2018年2月19日 (月)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その7

  対流の湧き出し口はどこに?

 「その3」に書いたように、前回までの4つの質問の後、金森、上田両先生からの返信はパタッと止まってしまった。その後の質問とそれらへの返信は全て、JAMSTECの首席研究員田村芳彦氏との間で交わされたものである。それらの交信の必要と思われる部分を掲載するにあたって、その部分全体を【 】内に入れる。それらのうち、田村氏が引用された私の質問と文章は下線部で示す。また、田村氏による回答は、田村氏〔 〕という形で、現在の私が付け加えた注釈は{ }内に記す。

【早速のご返信{2016年2月19日の私からのメールに対し、ほぼ半日後にご返信を頂いた}ありがとうございます。その素早さとご返答の内容の素晴らしさに感銘を受けました。しかし私からの返信は、苦しみながら文章を書くタイプですので、いつも遅れがちです。どうかお許しください。

「海洋島孤」という概念があるのを初めて知り、ネットで調べてみました。巽好幸氏が言い始めたことでしょうか?海洋島孤は、フィリピン海プレート以外の世界各地にもある地質構造でしょうか?

田村氏〔海洋島弧という概念は誰が言い始めたかは浅学のため知りません。巽さんの以前からの概念です。また伊豆小笠原マリアナ弧のほかにはニュージーランドの北に続くトンガ−ケルマディック弧が有名です。またアラスカからロシアに続くアリューシャン弧も海洋島弧です。〕

⒌ 昨年2月に放映された「サイエンスZERO 西之島の噴火が大陸を生む!?」の中で、地殻が薄いから安山岩が生まれるということでしたが、三宅島や八丈島の海底地殻に比べれば薄くても、15キロというのは、一般的な深海底の地殻の5∼6キロに比べれば、むしろ厚い方なのではないでしょうか?

田村氏〔プレートの収束境界(沈み込み帯)では薄いという意味で、仰るとおり中央海嶺に比較すると厚いです。一方、中央海嶺の地下のマントルにはほとんど水が無いので玄武岩マグマしかできません。薄い地殻とプレートから絞り出される水の両方が安山岩マグマを生むためには必要です。〕

⒍ 軽い安山岩{ここは「安山岩のもととなる軽い構成物質」とすべきであった}がどのようにして高圧で比重の大きいマントル内に入れたのでしょうか? オイルベニガーならば、いくらシェイクしてもすぐに分離します。

田村氏〔これは逆で、マントルが溶けると安山岩マグマを生じることがある、という意味です。〕

⒎ 安山岩がマントルから湧き出るならば、中央海嶺やホットスポットからの方が相応しいように思われます。東太平洋海膨を初め、安山岩線の東側の太平洋に安山岩が全くないのは何故でしょうか?

田村氏〔5と同じ答えです。〕

⒏ 西之島もやがて八丈島方面へ北上するということでしたが、それを北上させる対流の湧き出し口は何処にあるのでしょうか?

田村氏〔西之島と八丈島は同じプレート(フィリピン海プレート)に載っていますから、フィリピン海プレート全体が北上します。これはユーラシアプレートに対する相対的な運動です。対流のわき出し口については私はわかりません。〕】

 この「対流の湧き出し口がわからない」という点は非常に重要なので、次回に詳しく議論する。

2018年1月20日 (土)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その6

  比重の差により層状化する力

 田村氏他の科学者に送った質問の全文は「その2」にある通りだが、今までと同様、要約した「質問4」を以下に再掲する。

⒋ 地球の重力によって、全ての物質は中心に引き寄せられ、層状になっている。ところが、地殻と海洋との間だけがその層状態を乱し、大陸が偏在している。この大陸の偏在は、地球内部の力によっては引き起こされ得ない。地球の大陸は外因性の起源を持つのだと考えるべきだ。

田村氏[大陸の偏在はマントル対流によるプレートテクトニクスによるもので、地球史においては何度も超大陸(大陸が寄せ合わされたもの)ができています。よって大陸の偏在は地球内部の力によって引き起こされたものです。]

