地熱発電を立ち上げるまでの物語である。別府、湯布院近くが舞台とされているが、伽藍岳、由布岳、鶴見岳などの、実在の山以外の地名を、私の手許の地図で見つけることは出来なかった。あるいは、発電所の所在地、そしてその近くのローカルな温泉地などは、フィクションなのかもしれない。

 地熱発電の原理は簡単である。温泉の源泉を探し当てるのと同様、地下にある高温の貯留層を掘削して探し当てる。地下にあって200度以上ある熱水は、地上に出てくると、減圧して気化する。その蒸気を使ってタービンを回し、使用後の水は、別の井戸から注入し、元の貯留層近くに戻す。そして、地下に戻された水は再び熱せられて地上に出てくる。つまり循環型のシステムである。

 小説に出てくるもう一つのシステムは、高温岩体発電と言われるものだ。地下にある熱水の貯留層を探し当てられないとしても、地下の深いところには、高温の岩盤がある。掘削してそこにパイプを通し、高圧の水を注入すると、岩盤である花崗岩に亀裂が入り、人工的な貯留層を形成する。それから後は、通常の循環型発電になる。小説ではその両方のシステムが併用される。

 さて、この小説においては、地熱に対比して、原子力発電は、排除されるべき悪として描かれている。原子力発電に関わった研究者、技術者が何人も、放射線を浴びたために死ぬ。原子力発電推進派の学者や電力会社の経営者が、激しく敵対する。

 この本のそうした記述に刺激され、原子力発電のことをインターネットで調べてみた。原子力発電の本当の怖さは、チェルノブイリなどの大惨事は別として、発電所内における放射線被曝とか、事故とかの、直接的な被害ではない。もっと目に見えにくい放射性廃棄物である、という気がしてきた。それらは、時々刻々と溜まっていき、後世へのツケとして残される。

 日本中で、何箇所もの核施設から出される放射性廃棄物は、今現在、どのように保管され、どのように処理されているのだろうか? いや日本だけではない。世界中に、日本の何十倍、何百倍もの核施設がある。それらが、何百年、何万年と毒性の消えない放射性物質を作り出し続けているのだ。

 例えば、デンバーで地下深部に埋め込まれるはずだった放射性廃棄物は、地震が起きたために地下に捨てられなくなった。しかしそうだとすると、廃棄物そのものは、地上のどこかに今もあるはずである。つまり、廃棄したいけれども廃棄できないまま、厄介物が増え続けていくその状態こそが、最大の恐怖なのかもしれない。

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