金森氏[It is true that the long-term equilibrium state will be a layered structure as you said, but the real questions are where and how the earth's ocean came about, and how much water exists in the Earth, and why the average ocean depth is 5 km etc. These are interesting questions, but we seldom talk about these things. There are people who are profound enough to think about the origin of the ocean. I remember only vaguely, but I am sure you can find lots of articles on this. 確かに長期的な平衡状態ということでは、貴方の言うように層構造になるでしょう。しかし本当の問題は、地球の海洋がどこでどのように生まれたか、地球にはどれだけの水が存在するか、何故平均的な海洋の深さは5kmか、等々でしょう。これらは興味深い問題ではありますが、我々がこうした問題を語ることはめったにありません。海洋の起源について考える博識な人々はいます。私はおぼろげに覚えているだけですが、この件に関する論文はいくらでも見つかるはずです。]

上田氏[このご意見は賛同しかねます。すべてが水のように振る舞えば偏在はしないでしょうが]

 この質問は前回の質問3と同様、比重がポイントである。この質問も、大陸の偏在は地球内部の力では引き起こされない、と説明もなしに断定しているため分かり難いものになってしまった。もっともこの場合は立場の違いでもあるので、質問の趣旨が分かったとしても、おいそれと納得してはもらえないだろう。

 確かに岩石は、それ自体を支える強度を持っている。しかし地殻の深部に行くほど高温高圧で、岩石も深部では半溶融状態になっている可能性が高い。マントルともなると、更に流動的なはずである。流動的でなければ、プレートテクトニクス説の大前提である大陸の移動は不可能だ。ところが地殻の基盤が流動的であるとすると、地殻全体には、比重の差に従って層状にしようとする力が働くはずである。

 プレートテクトニクス説は、対流の湧き出し口と沈み込み口においてだけ比重の差を語る。しかしその同じ比重の差は全体にも働き、大陸を平準化し、地球における層の一つにしようとするはずなのだ。マントルが流動的であるとすれば、大陸は移動すると同時に引き伸ばされ、薄く伸展されるはずである。この平準化、層状化は、水などが存在する場合、あるいは母天体の重力が大きい場合により大きく働き、大陸はより早くに侵食されたり、伸展されたりすると考えられる。

 ついでながらヤスーン仮説においては、原始大陸は数倍も規模が大きかったのだが、風雨により侵食され現在に至っている、と想定している。

2017年12月21日 (木)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その5

  大量の玄武岩が大陸上にあるのは何故?

3. 安山岩と玄武岩の比重の差程度で、本当に大陸はマントルの上に浮き、玄武岩は自重で崩壊するものでしょうか?

田村氏[玄武岩も安山岩もマントルよりは軽いです。軽いものが厚く局所的に存在すると地表面に突出します。よって海面上に陸地として現れます。玄武岩は自重で崩壊することはないと思います。プレートテクトニクスでマントルに戻されます。]

金森氏[Well, rocks have enough strength to support itself, at least for some time, and the density difference argument may not be that relevant. Maybe, I did not understand your logic. さて、岩石はそれ自体を支える充分な強度を有しています、少なくともある程度の間は。比重の違いの議論は、それとは関係ない問題であるかも知れません。多分、貴方の論理が分からなかったということでしょう。]

上田氏[高い山さえできれば海面上にでるのでは? 安山岩も玄武岩もマントルのうえに浮いているのでは?]

 金森先生の指摘はもっともだと思う。自分で読み返してみても、よく分からない。私の脳裏にはアイソスタシーの図があるのだが、それが反映されていないために、分かり難い質問になってしまった。ここで敢えて、「地球の科学」(竹内均、上田誠也著 1964年)の言葉をそのまま引用する。私が一番最初の頃に読んだ地球科学の本の一冊であり、私の考え方の基礎ともなっているからである。

[大陸地域の土台となっている岩石は、大ざっぱにいって花崗岩質(シアル)の白っぽいものであり、海洋底から採集されたり、大洋中の島々で見出される岩石は玄武岩質(シマ)の黒っぽいものなのである。]

[軽いシアルからなる大陸塊は、重いシマの上に、まさにアルキメデスの浮力の原理に従って浮いていると考えられるのである。この様子は海に浮かぶ氷山と似ているといえよう。この現象は、アイソスタシーとよばれている。]

 このアイソスタシー説を基礎としてプレートテクトニクス説を見直すと、納得できない点がいろいろ出てくる。これらも質問形式で書いてみたい。

3a. 大陸が花崗岩質でマントルや玄武岩層の上に浮いているとしたら、インド他、広大な洪水玄武岩が後から大陸の上に噴出してくるのをどのように説明するのか? 同様にして、付加体の形で重い玄武岩が、軽いはずの大陸の一部になり得るという点も理解し難い。

3b. ホットスポット説によるハワイ島など、海洋底から突出している無数の火山島に、アイソスタシー説は適用できるだろうか? 玄武岩の火山島にも、それなりの根があるのだろうか? 

3c.「玄武岩も安山岩もマントルよりは軽いです」というならば 、玄武岩はマントルに沈み込めないはずである。更に最近では、堆積岩もプレートと共に沈み込むと説明されたりもする。堆積岩は玄武岩以上に軽いはずなのに、不思議である。

 冒頭の問いは、こうした疑問に繋げるつもりのものだったのだが、理解されにくい書き方をしてしまったと反省している。

2017年11月22日 (水)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その4

  フィリピン海域は安山岩線内で特殊

 私の4つの質問は前々回に全文載せたので、質問部分は要旨だけにする。

1.フィリピン海域は特殊である。そこから安山岩が出たとしても、原始海洋から生まれた大陸のサンプルにはならないのではないか?

田村氏[西之島を含む小笠原海域は典型的な海洋島弧といわれています。地震波によって求められた地殻構造を見ると大陸地殻ではありません]

金森氏[ I am not sure whether they said the Philippine Sea crust is continental. Maybe, they said that because of the newly developed model of andesite formation (by differentiation of basaltic magma), a continental-crust like structure is being formed beneath the Philippine Sea. (金森先生からの返信は英文であるため、私の拙訳を付けます) フィリピン海地殻が大陸性だと言われているかどうかについてはよく分かりません。多分、安山岩形成についての(安山岩は玄武岩マグマからの分化によるという)モデルの出現により、フィリピン海底下で形成されているのは、大陸地殻に似た構造だと考えられています]

上田氏[40億年前の大陸のサンプルにはなりますまい]

2. 安山岩線との関連に言及しないのは何故か? 安山岩線が小笠原・マリアナ弧の外側を通っているアーサー・ホームズの図の方が間違えなのか?

田村氏[現在手元に一般地質学がないのですが、「安山岩が噴出するからそこで大陸ができている」と言っているわけではありません。「海洋島弧に安山岩が噴出することが大陸のでき方を示しているのではないか」という考えを提示しています。大陸地殻に噴出する安山岩は、既存の大陸を溶かしたものが多くあり、大陸を成長させるものではありません]

金森氏[I vaguely remember the concept of andesite line in Holmes, but it is a fairly old general concept, and may not be directly relevant to this question. I will take a look at the book later. ホームズの安山岩線の考え方をおぼろげに憶えているだけですが、かなり古い一般的な考え方です。この問いに直接関連しないかも知れません。後で本を見てみます]

上田氏[(ホームズの図が)間違ってはいないのでは?]

 中国の内陸部には石灰岩の景勝地が数多くある。そのことからして、中国大陸のかなりの部分はかって海中にあったと推察される。中国が海中から隆起して大陸になったとすればその逆に、大陸が海中に沈降する場合もあり得るはずである。安山岩線以西のフィリピン海域は、まさに沈降した大陸だと私は考えている。プレートテクトニクス説全盛の時代に、このような考え方が受け入れられる可能性は限りなくゼロに近い。しかし、西之島から安山岩が出ることを最も矛盾なく説明できる考え方であると信じている。検証してもらいたいものである。

2017年10月23日 (月)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その3

  5人全ての科学者から返信

 田村芳彦氏に質問のメールを送った後、私は更に同文をコピペして、知己のある4人の科学者たちにも送った。金森博雄氏、上田誠也氏、島村英紀氏、横山裕道氏、全員から返信を貰った。特に前2者からは田村氏同様、質問の1つ1つに簡単なコメントを頂いた。

 ヤスーン仮説を思い付いたのは今年で丁度50年前のことである。その間に、社会に広く伝えたいという目的は未だに全く果たせていないものの、普通ならば絶対にお会い出来ない多くの高名な科学者の知己を得ることが出来た。彼らは非常な紳士である。私の仮説に賛成しないとは言え、一般の人よりもはるかに好意的に耳を傾けてくれる。彼らと話している時私は、日常では得られない大きな喜びを感じる。

 金森先生からの返信の冒頭は「Eメールをありがとう。いつもながら、かなり原理的な問題への貴方の熱中ぶりに感銘を受けています。私は、専門家から話しを聞いて大抵いつでもそのままに受け入れ、それ以上に追究しようとはしません」とあった。

 上田先生からの返信には次の言葉があり、興味深かった。

[西之島が大陸の卵かどうかは、確言はしかねますが、常識的には可能なことだとおもいます。1973年の噴火でも、今回の噴火でも安山岩がでたらしいし、もともと、小笠原・マリアナ弧のBoniniteは島弧発生初期の一種の安山岩だそうです。海洋地殻から安山岩が生まれることは岩石学的に十分可能らしい。(田村氏論文投稿中とか)

ホームズの図でも安山岩線は島弧の外側になっています。当時としては卓見か? 当然の常識か? 。それにしてもまるで卵ですから、full fledged 大陸になるには随分、Timeがかかるでしょう。

おっしゃるとおり、フィリピン海は特異な海ですね。

フィリピン海のでき方については、私も1972頃にそれを2~3論じたことはあります(Origin & Development of the Philippine Sea, Natute Physical Science, V240, No.104, pp176-178など)

しかし、その種の議論は証明も反証もできにくいですね。この年になると、まあどうでもいいやという気分です。]

 更にその翌日、上田先生から、田村芳彦氏の英文の論文が転送されてきた。田村氏から先生に送られてあったものらしい。もともと両者の間に交流があるということなのだろう。私が東大地震研の上田先生の研究室を訪れたのは1984年のこと。その時代から先生が海洋研究に携わっていらしたのではないかという私の推察は、その後「平朝彦氏と共に海洋掘削の課題計画を提案した」(地殻底のマグマ層 その22)という本の中の言葉でより確信に近いものとなった。海洋研究所の若い田村氏が論文を送ったという行為の中に、今も続く上田氏と海洋研究との繋がりの深さを思った。

 前回書いた4つの質問の後、私は更に都合25の質問をすることになったのだが、その際別々に送っていたメールを一本化させていただいた。田村氏と先生方がそれほどに親しいならば、分けることはないと考えたからだ。しかし、効率重視の私のその考え方は大失敗であった。金森、上田両先生からの返信はパタッと止まってしまった。先生たちが個々の質問にどのように答えて下さるか、非常に興味深かったのに残念なことをした。

2017年9月24日 (日)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その2

  JAMSTECの田村芳彦氏に質問

 2016年2月12日私は、科学番組の花形ゲストである田村芳彦氏に、以下のようなメールを送った。氏は前回も書いたように、海洋研究開発機構JAMSTECの首席研究員である。

〔昨年(2015)12月に放映された「科学アドベンチャー 西之島へ ~エンジニア達(たち)の熱き挑戦~」を見てメール致します。
西之島から安山岩が出ているのは、大陸の誕生を示唆しているという内容でしたが、幾つかの疑問があります。

⒈ もしもフィリピン海海洋底が、海洋性ではなく、大陸性地殻であるならば、そこから安山岩が出るとしても何ら不思議ではありません。世界地図で見るとフィリピン海域は、他の海域と違う数々の特徴を持っています。例えば、海溝によって囲まれている、中央海嶺も破砕帯もない、などです。標準的海域にあるわけではない西之島の岩石を調べても、40億年前の海洋から生まれた大陸のサンプルにはなり得ないように思います。如何でしょうか?

⒉ 安山岩線との関連に全く言及しないのは何故でしょうか?アーサー・ホームズの「一般地質学」に出ている図によれば、安山岩線は小笠原・マリアナ弧の外側(太平洋側)を通っているように見えます。この図の方が間違えているのでしょうか?

⒊ 安山岩が軽いとは言っても、それは玄武岩に比べればであり、海水に対してではありません。何もなかった原始の海洋から、安山岩が海水面上に隆起出来たという仕組みがよく分かりません。バケツの中の砂が隠れるほどに水を入れ、底の砂をかき回して水面上に隆起させようとしても不可能です。安山岩と玄武岩の比重の差程度で、本当に大陸はマントルの上に浮き、玄武岩は自重で崩壊するものでしょうか?

⒋ 地球の重力によって、全ての物質は中心に引き寄せられています。そのため、核、マントル、地殻、海洋、大気圏と、比重の重いものから軽いものへと層状になっているはずです。ところが、地殻と海洋との間だけがその層状態を乱し、陸半球と呼ばれる半球にのみ大陸が偏在しています。重力は全ての層の境界面上に均等に働いているはずなので、この大陸の偏在は、地球内部の力によっては引き起こされ得ないものです。つまり、地球の大陸は内部の力によってマントルから生み出されたはずはなく、外因性の起源を持つのだと導き出されます。如何でしょうか?
このような私の疑問や考え方に対し、ご意見ご批判を頂けましたら幸いです。〕

 私は最初もっと多くの質問を書いたのだが、削った。読む側の立場から考えると、沢山あるというだけで、読む気を失なうかも知れない。大陸の創生という、私にとって最も重要な問題だけに絞った方が良い、と考え直した。

 田村氏からはその日のうちに返信が戻ってきた。書くのが極端に遅い私からすれば、信じられないスピードだった。このパターンはその後も続き、私が1週間ほどかけて次の質問を繰り出すと、大抵はその日のうちに返信が戻ってきた。可能な限りは問いに応えようとする誠実な人柄が感じられた。このような科学者に出会えて、メールの言葉通り、いやそれ以上の「幸い」であった。

2017年8月25日 (金)

「西之島は大陸の卵」に疑義あり その1

  科学番組は安山岩線に触れない

 西之島については既に触れたことがある(海洋底の縞模様 その12その27)。西之島の岩石は大陸性の安山岩である、ということでJAMSTECニュースに取り上げられたのは2014年6月である。海洋の火山島の岩石は玄武岩であるのが一般的なのに、西之島が例外なのでニュースになった訳である。安山岩というのは、大陸の花崗岩と海洋の玄武岩との中間的な岩石であるが、花崗岩―玄武岩の対比ではなく、安山岩―玄武岩という対比で使われることも多い。柱状節理だと、安山岩は玄武岩の部類に入るのだから紛らわしい。

 ところが「その12」の時にも書いたように、西之島は本来、海洋性の火山島であるとみなすべきではないのだ。太平洋には安山岩線という地質構造線がある。私は、マントル対流論の大御所アーサー・ホームズの本を読んで知ったのだが、ウェブで調べると、「1912年にニュージーランドの地質学者マーシャルP. Marshallによって提唱された」(日本大百科全書より)とある。もう随分昔に確立された地質学上の知識であるようだ。

 この安山岩線が囲む海域は、フィリピン海プレートに相当する。対流の湧き出し口である中央海嶺もなく、海洋でありながら安山岩線のくくりでは大陸であったり、フィリピン海プレートはプレートテクトニクス説にとっての鬼っ子的存在である。

 西之島は安山岩線の内側の海域にあるのだから、西之島に安山岩があって当然である。プレートテクトニクス説の教科書とも言うべきホームズの「一般地質学」に図入りで出ているのだから、地質学者ならば安山岩線のことを知らぬはずはない。

 その後「サイエンスZERO 西之島の噴火が大陸を生む!?」(アメリカでは2015年2月に放映)という番組を見た。そこでも、安山岩線については全く触れられなかった。番組のMC竹内薫氏は「99・9%は仮説」「なぜ『科学』はウソをつくのか」の著者でもある。科学に対する懐疑的な目を持っているのではと期待していたのだが、番組進行という立場からは逸脱も出来ないのだろう。

 その後同年8月には、「NHKスペシャル 新島誕生 西之島 ~大地創成の謎に迫る~」が放映された。更にその年の暮れ12月に「科学アドベンチャー 西之島へ ~エンジニア達(たち)の熱き挑戦~」という番組も放映された。どの番組も同工異曲、似たり寄ったりであった。プレートテクトニクス説全盛の世の中で、それに異を唱える番組が生まれるはずもなかった。

 どの番組にも必ず出演する科学者がいた。国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTECの田村芳彦氏である。ウェブで調べると「海洋掘削科学研究開発センター 海洋・地球リソスフェア研究グループ グループリーダー」とある。どうやら、西之島研究の中心的人物のようである。意を決して、最後の番組から1か月ほど考えたり調べたりした後、彼にメールを送ってみることにした。

 紹介なしの未知の科学者に連絡を取っても、返事を貰えることは殆どない。しかし面倒だからとためらっている場合ではない。大陸の起源は地球外の天体にあったとする私の仮説からすれば、大陸が地球の内部から生まれたのだとする考え方はどのようなものであれ、受け入れる訳にはいかない。

2017年7月25日 (火)

日本国内旅行 その17

  有珠山噴火の周期性は何故?

 昨年日光を訪れた1か月後、我々は洞爺湖温泉に1泊した。唯一噴火予知に成功した有珠山を見るためである。ニュースを聞いた時のイメージとしては、有珠山はかなり辺鄙な山奥にあり、村人達が林道などを伝って避難したというものである。洞爺湖は名前も違うし少し離れてもいるし、避難者を受け入れる場所だろうぐらいに思っていたのである。うかつなことであった。洞爺湖温泉こそ、人々がそこから避難すべき主舞台だったのだ。逃げるルートの国道すぐ近くに新たな側火口が出来、迂回しなくてはならなかったともある。

 我々が着く1週間ほど前に、洞爺湖町から有珠山行きの路線バスは運休期に入っていた。着いた当日は雨、翌朝は雪に変わっていた。ホテルからタクシーで有珠山ロープウェイ乗り場まで行ったものの、終点で降りた時には又かなりの雪が降り、駅舎の周辺を私だけ、急いで見て回るのがやっとだった。ホテルをチェックアウトする時にスーツケースを預かってもらうのを忘れ、ロープウェイの行き帰りに不便な思いをした。という訳で、その段階までは全てがついてない感じだった。ところが、バス、雪、スーツケース、ついてないと思っていた理由が、かえって良かったと思えるようになった。

 帰りのタクシーも、先ほどの運転手さんに電話して来てもらった。ホテルに戻ってスーツケースを預け、市内でもう1~2箇所観光するつもりであった。しかしバスターミナルにコインロッカーがあると教えられ、町の中心部から離れた場所にあるホテルに、わざわざ寄らないでも済んだ。

 運転手さんからは、避難する時の町の人たちの様子を聞くことができた。似たような話は、その後で訪れた火山科学館のパネルにもあったが、実際に経験した人からの言葉にはそれなりの重みがあった。また、木々がなぎ倒されているのを見て尋ね、それが3か月前の台風による被害だと知って驚いた。竜巻が発生したのだろうか、と思わせるほどの凄まじさであった。

 火山科学館を出た時雪が降り積もっていた。バスターミナルまでの道が歩き難いというほどでもなく、頃合いの降り方であった。ホテルの部屋の窓から見た洞爺湖とともに忘れ得ぬ情景となった。

 それらにも増して良かったのは、有珠山の位置や情報を直に知れたことであった。それにより、噴火予知と避難とが何故成功したのか、実感することができた。有珠山はその名前のもじりで、「ウソをつかない山」と言われているそうである。噴火に周期性があり、1910年までは30~50年、その後は20~30年周期に狭まっている。2000年の噴火時には、3月27日午後から火山性地震が観測され、その4日後には噴火が始まった。全壊234戸、半壊217戸という多大な被害にもかかわらず、人的被害はゼロであり、予知や避難、防災体制の成果が注目されることになった。

 しかしながら、そこで根本的が疑問がわく。そもそも地震や噴火に地域固有の周期性があるとはどういうことだろうか? パークフィールドの時にも思ったことだが、単なる偶然かも知れないではないか。マグマに時限爆弾がセットされているはずもないのだ。同じ地震や火山という現象に、なぜ地域差が生まれるのか?有珠山は予知が可能なほど周期的に噴火し、桜島では年中噴火しているのに予知できず、御嶽山では死火山という定義を変えなければならないような水蒸気噴火が生じた。それらに対して納得のいく理論が提示される日までは、「地震の科学」(竹内均著、1973年刊)の冒頭の言葉、「群盲 象をなでる」にある通り、それらは局所的かつ手探りの学問である。

2017年6月25日 (日)

日本国内旅行 その16

  支笏湖の水中柱状節理

 数ヶ月前、「支笏湖は最北の不凍湖だ」とテレビで言われているのを聞いて、調べてみる気になった。湖底の温度がマグマによって温められているのかと思ったが違った。水は4度で一番密度が高く、重い。そのため気温が零度以下になっても、湖底の温度は4度のまま。支笏湖は深く、4度の水をたっぷり溜め込めるので、カイロを抱えているような状態になるのだろう。次の春まで滅多に凍ることはないらしい。洞爺湖も同様に不凍湖なのだそうだ。

 そのついでに更に調べていたら、支笏湖の水中に柱状節理があり、観光船で見れるらしいと知った。支笏湖は火口に水が溜まったカルデラ湖である。柱状節理が湖底にあるということは、噴火口の溶岩が固まって柱状節理が出来た後、そこに水が溜まったことを意味する。外輪山から流れ込んだ可能性もなくはないが、ほぼ間違いなく、火道起源だったと断定できそうだ。

 ネットを探すと柱状節理のでき方についての殆どの説明は、溶岩流が固まる時、上から下へと冷えていくのに従って亀裂ができる、となっている。それに対して私は、柱状節理の出来方には色々なパターンがあり得るはずだということで、何回も繰り返し扱ってきた。

 以前も書いた(日本国内旅行 その3) ように、韓国慶州市の菊花型石や根室の車石は、ドーム状半球状の中心から放射状の柱状節理が並んでいる。これなどは溶岩が小さな穴から湧出し、プクーッと風船のように膨らんで出来たと推測される。海底に、枕や俵が積み重なったように見える枕状溶岩が多く見つかる。車石はそれらの一種と見ることもできるだろう。これらのドーム状柱状節理やデビルズタワーを、溶岩流や貫入岩で説明することは不可能だと思う。支笏湖の水中柱状節理は、溶岩流起源ではないもう一つの事例である。

 以前何度か読んだことのある、火山学会の「火山学者に聞いて見よう」というサイトを、今回もう一度読み直してみた。するとそのサイトに、「ハワイの火山の溶岩湖では表面にも柱状節理が現れましたが、通常のガサガサした溶岩流の表面には柱状節理は現れません」という石渡明氏の言葉が出ている。何のことはない、「溶岩湖」起源の柱状節理が、学者の言葉の中にあった。以前は読んでいながら、その言葉の重要性に気付かなかった。

 これも繰り返しになるが、溶岩流起源、火道起源、溶岩湖起源の柱状節理の他に、「移動」を反映した柱状節理があるはず(日本国内旅行 その4)、 というのが私の昔からの考え方である。その時にも書いたように、越前松島の牛の角型の柱状節理を、「移動」という考え方無しで説明するのは、非常に困難であると思う。

 ヤスーン仮説によれば、大陸のおおよその形が定まった後になり、重い玄武岩マグマが分離して滲み出す。海洋底をひたひたと進む玄武岩溶岩は、中央海嶺の位置まで進んで止まり、大陸と相似の地形を形作った。このような仮説の全体的イメージから予測されるのは、水平な柱状節理の存在である。しかもその節理は、大陸から中央海嶺への動きを反映して、金太郎飴を横に並べたようになっているはずである。中央海嶺近くの海洋底が掘削されるようになった時、私の説の当否が決定される。

2017年5月25日 (木)

日本国内旅行 その15

  円錐形火山についての考察

 先日、自分で撮った日光での写真を見ていたら、右の写真があった。柱状節理層の先の方を見れば明らかなように、層下部から滝が出ている。それは、日光華厳の滝周辺の柱状節理はやはり溶岩流起源であった、ということを意味している。Cimg0673

 私自身、現場で当然そのことに気付いたはずである。柱状節理が火道起源だとすれば、それはかなり下方の、マグマ溜り辺りまで続いていなくてはならない。それなのに私は、書いてまとめるまでの数ヶ月の間に、その現場での思いをすっかり忘れてしまったようだ。しかし……と、火道起源説にこだわりたい気持ちが今でもなくはない。火山の溶岩流は、一度に全方向に流れ出るものではないからだ。下の観瀑台脇の柱状節理層と、少し先の滝とでは、時期も成因も違っている可能性がある。

 カムチャッカ半島にクリュチェフスカヤ山という火山がある。富士山より1000メートルも高く、ユーラシア大陸最高の活火山である。テレビでその山の映像(世界の名峰 グレートサミット 2012年) を、初めて見て衝撃を受けた。広重の浮世絵にある誇張された富士山のように、傾斜が急な円錐形をしている。しかもその頂上から、真っ赤な溶岩がほぼ直線状に流れ下っている。

 最近になって柱状節理の問題を考えているうちに、あのクリュチェフスカヤ山からの溶岩流を思い出した。溶岩流は局所的であり、山体全体をくまなく覆った訳ではないのだ。円錐形の山体を作ったのは、頂上から噴出した火山灰や噴石だったと思われる。だとすると山体の大部分は、石炭のボタ山のように、ふんわりと積み重なった組成をしていることだろう。とすれば、マグマ溜りから上昇してくる溶岩は、密度の粗い山腹の堆積に、なぜ新たな火道を作らないのだろう? 事実富士山は、宝永火口のような側火口を作った。クリュチェフスカヤ山において、今も尚、5000メートル近い山頂から溶岩を噴出させるものは何なのだろうか?

 おそらく、火口の溶岩が絶えず下から供給され続け、高温のまま保たれているのだろう。もしかすると、恒常的に溶岩湖状態になっているかも知れない。冷えて溶岩の供給が途絶えると、溶岩は固まって岩石になる。その時に柱状節理になり、栓になる。噴火口に水が溜まっているようだと、その傾向は更に強まる。錦江湾や芦ノ湖では、湾や湖の中央部から新たな噴火が起こる可能性は低く、その周辺部に新しい火道を作って外輪山となる。クリュチェフスカヤ山のような高い円錐形火山は、条件が色々揃っていなければ存在し得なかったことだろう。

 さて、話を華厳の滝脇の柱状節理に戻す。それが溶岩流起源であるのか、あるいは火道起源であるのか、今はまだ決定出来ないものの、研究が進むと将来明らかになる可能性がある。溶岩流起源だとすれば、溶岩流の痕跡が男体山の頂上方向へと続いているはずだし、火道起源ならば下方へと続いているのでなくてはならない。また、溶岩流が1方向だけにしかないとも考え難い。男体山の山麓に、溶岩流の厚い層があるはずである。やがて音波探査などの新技術により、地中の柱状節理を簡単に発見できる日が来れば、と願っている。

«日本国内旅行 その14